第71回
北の国だから vol.4
〜四日目 秘湯〜

 前日寝坊した私だが、今回は寝坊はできない。理由は簡単。朝飯は部屋で食べることになっていたから、配膳係が来るためである。例によって前倒し励行の旅、7時にお願いしておいた。目覚めは6時過ぎ。せっかくなのでひとっ風呂浴びてからの朝食。湯上りに部屋に戻ると丁度宿のおばちゃんがドアを開けようとしているところ。グッジョブ。風呂上りに部屋で朝飯。いや、贅沢だ。これで宿代は前の釧路や網走と殆んど変わらないというのが素晴らしい。全て宿を固めずに現地で予約を取っていることが正解なのだろうか。

 洞爺湖 8/30(火) 7:30 総走行距離 1640.0km

 あと函館と札幌。順番で行くと間違いなく函館が先になる。帰るのはこの日から2日後。そうなると帰宅前日はやはり千歳に近い方がいい。ならば函館より札幌。ということで必然的にこの日は函館となる。単純な逆算だ。ただ、函館はチェックポイントが2つしかなく、うち1つの蛍町は存在しないことがわかっている。ということは、函館に入ってさえしまえば函館のチェックポイントはクリアになるのである。当初は、この函館だけ行くのはやめようと思っていた。しかし、予定の前倒しが予想外にうまくいっているので、足を伸ばそうという気になってきているのまた事実。ただ函館は1箇所しかない…

 そこで思いついたのが、別件を立てることである。これはすでに大阪にいた時に案があった。北海道でやることと言えば、カントリーサインを含めて水曜どうでしょうの真似事が多いのは我々の常であるが、今回はせっかくなので温泉をメインとした、激走!24時間 大泉洋くん闘痔の旅の足跡を辿ることにした。

 この企画は、サイコロの旅の途中で大泉洋がカミングアウトした痔を治すためにあらゆる温泉に行ってみよう、というものである。番組中、温泉は入れなかったところを含めて全部で6つあったが、途中に青森にフェリーで渡航しているので青森は無理。従って道内は4つである。

薬師温泉 ニセコ町
二股ラジウム温泉 長万部町
平田内温泉 熊石町
水無海浜温泉 椴法華村

 目的地が函館なので、南下していくルートをたどると、行く順番はこの表の上から順番となる。最初はニセコ。洞爺湖からはほど近い場所にある。これで前日に無理して洞爺湖まで来た理由がおわかりいただけるだろう。

 とりあえず出発前に洞爺湖を1枚。

洞爺湖

 最初の目的地、薬師温泉に向かう。距離は数十km。かなり近いものだ。

 さて、これをご覧いただいている人のなかに、洞爺湖→ニセコのルートが去年の北海道旅行と一緒であることに気づいた方はどれくらいいらっしゃるだろうか。ルートが一緒ということは、

まさか2年連続で来ようとは

 今年も来てしまった真狩村。で、この村を通るということは当然…

まさか2年連続で見ようとは

 細川たかしともご対面と相成るのである。ちなみに前回はお昼過ぎで人もいたし売店も開いていたが、今年は朝8時ということで全く誰もいず。売店も当然ながら開いていない。で、前回も書いたが像の横にある手形を触ると…

まさか2年連続で触ろうとは

 去年は北酒場だったので今年は心のこりに。しかし写真を見ていただいたらわかるのだが、止めるスイッチが無い。朝8時の真狩に大音量の心のこりが響き渡る。気まずかったので1番の途中で逃げるようにここを去る。歌に言われるまでもなく、こんな時間に近所迷惑も甚だしい歌のスイッチを入れる私もお馬鹿さんである。でも、よく考えたらこの銅像、24時間スイッチ入りっぱなしってことか?

 真狩村 8/30(火) 8:20 総走行距離 1684.9km

 というわけで完全に寄り道だったが、時刻はまだ9時前。充分時間はある。だが、ここからが苦難の旅だった。ニセコ町に到着はしたが、薬師温泉の場所がナビで出てこない。事前の確認でニセコにあるということしかわかっていないので、現地で確認しないといけない。ところが、役場は閉まっているし、道の駅の案内所も閉まっている。時間が早すぎることが仇となった形だ。

 道の駅では地元の農家が野菜等を持ち寄って朝市というわけではないが何か売り場を設けている。そこで聞くと、町の西のはずれにあるとのこと。大体の場所を教わって、そこからはナビではなく聞いた情報を頼りに行くことに。まあ複雑な道ではなかったし、入口に大きな看板があるからわかるよ、みたいに軽く言われていたので軽く見ていたら、軽く見つかった。

「奇跡的に」がもう怪しい

 ここで言う「奇跡的」とはどういうことなのだろうか。私の病気と言えば頭痛持ちとアトピーぐらいだが、入っただけで治るものなのだろうか。で、この道に入っていくと

まさに秘境

 おそろしいほど道が狭い。車1台分すらない。こんな奥地までHTBのクルーはよく行ったものだ。大泉の運転技術も大したものだ。目的地までの距離が不明なので、いつ対向車が来るかとビクビクしていたが、結局最後まで1台もすれ違わず。ようやくたどり着いた。

 薬師温泉 8/30(火) 8:55 総走行距離 1706.0km

薬師温泉

 温泉なのでさすがにカメラは持って行きづらく、とりあえず外観の1枚。ぱっと見、かなり寂れているように見える。手前のベンチが埋まることなどあるのだろうか。

 いよいよ温泉に。入湯料は300円。外湯にしてはお手頃である。で、入ってみるとかなり湯船の温度がぬるい。肩までつかっても温まる様子もない。ミスターが風邪をひきそうになるのもわかる気がする。ここは長湯するのは賢明ではないと判断。10分ほどで出る。その間、誰もここに入ってくる様子は無いし、脱衣所も狭い。衣服を入れる籠は4つぐらいしか用意されていないので、そもそもそんなに来客がある温泉ではないのだろうか。でも入口付近には沢山のサインが。混浴露天風呂の収録もあったようだが、大泉洋のサインは見つけられず。隣ではこの温泉の従業員と思しき兄ちゃんが優雅に朝飯を食っていた。とことんやる気が無いようだ。

 続いては二股ラジウム温泉に。長万部町なので国道5号線を南下すればいいだけの単純なルートである。さすがに最初にこんな秘境に来たので、次はどんなところが来ても驚くことは無いだろう。そもそも国道だから狭い道であることはあり得ない。

 ナビで確認すると、温泉自体は国道沿いには無いらしい。そらそうだろう。で、山の中にあるようだ。山の中…薬師温泉の悪夢がよみがえる。

 しばらく行くと、ナビは予定通りに山道へ案内しだした。例によって対向車など全然いない。しばらく進むと、

さっきと同様

 狭いけもの道が。今回はとあるところで突然細くなっている。やはり車1台分。しかも今度はこの1台分の区間が長い。ゆうに3kmはあっただろうか。その間ドキドキである。まあやっぱり対向車は来なかったのだが。

 ようやく二股ラジウム温泉到着。番組では清掃中だったようだが、私が行った時は全然問題なく入れた。ちなみにここは宿も完備されていて、1週間とか1ヶ月とか長いこと滞在し、本当に湯治に来る人が多いらしい。私が受付に行った時も年寄集団がいた。途中対向車もいなかったのでおそらくここに泊まっている客だろう。

二股ラジウム温泉

 二股ラジウム温泉 8/30(火) 10:35 総走行距離 1765.7km

 効能のところに、痔に効くと確かに書いてある。さっきの薬師温泉より効果は期待できそうな場所ではある。ただ、入湯料が1000円とやや高め。維持費が大変なのだろうか。番組があった後に改装されているらしく、雰囲気が多少違っていた。まあ一番違うのはちゃんと湯が張ってあったことだろうが。

 脱衣所も今回はやや大きめ。ただ、脱衣所を出るとすぐに女性用脱衣所の出口と合流。要するに混浴である。まあここに若いお姉ちゃんが来るとは思えないので期待はしていないが。湯船に行くと先客が何人か。話を聞くと朝からずっと入っているらしい。効能を最大限に引き出すには、8時間の入浴が必要とか(もちろん連続ではない)。そんなに入ってたら干上がってしまうがな。

 湯船は崖の横にとってつけられたようにあった。受付から脱衣所までも複雑に入り組んだ道(建物の中だが)を歩かされた。山の中腹に無理やり切り開いた感じがする。ドラクエで言ったらVのチゾットみたい。眼下にお城でも見えたら完璧だったが、さすがにそれはない。

 ラジウムがどのように効くかは知らないが、温泉自体はかなり濁った色をしている。湯船も変色しているし、横にある滝のようなところもすごい色をしている。また、ここでは石鹸を使うことは禁止されており、ただ湯船につかるだけ。頭や体を洗う場所はちょっと離れたところにあった。なかなかできない稀有な体験である。苦労してたどり着いた甲斐があったというものだ。

 ここには約30分滞在。洞爺湖を含めて、午前中ですでに3つの温泉に入ったことになる。これで体が元気になったとしたら、どの温泉が効いたのかさっぱりわからない。

 あと2つ。続いては平田内温泉である。熊石町なので途中で日本海側に抜けないといけない。途中で八雲町を通過。また41万クラスの万馬券を取らせて下さい、と手を合わせておいたので来年の函館競馬が楽しみである。長万部からは2時間弱だが、やはり山道。しかも国道ではない道であることと、例によってけもの道が長いことを考えるとすんなり着いたわけではなかった。

 平田内温泉は温泉街が街からそう離れていないところにあった。ホテルもあり、これがそうならすぐに終わる(まあ外湯があるかどうかは知らないが)。しかし、本編を見た方はお分かりかと思うが、ここは川べりに穴が掘られていてそこにある温泉である。入浴料を徴収されるかどうかすら不明な場所だ。確かにこのホテルから奥に向かったところに露天風呂がある看板も途中にあった。

 ただ、ここからの道のりはやはり険しい。例によって道幅は車1台分。しかも今回もこの区間が長い。山道だが、川べりに道があるので先が見やすいというメリットはあるにはあるが、逆に川べりということで道が崩れそうになっている箇所もある。前の2つは車がはみ出しても木に衝突するぐらいで済む(スピードは出ていないから命に別状はない)が、今度は川に転落する可能性がある。今回の方がよっぽど危険である。

 平田内温泉 8/30(火) 12:20 総走行距離 1856.3km

 しばらく進むと広い道路に出た。これで多少は運転がしやすいと思った矢先、

行き止まり

 車での通行を物理的に遮られた。この横にやや広い駐車場があり、ここに停めろ、ということらしい。駐車場が無駄に広いのは、温泉に行く客の他に、山登りの客もいるからのようだ。横に申し訳程度な登山道入口もあった。

 ここからは歩いていかないといけない。温泉はまだ見えないが、ものの1分ほど歩くと、

字がもう怖い

 熊か…。さすがは「熊の湯」と呼ばれるだけはある。裸で一人で遭遇したら多分太刀打ちできないし、仮に襲われたとしたら助けも呼べない(当然、携帯は圏外)。怖ろしい場所だ。入る、入らないはとりあえず保留として、一応浴槽があるところまで行ってみる。

かすれた「熊の湯」の文字
いちおう脱衣所
浴槽

 ここでは源泉が熱いので川の水を入れて丁度いい湯加減にする必要があるのだ。これが面倒臭いし、こんなことやってるうちに熊が来ても困るし。というわけで湯船に入るのは断念。脱衣所は申し訳程度にしか無い上に、どうみても混浴なので脱衣所を男女に分ける意味は全くない。キャンプやる奴もおそらくいない。道路を隔てた反対側に源泉が湧き出る場所があったが、テレビではおそらくここで温泉卵を作っていたと思われる(写真は無い…)。

 苦労して辿りついた平田内温泉だが、結局写真撮影のためだけに来ただけだった。達成感が湧かないので、帰路がいっそうしんどい。狭い通りを抜け、ようやく国道に戻ってきた。次なる目的地は、いよいよ最後、水無海浜温泉に。函館まで下ってそこからさらに東、半島の先端にある温泉だ。函館市内からでも50kmぐらい、山の中だけど海のそば、というとんでもないところである。地図で見てもとんでもないところだというのはよくわかっていただけるだろう

 まずは太平洋側(津軽海峡側)に出ないといけない。もうそれだけでも道のりが険しい。ただ、こんな道を通る人があまりいないのだろうか。国道5号線に比べて車通りが格段に少ない。とはいえ、150kmを超える道のり。さすがに日が暮れる前にはたどり着くとは思うが、帰りのことを考えると絶対に明るいうちに函館市街には戻ってきたい。例によって山道をひたすら進む。途中、給油を試みるが、なかなかガソリンスタンドすらないのもネック。国道ではないので道の駅も見つからず、休憩もおいそれとできない。休憩をしている暇もロクにないのでひたすら進む。

 函館市のそばから、椴法華に向かう。「椴法華村」という村自体はすでに存在していないらしい。2004年12月1日に函館市に編入したそうだ。カントリーサインも212市町村ではないし、日本ハムファイターズのマスコット、B.Bの背番号も変更が必要になってしまった。しかしこの漁村まで函館市に編入して、自治体はちゃんとしたサービスが提供できるのだろうか。

 村の中心部を抜けると、待ち構えていたのは崖のそばの山道だった。ここもかなりの道幅だ。ただ、他の3つと危険性が違う。平田内温泉では横にあったのは川だったが、今度は海である。しかも高さが全然違う。ガードレールは一応あるので落ちる心配は無いと思うが、前の3つと同様、対向車が現れた時の対処方法は全く不明である。

崖。本当に崖。

 水無海浜温泉 8/30(火) 15:40 総走行距離 2010.0km

 こんな道がやはり3kmぐらい続く。途中で前方に車が見えたので焦ったが、進行方向が一緒だったのでついていく。かなり険しい道であるし前の車は老夫婦が乗っていたが、スピードが出る道ではないので特に問題はなし。そもそもこの老夫婦の運転技術に問題は何もなかったが。こっちも抜かそうとも思わない(抜かす場所ないけど)。上り下りを繰り返し、ようやく広い道に出る。すぐに駐車場があったのでここに車を停めるんだな、というのはわかった。で駐車場に行くと、2台ほど停まっているではないか。うーん、先客がいたか。対向車にならない自分の運のよさを実感。で、車を停めて海に下りる。しかし!!

いちおう到着…

 どこが温泉かと。湯船が全く見えない。この温泉、ご覧のように海に面しているので、干潮の時にしか入れないのである。湯船は写真をクリックした時の「このあたり」というところにあるのだが、遠くからでは全く見えない。当然、入浴している人もいない。そもそも、こんな状況で入ったら入浴ではなく裸で入る海水浴である。11月にここに入った大泉洋はホンマにえらい。私はマネできない。

 8月ということもあることと、この日は短パンを履いていたこともあり、とりあえず湯船に近づいてみることに。入ってみると、やはり海水なので冷たいのだが、ところどころ温いところもある。温泉なんやろなー、というのが辛うじてわかる程度。当然、入浴にはなりようもない。

辛うじて湯船がわかる

 写真の右側が湯船。石を積み上げてできたものだが、近くにいかないと全然わからない。この写真は海に入って撮影。苔もあるのでかなり滑る。転んだらカメラがパーになるので緊張の1枚である(クリックすると湯船の説明があります)。

 というわけで熊の湯に続いて水無海浜温泉も入湯できず。朝の洞爺湖を入れると5箇所行って入ったのは3箇所。しかも午前中に集中というアンバランスさ。

 入浴はできないのでネタを探すことに。脱衣所の近くにあった電話ボックスが哀愁を誘う。

テレホンハウス。「ハウス」て…

 また、この温泉特有の「入浴時間の表」もあった。効能と一緒に。

入浴時間表
痔疾の表記が

 この日は8/30。この温泉に5時に入るのは至難の業である。前日の明るいうちに入っておかないと。

 ようやく闘痔の旅の足跡を辿る旅は終了。同じような崖の道を戻り、函館に急ぐ。宿は函館の市街だったが、駅からはやや離れたところに予約。距離はやはり50km程度。これで同じ函館市内なのだから驚くばかり。

 函館市内 8/30(火) 17:10 総走行距離 2064.9km

 宿はすぐ見つかったが、駐車場が見つからない。宿の前に路駐して尋ねると、横の方にある立体駐車場に停めろ、とのこと。これだと、市内観光に車を出すのが大変面倒臭い。というわけで車を停めて歩いて駅まで行くことに。チェックポイントの1つ、函館の町は例によって函館駅でお茶を濁すことに。

函館の町(ゲーム)
函館の町(実際)

 函館駅前は、できたばかりなのか知らないが、かなりキレイだった。晩飯も駅前で食べたが、値段も手頃だし味も良かった。食の街、という気もするしこれで夜景もキレイなのだから言うことない。あとは新幹線がいつ通るのかぐらいが興味の対象か。競馬場もあるし、競輪場もあるし(競輪はこの日が最終日だったが、函館に着いたのが17時を過ぎていたので間に合わず)。

 この日も早起きだったことと狭い道が多く神経を使ったことで疲れ果ててしまった。これでチェックポイントは札幌地区のみ。5日目は札幌の町へ。

札幌 札幌駅 すすきの コロポックリ 手稲
夕張 夕張の町 夕張炭鉱
函館 函館の町 蛍町
釧路 釧路空港 釧路駅前 緑ヶ丘
網走 網走市内 網走港 網走刑務所
紋別 紋別の町 紋別港 高台公園
ウトロ ウトロの町 ウトロ港
知床 知床五湖
道央の湖 阿寒湖 屈斜路湖 和琴温泉 摩周湖
(表の赤いところはクリア済)

四日目終了

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