第75回
仙台リベンジ

 それは去年(2005)、9月に起こった出来事だった。確かに仙台の地にたどり着いていた私は、目的地であったフルキャストスタジアムの前に立っていた。3連休のデーゲーム、楽天対ロッテ戦。引退宣言をした初芝がなぜかスタメンの試合だ。ところが、スタジアムの前に立つだけ立った私は、そのまま引き返すハメになる。満席だったのにチケットを持ってなかった、それだけの理由だった。それだけ、というが大きな理由だが。この年、仙台で誕生した新球団に市民は足しげく球場に通った結果ということか。それとも、それほどまでして初芝の最後の勇姿を見たかったか。いずれにしても、去年の私はただマイルを使って仙台を往復した、それだけだった。パリーグの試合でチケットを事前に手配することなどしたこともなかった私には、仙台の光景はただただ異常だったのである。

 明けて2006年。今年も杜の都を再び訪れることになる。今回は3連休でも何でもない、普通の土日だ。チケットも2ヶ月前に手配済み。カードも人気のありそうなロッテやソフトバンクを避け、首位なのに客が入りそうもない西武戦を選択。仙台七夕祭の1週間前、7月29(土)、30(日)という絶妙な時期に仙台再訪の日時は決定された。

 何故にそれほどまで仙台に行く必要があるのか、疑問に思われる方も多いことだろう。これは私の野球人生においての1つの目標である「12球団本拠地制覇」の達成のためである。元来の野球好きの血がなせる業、成し遂げたかった事である。大学の途中まで阪神ファンだった私はあまりパリーグには目を向けていなかったのだが、私より数倍も数十倍も、いやそんなレベルでは済まされない倍率の野球好きに囲まれた恵まれた環境を生かし、着々と球場制覇を進めてきた。

 2003年に10球場まで制覇、あと福岡だけという状況までこぎつけた私の前に、あるニュースが飛び込む。日本ハムの北海道移転である。日本ハムは読売と同じく東京ドームを本拠地としており、2001〜2003年夏まで横浜在住だった私は何回も観戦していた。その日本ハムが移転するのである。従って、リーチからシャンテン数を落とし、全球場制覇まで2つとなってしまった。2004年、札幌旅行により再びリーチがかかるが、今度は球界再編で新球団、楽天が誕生。それに伴い、仙台が追加されてまたしても残り2つとなってしまうのであった。

 実は仙台は、2002年に一度訪れている。その際に、宮城球場にも行っているのである。当時はロッテが年1回の仙台遠征があり、それに乗っかった形だ。つまり、宮城はすでに制覇してはいるのである。だが、楽天が仙台に来るのに伴い、球場も工事が加わり、ほぼ違う球場である「フルキャストスタジアム宮城」として生まれ変わってしまった。これを「すでに制覇」と言うべきか、「別球場」として扱うか…。そもそも定義が無く、勝手に私が行く行かないを決められるものであるのだが、せっかくの新球団&新球場、行くべきだと判断。冒頭の2005年の話につながるのである。ちなみに福岡は2005年にクリア。ソフトバンク対楽天戦でレフトで観戦していたが、楽天を応援している人が数人(数えた時には6人)しかいなかったのが悲しかった。

 さて、2006年に話を戻そう。7/29、いよいよ仙台行き。今回はマイル余ってるスグノレと韓国発券の国内分を仙台で切った私とで、二人とも余計な飛行機代を出費せずに仙台行きを決めた野球大好き2人組である。出発は9:50の便だが、9時に伊丹集合に設定。ところが、私の乗った伊丹行きのバスが新御堂筋で渋滞に巻き込まれ、いきなり予定が狂う。バスは迂回を選択し、その分到着が遅れることに。で、遅れる旨をメール。ところが、迂回路がすいていたのか、9時2分ぐらいには伊丹に到着。遅れてごめんなさい、さあ今からチェックインしましょうと電話をするが、なんと圏外のアナウンス。集合場所にはいない、携帯はつながらない、時間は過ぎていく、ということで仕方ないので先にチェックインだけ。八方破れ被れに何度も登場しているように、私の持ってるチケットは韓国発券のため、チェックインがやたらと手間取る。今回も例に漏れず、チケットを受け取ったANAのお姉さんが30秒ぐらい固まっていた。15分ぐらい経過して、ようやくチェックイン終了。ほぼ同時にスグノレから腹痛のためトイレに籠もっているという連絡。しばし待つ。

 …待つ。……待つ。………待つ。9時半ぐらいだろうか、再び連絡。カウンタ前にいるが落ち合えない、というコメント。そこで初めてスグノレが集合場所を間違えていることに気づく。繰り返しになるがフライトは9:50。あとわずか20分。改めて搭乗手続と書かれたカウンタに並ぶが、当然のように時間は経過。チェックイン終了は9:40頃。集合場所が違うミスもあったが、ANAの不手際(というか手の遅さ)が一番の問題。慌てて金属探知機通過。もうこの時には空港の人が「仙台行きご利用の方はいらっしゃいませんか?」の掛け声。列をすっ飛ばして2分で終了。走ってようやく搭乗ゲートにたどり着く、というお粗末な事態に。私とスグノレが2人で行動すると、ホントにまともな旅になりゃしない。

 搭乗ゲートではすでに搭乗が開始。まだ列ができており、最後の最後というわけではなさそう。ここで初めて冷静になり、周りを見渡す余裕が。と、ここでグラサンをかけた頭の薄い人とすれ違う。瞬間、私が「小杉(ブラックマヨネーズ)や!!」とスグノレに忠告。スグノレは後ろ姿、というよりその後ろ頭しか見ていないが、瞬時に間違いないと判断。これも我々の旅の特徴で、何かしら有名人に出会う確率がなぜか高い。今回はブラマヨか。

 別々にチェックインだったので席も別々。私は前の方のさらに通路側という定石通りの席を確保。小杉が間違いないことを確認。仙台に何しに行くんやろか?営業か?と思っていたら、次々と吉本芸人が乗り込んでくる。確認できただけで千鳥、りあるキッズ、トータルテンボス、笑い飯。最後にブラマヨ吉田が入ってきたが、顔面いっぱいのマスク+サングラスという異様な出で立ち。プライベートではあの皮膚は隠しているのか。めっちゃ不自然だけど。

 機内で写真が撮れないので、仙台に着いてから席の利点を生かし、スグノレには脇目もふれずに一目散に出口に。デジカメの用意が間に合わなかった上、芸人たちは全員がそそくさとロケバスに乗ってしまったためなかなか捕獲できず。最後に笑い飯の哲夫が関係者と話しているところを携帯カメラでなんとか収めることに成功。笑い飯哲夫とクールてつおー。日本の二大「てつお」が同じ便に乗っていたとはなかなか貴重なことである。同日、同便に乗っていたスグノレはじめ搭乗者は感謝し、大阪と奈良に足を向けて寝ないように。

日本二大「てつお」の一人

 後ろの方の席だったスグノレは、最後まで小杉以外の吉本芸人に気づかず。哲夫撮影時も、「何で俺にカメラ向けるんやろ?」と疑問だったらしい。世間じゃ、そういうのを自惚れって言うんです。

 仙台空港から仙台市内まではバスで約40分。仙台市内に到着してちょうどお昼時、という時間帯である。バス内で作戦を練る。メインイベントの野球は、かなり微妙な空模様で開催自体も危うい。さらに我々は二人とも希代の雨男である。今年(2006)の梅雨は激しい雨が降っておきながら、7月末は全国的に梅雨明けして猛暑となっていた。仙台だけピンポイントで一面雨雲。これぞ雨男の真骨頂。ちなみに路面は完全に濡れていたので着陸寸前まで雨が降っていたものと思われる。観に行くのは当然パリーグなので、予告先発があり、楽天は一場、西武は涌井と若手同士の対決の予定だ。ちなみに私が生で涌井を見るのは2004年の甲子園以来。高校球児としても、プロ野球選手としても両方生で見た選手はなかなか少ない。ある意味貴重である。涌井が投手ということは、ほぼ必然的に捕手が炭谷である。「今日は炭谷も見られるな」というスグノレのフリに、私が「炭谷かどうかわからないじゃないか」という旨を告げると、そこは野球王。「涌井の時は炭谷とのバッテリーと決まってる」との切り返し。「鈴木啓示と有田修三みたいだ」という私の返しには「江夏とダンプ辻みたい」と返す。ここから二人でしばらく古今東西黄金バッテリーが始まるかと思ったが、意外と他はあまり出ず。アニマルと藤田浩雅が出た後が続かなかったので、苦し紛れにシュルジーと藤田浩雅を返したが、昭和野球王のスグノレには最後まで叶わず。悔しがってると、「二人でこれだけ出ただけでも充分やろ」という温かいお言葉。しかし仙台まで来て野球ネタ、しかもバッテリー限定ネタかい。我々の野球好きはとどまることを知らない。

 仙台駅に到着。ものすごい雨である。お互い顔を見合わせて、「やっぱりね…」という表情。幸いフルキャストは人工芝なので、まあ4時半ぐらいまでに雨があがればなんとか試合はできるだろうと楽観視。この時点(12時)でやいやい言うても仕方ない、と判断した二人はとりあえず腹ごしらえ。仙台での飯といえば、まずは何と言っても牛タンだが、それは晩に残すことにして、まずはスグノレが事前に調べた市内の穴子料理の店に行くことに。スグノレの案では、穴子、牛タンの他に冷やし中華(元祖が仙台)と松島での寿司があったが、寿司以外はこの日に全部制覇してしまおうという魂胆らしい。で、逆算すると牛タンが試合後、穴子が昼飯なので、どうしても冷やし中華が夕方(試合前)という勘定に。太るって…。

 穴子料理が選択肢に入っていたのは意外だが、どうやら調べてみると石巻が穴子の水揚げ日本一らしく、そこから仙台にも卸しているようである。なるほど、東北の名物ということか。あとこれも岩手になるが、ホヤも忘れてはいけない。ちなみに私はホヤが苦手である。あの臭いがダメ。話を戻して穴子料理。私は定番通り穴子天丼。スグノレは穴子寿司に。で、出てきたのがこれ。

ボリューム満点

 横にある箸や小鉢の大きさから感覚をつかんでほしいが、とにかくデカい。丼なんて、料理が入ってなかったらどこから見てもラーメン鉢の大きさである。これに御飯と穴子が大量に乗ってる状態。見てるだけで腹が溜まる。奥に少しだけ見えるのがスグノレの穴子寿司だが、はみ出てる穴子三貫に小鉢、それにうどんがついてる。お互い相当なボリュームである。これが運ばれた時点で私の中では冷やし中華が完全に消し去られた。ガンとして冷やし中華を譲らないスグノレとケンカになるが、このケンカは後に意外な形で収束する。

 時間をかけてとりあえず食す。これから野球まで(冷やし中華を除いて)何も予定が無い。スグノレは競馬ヤル気まんまんだが、競馬を控えている私には全くもってやることが無いのである。だから時間をかけてとにかく食す。お茶も激しくおかわりする。最後には自分のところのテーブルに勝手にポットを持ち出す始末。ここで無理やり1時間強過ごす。ここからの時間の潰し方を検討するが、まんが喫茶かゲームセンター、それに喫茶店で競馬という貧困な発想しか浮かばない。観光をしない観光客には、時間の使い方が難しい街である。

 街をブラブラと。晩飯を食べる予定の店もちゃんとチェック。開店時間も24時までとチェック。計画性の無い我々二人にしては珍しくちゃんとチェック。しかし、このチェックもものの5分で終了し、結局ヒマを持て余す二人。道中、本屋を見つけてはるるぶを立ち読みして予定を練るもことごとく頓挫。大体、メインがナイターの野球なのに9:50のフライトで仙台入りしているのがおかしいのであるが、そんなことを言ってももうどうしようもない。とにかく晩まで時間を潰さないといけないのである。仙台には場外馬券売場を始め公共ギャンブルが1つも無い。だからなのか、街中は異様な数のパチンコ屋である。パチンコをしない二人にはただのやかましい派手な建物というだけだ。

 途中ゲーセンに立ち寄り、インベーダーで一喜一憂。いつの時代の人だ、わしら。すぐ飽きたので店を出る。駅からややはずれたところで席の空いてるドトールを発見し(席の空いてないドトールは駅前にあった)、ここに腰を下ろす。まだ腹がもたれてる私を尻目に、スグノレはコーヒーと一緒にケーキまで購入。30代のおっさんにも別腹があったか。中年太りまっしぐらである。ここで競馬新聞を広げて予想を始めるスグノレだが、前述の通り街中に場外馬券売場が無いのでその光景はかなり滑稽である。私はやることが無いので途中で寝る始末。

 競馬も終わり(もちろん惨敗)、15時半となったので席を立つ。次なる目的地は、冷やし中華とスグノレが決めてしまった。まだ腹は落ち着いていないが、まあ冷やし中華ぐらいならイケるぐらいの腹具合になった私は仕方なく賛同。宿にチェックインをしてそのまま冷やし中華→野球観戦という流れになった。宿を出たのが16時半。店に行って食べてそのまま真っ直ぐ球場に向かって丁度ぐらいかな、という時間の計算だ。チケットは指定席を確保しているので、最悪試合開始後でも座る席は必ずあるし、焦ることはないというのが二人の共通の見解だ。というわけで冷やし中華に向かう。店はこれまたスグノレが事前チェック済。それによると、宿から歩いて15分ほどのところにあるようだ。ただ、地図がスグノレが家で調べて(プリンタが無いので)その画像をデジカメで撮ったものしかないというのがネック。我が家のプリンタはその時破損が見つかり、Dellに烈火のごとく抗議していた顛末は一部の方がご承知の通りだ。肝心な時に壊れやがって。

 仙台見参3度目の私は、多少なりとも土地勘(通りの名前とそこから導き出せる方角)があり、まあなんとかたどり着くだろうという感覚。一方スグノレは、事前に調べはするが当日は完全に私に任せきりのパラサイトシングル。こういう場合、後輩が先輩をたてるべきなんだろうが、私とスグノレの関係は完全に上下が逆転。はいはい、こっちからこう行くんですよ、と手取り足取り教えてやらんとアカンのだ。

 事前に場所は調べたことはまあ褒めてあげていいと思うが、問題が1つあった。時間が16時半とかなり微妙なことだ。普通、昼も夜もやってる飲食店は、昼の営業が14時か15時で終わり、晩の仕込みのために店を閉めて17時か18時ぐらいに再び開店、という店が殆んどである。16時半という時間に行っても空いてるのかがわからない。で、当然のように時間のチェックは怠るスグノレ。彼の感覚では「大丈夫」とのことだったが、彼の感覚でよい結果になったことが近年無いので心配の種は増える一方。ほどなくして目的地に到着。時刻は16:50。店の前ではおっちゃんが掃除中。のれんも出ていない。看板を見ると、夜の部の営業は17:00〜とごく当たり前の表示。周りに時間を潰す場所はなく、球場まではやや離れている。スグノレが満腹を圧してまで強く推した冷やし中華は、こうして私をはじめとした大方の予想通りに頓挫したのである。

 叱咤するのは簡単だが、あまりに叱咤するとこちらも疲れるので(というかもう慣れた)そのまま球場に向かうことに。駅からシャトルバスが出ているので、とりあえず仙台駅に。駅到着が17時過ぎ。シャトルバスには長蛇の列。楽天の地元人気の高さは健在か。駅からは地下鉄1駅分、徒歩で20〜25分なので我々はバスを待つより徒歩を選択。この旅はかなりの道程を歩いてこなしている。駅から球場までは宮城野通という大通りで一本道なのだが、なぜか夏祭が開催中。仙台は次週に七夕祭があるはずなのだが…2週連続祭ってことか?それほどやることないんか?いろいろ勘繰れる不可解な祭である。ちなみに祭の名前は「夏祭り・すずめ踊り」だそうだ(河北新報社調べ)。この祭が通を占拠しているため、かなりの人混みである。歩くのに時間がかかるだけでなく、人が密集しているので暑苦しい。大阪に比べ風があるとはいえ、どこの街でも夏の人混みは暑いものだと相場が決まっている。

 しばらくして祭を抜ける。ここからはもうひたすら歩くだけ。周りには同じく球場に向かうと思しき人たちがいっぱい。いっぱい言うても祭ほどじゃないが。しばらくしてようやく到着。時刻は17:40。宿から考えるとほぼ1時間歩いたことになる。貧乏な旅やな…。

 フルキャストスタジアム。正面に来るのは2度目である。球場前では様々なイベントが。スピードガンコンテストはあたり前で、その他ファンクラブも募集中。ちなみに横では「年間パスポート発行中」というファンクラブと何が違うのか全く理解できないパスポート発行所があり、ここで我々は登録。おみやげにノムさん直筆の書が入った手拭をもらう。もちろん無料。サービスいいねー。あれだけ負けてて球団黒字ってのはこういうサービスもできるのかと実感。まあその昔ロッテも年間パスポート(というか年間無料券)を乱発し、10.19ではそれを持った人が球場を埋め尽くしたわけですが。また、入り口付近ではなぜかスコアブック講座。講義を務めるのはこの二人。

球場を正面から
背番号は二人とも10
左は簡単、右は難問

 正解は、左が川尻哲郎、右が安部理である。我々も川尻は一見してわかったが、安部理はかなりレベルが高かった。背中の"ABE"で辛うじて判断できたが、野球王はこのぐらいビジュアルクイズとして顔だけで判断せねばなるまい。一般の方は安部理は知らんでもいいでしょう。しかし川尻は太ってる。現役引退してわずか数ヶ月でこの締まりのない体。現役復帰は無理だろう。しないだろうけど。伊集院光の体重と今の川尻のストレート。さて、135キロなのはどっちでしょう。あ、元ネタわからん人は置いてきます。

 雨も降らず、試合は行われる模様。雨を期待していたみなさん、すんません。試合は普通にありました。

 席に着く。早めに手配していたおかげか、前から2列目という席番だけ見たら絶好のポジション。でもライトなので周りはやや西武ファンが多い(フルキャストは3塁側がホームチーム)。しかし2列目となると、目の前に金網があるので逆に見にくい。スグノレはすぐに席替えを所望したが、とりあえず自由席より高い金出して買った席なので見ることに。でもあまりの見にくさに1回表だけで断念。どれだけ計画性がないんや、この二人。自由席に移動して今度は逆に上の方に陣取る。外野席なのでどこ座ってもバックネットまでは遠く、じゃあ空いてる上の方がいいや、という安易な考えだったが、周りがガラガラだったためか思いのほか快適である。やはりパリーグはこうでなくちゃ。ところで、こんなに空いてるってことは、仙台駅で見たあの長蛇の列の正体は何やったんやろ?以下の2枚は2列目とほぼ最上段。見比べたら見易さが一目瞭然。

ローアングル
高みの見物

 試合は4回表、それまでノーヒットに抑えていた楽天一場が西武の中島から交通事故。ホームランの瞬間、中島の応援でよく見る「サザエさんに出てくる中島の似顔絵の横断幕」が出ると思ったが、どうやら誰も持ってきてないようだ。カメラ構えてたのに、残念。涌井はヒットを打たれるが散発で要所を締めるピッチング。1-0で8時すぎぐらいに7回終了。この後牛タンが控えている我々には願ってもない展開だが、1点差だけにすぐ同点となるし、同点となったら延長となり逆に早く終わらない。でロッテファンの私はとりあえず西武に勝ってほしくない。もどかしいところだ。ちなみにスグノレは途中でどこかいなくなるし、新聞読んでるし。相変わらず二人して現地にいながらキチンと野球を見ない。

 8回表。中島のホームラン以外は抑えていた一場が1死から片岡、中島と連続でヒットを打たれて1,3塁のピンチに。カブレラは三振に打ち取るが、続く和田にはカウントを悪くして敬遠気味の四球。で満塁から栗山にライト前に運ばれ、2点を追加。これで3-0。我々二人の目には勝負あったかに見えた。

 その裏。楽天は先頭の塩川が内野安打で出塁、関川と高須が続いて無死満塁の大チャンス。ここで三振男、鉄平の登場。我々の予想は外野フライも打てずに三振か内野ゴロゲッツーの間に1点の2択だったが、結果は1番人気の空振り三振。1死。続く4番フェルナンデス。これがキッチリボール球を見極めて押し出し四球。3-1。なおも満塁で山崎武司。四球後の初球を狙え、というのは野球の定石だが、1ボールからの置きに行った甘いスライダーをジャストミートし、なんと満塁ホームラン。球場は8割が楽天ファンだったが、狂喜乱舞。8回の西武の2点が決定打と思っていたファンも多かったようで、みんなして相当の喜びよう。いや、見事。これで5-3と一気にひっくり返す。バックスクリーンにはタマホームの広告が登場。このタイミングで何故?と思うがその後疑問は解決。広告には一言、「タマホームラン」…。あっそう。

 後続は続かず5-3のまま最終回。今や安定感ではパリーグ屈指のストッパー福盛がヒット1本は打たれるもののきっちり抑え、楽天の逆転勝ち。楽天の逆転勝ち試合なんてそうそうあるもんじゃないが、それを生で見られたというのは貴重だ。二人の見解はバッテリーが若かったという結論で一致したが、炭谷はリードが若い。困った時の外一辺倒というのは私の大嫌いなリードだが(代表格は阪神の矢野と現在中日の清水将海)、同じような嫌いなリードだった。逆に楽天の藤井は一場のいい意味で散らばった投球をうまく引き出してた感じがするし、あまりコントロールのよくない投手でも内角攻めもあったし、わりと私好みのリードである。キャッチャーの持ち味が勝敗を分けたか。

 帰る間際に外野スタンドにあったトイレに立ち寄る。するとそこには何故かEdyのチャージャ。トイレに置く必然性がわからん。フルキャストで一番の不思議スポット。

 試合終了がちょうど9時。これから歩いて駅まで戻って、チェックしていた牛タン屋に。20分ほど待たされる。途中、後続の客がやたら来るが、満席とわかるとみんなして引いていく。仙台の人たちは諦めが早い。また、みんなして捨て台詞の「楽天の連中が流れてきてる」を吐いてたのが面白かった。どうやら楽天が勝つと街が活気付くらしい。それはそれで地域活性のために大変いいことだと思うが、残念ながら街が活気付くのが年40日も無いというのがネックである。ほどなくして2席空いたので座る。ここからは夜遅いというのに牛タン三昧。ペースが速い。これだけ食べたら痛風が心配である。結局2人で9000円分も食す。いくらなんでも食べすぎか、と。

牛タン

 閉店までいたので宿に戻ったのは12時を回っていた。翌日は松島行きと決め、9時集合とだけ決めてそれぞれの床につく。あ、国分町は行ってませんのでレポートできません。

 翌30日(日)。宿は朝飯付きだったが、晩の牛タンが尾を引いている私は朝飯を抜く。スグノレは9時集合なのにのんびり朝飯を食べて早速集合時間を後ろ倒す愚行。9時半、出発。仙台から松島は「わりと近め」というだけで行き方を何も知らない我々は、10時を待ってまたしても本屋直行。仙石線で松島海岸駅まで、快速で約25分とわかり、ひと安心。確かにわりと近めだ。快速は1時間に1本しかないが、その1本以外は大体が松島の手前が終点なので、結局この快速に乗らなアカンというハメに。仙石線はかなり混んでいたが、まあ座る場所は確保。二人はKIOSKで購入したスポーツ新聞を読み耽る。ちなみに仙台駅は次週の七夕祭の色がすでに濃い。飾りも派手である。右側の写真のお飾りで大体高さが15mぐらい(目視による)。

これは小さめ
コンコースの真ん中を占拠

 松島海岸到着。二人とも、松島に来るのは2度目だが最初は車だったということで駅前の観光案内所で地図をもらう。お目当ては寿司であって、松島観光がメインでないところがポイントである。寿司は観光客向けの市場で。食券のシステムがえらく不親切で注文が通ってるのかどうかがこちら側で全然わからないというシロモノだったが、なんとかありつく。写真は海鮮丼とあら汁。鮪のニギリをつけて大体ひとり2500円ぐらいだったと思う。朝飯を抜いた私はかなり正解。朝飯にパンを4つ食べたスグノレも丼を普通に平らげていた。結局朝飯を抜こうが抜くまいが食べるってことか。

松島海岸駅
海鮮丼とあら汁。美味

 続いて、時間もあるしやることないので湾内を周回する遊覧船に。一人1400円。飯より安いが割高な気がする。2階建てであったので、眺めの良さそうな2階に行こうとするが、この船なんと2階は「グリーン席」と銘打たれ別料金を取られるのである。ヒドい話だ。当然そんなしょうもない出費は(たとえ100円でも)胸くそ悪いので却下。1階席に落ち着く。船では逐一「左手に見えますのは○○島と申します。仙台藩主、伊達政宗公が云々」と説明が入る。その後で英訳された解説が入るのだが、その英訳はかなりぞんざいだった。伊達政宗を"He is a famous person in Japan."だけで済ますのはいかがなものか。松島は小さい島が湾内にいくつもある日本三景の1つであるが、私は2度目だし何しろ島しか見るものが無いので退屈なことこの上ない。結局後半は耐えられず熟睡。ヘタなプレゼン見せられるより退屈だった。じゃ船乗るなよ。

遊覧船
松島のうちのどこかの島

 結局一回りして戻ってきたのが14時ぐらい。これがちょうど1時間に1本の電車の時間と近いのだ。遊覧船で寝るぐらい退屈している私とスグノレには寿司がメインであって、もう松島には用はない。ということでこの電車に乗ってサッサと仙台に戻る。ちなみに帰りの電車は往きよりは停車駅の多い快速のようだったが、飛ばす駅が2駅しかなく、普通電車と3〜4分しかかかる時間が変わらないようだ。ほな各駅にしたったらええやん。あと、仙石線はドアが開かないので降りる人はエレベータについてるような「開ける」ボタンを押さなくてはいけないのである。活躍するのは冬だけかと思っていたが、冷房の冷気が逃げないので夏でも意外に役に立ってる。大阪は乗降客が多いので実現せんだろうな…

 仙台に戻ってきたが、まだ時間は15時前。帰りの飛行機は18:50とまだ3時間近くある。空港まで1時間と見てもまだあと2時間。で、もうドトールみたいなコーヒーショップでは退屈極まりないので…ということで行き着いた先は結局ゲームセンター。仙台まで来て何やってんだか。ちなみに行った先のゲームセンターでは、クイズマジックアカデミーが100円で2クレジット。なかなかお得。にもかかわらず空席があったということは、人気薄のための稼働率アップの苦肉の策ということか。ユーザにとっては何の文句もないのだが。

 そうこうしているうちに夕方になったので空港行きのバスに乗車。空港ではやっぱりチェックインに四苦八苦。時間に余裕があったので往路ほど焦らなかったが。土産を購入し、晩飯を食す。食べてばっかり。とはいえ、ついに冷やし中華にはありつけなかった。まあ旅行始まるまで仙台が冷やし中華の生まれた土地だということは知らなかったのだが。

 こうして振り返ると2日目は見せ場まるでなし。目的は1日目で達成してしまったし、とにかく時間を潰す場所も手段も無い街だった印象ばかり残った。退屈しのぎにゲームセンターなんて、旅行に行ってやることじゃない。往きの仙台駅行きバスの車中、スグノレと「これでピークがあの飛行機内だったらどうしよう」と危惧していたが、結果としてその危惧は現実のものとなってしまったのである。

 ともあれ、12球団本拠地制覇は見事達成。道中は仙台駅に着いた時以外は結局雨は降らず、雨男のくせに傘を持参しない二人の愚行は愚行にならずに済んだ。野球は球場に行っても相変わらず真剣に見ず、スグノレはキャラを十二分に発揮し、結局いつものメンツでいつもの旅に終わってしまった。食に関しては贅沢三昧で文句は1つもないのだが、いいもの食べると体調を崩す貧乏体質の私には、この2日後、怖ろしいほどの発熱に見舞われるのであるが…これは余談としておこう。ネタになるかわからんがとりあえずここに宣言しておく。もうしばらく仙台に行くことは無いだろう


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