第78回
西国三十三箇所巡礼の旅 vol.3
〜2006 夏休み特別企画〜

 明けて木曜日。9時ジャストに新大阪を出発したのでは遅いと前日に早くも気づいたので、早めの7時起床。前日は夜更かしもせず、入床が早かったので早起きも苦にならず。いつもながら、低血圧なのにイベントごとには強い私。小学生か!!

 自宅 8/31(木) 7:55 総走行距離 290.5km

 8時前に家を出る。まずは駐車場の精算。我が家の裏手にあるパーキングに停めていたのだが、ここは23時〜翌7時までは1時間100円という、大阪市内にしては良心的な価格設定である。その分、デイタイムは1時間300円と高くなるのだが、それでも市街地よりは安い。大阪市外れのベッドタウンである。精算をすると1600円。そしてここから当然のように高速代が課せられる。今日も今日とて朝から出費が多い。

 前日晩に買っておいたパンとコーヒーを車内で。コンチネンタルブレックファスト。でも車内というこのアンバランスさがたまらない。いや、コンチネンタルだから車でも別にいいのか。船やったらアンバランスやけど。何のことかわからない人は置いてくよ。ここで笑わないと笑うとこ無いよ。

 目指すは前日に断念した南法華寺。今日は時間タップリ。なるべく早めに着いて例のごとく前倒し励行。まずはお決まりの南森町から阪神高速。だが、朝の新御堂筋南行きは基本的に地獄。渋滞、渋滞、渋滞。やっと抜けたかと思うと南森町までまた渋滞。そして、阪神高速がまた渋滞。この日は奈良なので松原JCTから西名阪になるのだが、松原線までダラダラと行くことになってしまった。時間勿体ない。その分朝飯は優雅だったが。車中の飯の時点で優雅とはかけ離れているような気もするが、気にしない。追加料金ギリギリ手前の香芝で降りる。そこから下道。

 香芝を降りた時には9時過ぎ。既に1時間経過。7:55出発がまだ遅すぎたことを感じる。翌日はさらに早くに出ないと、と反省。前日苦労した国道24号線も、朝ということもあってかなりスムーズ。心配された渋滞もここでは無い。30分足らずでサクっと到着。到着まで見せ場無いので。

 南法華寺 8/31(木) 9:31 総走行距離 350.5km

 たかだか60kmの道のりに、さらに高速を使って1時間半…。時間も高速代もムダに思えるが、ともかく到着。が、いきなり入口に駐車場のバー。とりあえず後払いのようなのでそのまま前に行くとバーが開く。他に停める場所が無いのでここに入るしかないのだが、駐車料金が書いてない。不安。駐車場には何台か車が止まっていたが、ここは養護施設が併設されており、おそらくその関係者の車かと思われる。この寺、眼病にご利益があるらしく、この養護施設も眼の不自由な方が暮らしているようである。

 山門近くに係の人。係の人がいるということは、入山料を取られるということとほぼイコールである。仕方ないので話をし、入山料を払おうとすると、「車で来られましたか?」と声をかけられる。かなり辺鄙な場所にあるお寺なので、そんなことはわかってるやろ!!と思うが仏さんの前で声を荒げてもいけない。そうであることを告げると、次の一言。「駐車場代込みで1000円です」。高いって!!

 なんだって維持費のかかるようなところに維持費のかかるような造りの建物があるんやろ。なんだってここが巡礼地に入ってるんやろ。嘆いても仕方ない。巡礼している身にとっては、選択の余地が無いのである。仏に仕えるのに金も取られる。これも修行か?納得いかんけど納得せねば。

 敷地に入る。当然のことながら、訪問客(巡礼者)は私一人である。広々とした敷地を回る。かなりキレイな造りで、これにも金がかかってるんだろうな…と邪推。ひょっとしたら、訪問客が少ないから単価を上げているだけかもしれないが、1000円も払っているので元を取ろう!?と私も必死だ。

西国第六番札所
壺坂山 南法華寺
山門
本堂

 ちなみにこれは上からと下から。眺めはかなりいい。朝日が眩しくなかなか写真を撮るのも難しかったが、とりあえずはこの2枚。

俯瞰
ローアングル

 あとはやたら観音様だとか絵図とかがあったが撮ってない。途中から時間ばかり気になりだしたため。また、山門付近に御茶屋があり、西国巡礼者にはお接待(長旅となりうる巡礼者に、お寺や地元の人が好意で、無償でお茶や食べ物を振舞うこと)があるのだが、受けている時間が無いので素通り。また今度。

 南法華寺 8/31(木) 9:55 総走行距離 350.5km

 1000円で滞在時間24分。1時間あたり3000円とはベラボーな価格設定だ。一人じゃもう来ない。さて、次は前日行った七番札所ではなく、八番札所の長谷寺である。また岡寺に行く道のそばを通ることになる。なんて効率の悪い旅なの。

 有名どころのお寺であるし、山あいではないことはわかっていたので気楽な旅。運転も比較的ラクな道ばかり。桜井市に入り、長谷寺の看板が見えてきた。時間は11時前。これで2箇所目ということは、約1時間半ペースであと4つは回れる。ということはこの日は6箇所という計算か。うーん、あんまり前日と変わらないな。

 参道と思しき道に入る。ここで車道が極端に狭くなる。通り沿いには郵便局も銀行もあったので、生活道路だとは思うのだが、車がすれ違う幅すらない。1台半ぐらい。脇には軒先まで商品を並べた土産物屋。ここもなかなかの試練である。進むとさらに狭くなり、とうとう1台分ぐらいしかなくなる。完全に車をやり過ごす場所も無い。しんどくなってきたので目に付いた駐車場に飛び込んだのだが…

 長谷寺 8/31(木) 10:42 総走行距離 372.5km

 駐車場に入ると、係のおっちゃんが寄ってくる。が、ここは向こうにある美術館の駐車場も併用である、と告げてくる。兼用である場所が安いはずが無い。嫌な予感。で、駐車場代を聞く。するとおっちゃん、「1000円です」…。あー、やってもうたー!1000円て!!高いって!!!ドラゴンボール並みにビックリマーク使いすぎやって!!!!

 今回は選択の余地があった。ただ、段々狭くなっていく車道に恐怖を感じて値札を見ずにそのまま入ってしまったのだ。戻るにも意外と距離があるし、なにやら気まずい。時間もかかる。ここは入ってしまった自分を潔く認めるしかないのである。残念。この借りは必ず返す!!

 ここからお寺までは徒歩2分ほど。近い。おそらく一番近い駐車場。もう時間を金で買った感覚。諦める。で、入口は見つかったが山門が見えない。山門が見つかっても本堂が見えない。あ、山門ではきっちり入山料500円まで取られましたとさ。

敷地の入口
山門

 山門をくぐる。あとは本堂を目指すだけ…となるのだが、その前にたけし城もビックリの次なる関門が待ち構えていたのである。それは!!

長ーい登廊

 何なんですか、この長い廊下は。この微妙な傾斜は。この先の見えない道は。美術として見ると凄い出来なのだろうが、これを登らないといけないと思うとただウンザリ。途中、いろんなところに据え付けてあるスピーカーから長谷寺の説明があるのだが、まさに「聞く耳を持たない」状態。聞こえてきたのは真言宗豊山派の総本山であること、源氏物語のどれかの巻(クイズ研OBですが全部言えません。どれかです)に出てくるということ、そしてこの登廊が399段あるという情報の3つだ。特に3つ目は具体的に数値で示されるとウンザリ感が増す。修行、修行。仏の道は楽ではないのだ。

 この道がさらにしんどいのは、この階段が1歩で1段登れないことである。微妙な歩幅が必要で、大股なら1歩、普通なら1歩半ぐらいかかるからややこしい。杖をつくほどの傾斜ではないのだが(1歩半で1段の段差なので)、まずゴールがだいぶ先にしか見えないこと、それにこの歩幅が自分なりのペースで歩かせてくれないことでさらに疲れを増すのである。なんとむごい修行。脇には牡丹が植えられているらしいが、もはや見る余裕などない(季節じゃないので咲いてもいない)。なんとも末恐ろしいところに来てしまったものだ。

 399段、登ったところにようやく本堂。一心不乱に納経。御朱印ももらい、また一心不乱に来た道を戻る。奥の方に五重塔があったが、見る気力もなければ時間もない。これで巡礼と言っていいのかわからないが、とにかく先を急ぐことにした。

西国第八番札所
豊山 長谷寺
本堂

 長谷寺 8/31(木) 11:10 総走行距離 372.5km

 ようやく車に戻った時には、既に30分近く経過していた。敷地内で寄り道を一切せずに、まっすぐ行ってまっすぐ帰ってきてこの時間である。併設された美術館には、横山大観の書があったらしいが、さすがに遠慮させてもらった。また、近くには番外の法起院もあったが、これは当初の予定通り回避。次は第九番札所、興福寺である。さらに有名どころ。これは奈良公園の中だし、狭い道を走らされることもなければ山道でもないことは想像に難くない。俄然テンションが上がる。長谷寺は桜井市にあったが、興福寺は奈良公園なので奈良市のど真ん中。国道25号線を北上する。この道は、以前私が仕事で奈良の某会社担当だった際によく利用した道。勝手知ったる道である。天理市での天理教の建物の数々にも見慣れているので驚かない。ここに来る度に「千と千尋の神隠し」が思い浮かぶのは私だけではないはずだ。

 やがて天理市を抜け、奈良市に。確か奈良公園は近鉄奈良駅のそばだったと記憶を辿り、開けてる方、開けてる方に車を進める。途中で1回給油。よく考えたら400km近く走っているのに給油せずに済んでいるところはやはり燃費のよさか。給油は30リットル弱。ということは、十数キロは余裕で走ってる。はぁ、凄いね、fit。

 奈良公園はすぐ見つかった。あとは駐車場の確保だけだが、公園の敷地内に駐車場がある模様。駅に停めるより手軽だし、何より近い。すぐ出るしそんなに金もかからないだろう、と判断し公園に入る。

 奈良公園 8/31(木) 12:10 総走行距離 401.4km

 意中の駐車場はすぐ眼前に。いやぁ、なかなか間違ってない判断やな、と思い車を入れる。が、5〜6台ぐらいしか停まっていない。いくら平日とはいえ、お昼時だし少なすぎないか?と疑問がわく。その疑問はすぐに氷解。例によって係のおっちゃん登場。でまずはスペースには頭から入れてくれ、と忠告。それに従い入れ、最後に金を払おうとしたその刹那!!「900円です」。いや、だから高いってば。これで3連荘。公園内なので入山料はかからないが、これでこの日は3箇所で計3400円也。平均1000円超はいくらなんでも高い。前日とは対照的だ。

 山門が無いし、納経は本堂ではなくて南円堂という場所。写真はその南円堂。

西国第九番札所
興福寺南円堂
南円堂

 奈良公園は広い。猿沢池、五重塔など見どころも満載。が、今回は当然のように無視。あるとすれば、

奈良の春日野

 これぐらいか。いや、別に「名所」でも「見どころ」でもないのだが。

 奈良公園 8/31(木) 12:22 総走行距離 401.4km

 滞在時間、わずか12分。どんどん行く。900円の駐車料金は1時間あたり4500円ととんでもない額になるが、考えないことにする。ああ、やっぱり高いな…。駐車場出る時、おっちゃんが「アンタ、もう出るんかいな!!」みたいな驚いた顔をしていたのには笑ったが。そら普通はそう思うわな。

 さて、次はいよいよ京都。第十番札所、三室戸寺である。京阪宇治線である。六地蔵、黄檗、宇治方面である。名前は駅名から知ってはいたし、場所も駅からなんとなくわかってはいたが、行くのは初めて。京都にある大学に5年通ってても、わからんことはまだまだあるのである。あ、三室戸寺は宇治市だった。その前に私の学部が滋賀県だったが。

 奈良市からだと高速を使う方が早い。京都にある高速の中でも意外とマイナーな、京奈和自動車道である。和歌山方面まで一直線で行けるようで行けない、なんとも中途半端な道路である。有料区間の南端、木津ICから乗る。城陽までほぼ真北を向いている、京都に向かうには何とも都合の良い道路ではあるが、手前の西田辺で降りる。決して御堂筋線ではないのでお間違えなく。料金は700円。朝からの経費を考えると、何故か高速代の700円が凄く安く感じるから不思議だ。人間の感覚なんて案外単純なもの。

 西田辺ICからは例によって国道24号線。この道路、本当に私について回る。しばらくJR奈良線と並行して走り、宇治駅が近づいたところで三室戸方面に。駅があるというのは道標になっているので、車移動でも場所が大変わかりやすい。

 三室戸寺 8/31(木) 13:13 総走行距離 437.3km

 三室戸寺到着。ここでもまた、山門前にこれみよがしに駐車場。観光バスも停まれる非常に広いところだったが、駐車台数は完全に目視可能。4台。寂し!!駐車代は500円。で入山料も500円。〆て1000円。やっぱり1000円。ほらね、高速代700円とか安く感じるでしょ?

 三室戸寺はツツジ、アジサイ、ハスと植物が有名。ところが8月末はどれも季節じゃない。植物に明るくない私には、庭園にあるのがハスの葉以外どれが何だか皆目検討がつかない。ということで当然ここも見ないことになる。

西国第十番札所
明星山 三室戸寺
山門
本堂

 サクサク納経。サクサク通過。もはやスタンプラリーである。仏に仕える姿にはまったく見えない。ちなみにこの三室戸寺、夏でも納経は16時までという厳しい制限時間つき(冬ならさらに30分前倒してなんと15:30!!)。これから行かれる方はご注意を。

 三室戸寺 8/31(木) 13:35 総走行距離 437.3km

 はい、三室戸寺終了。時刻は13時半すぎ。ここまで4つ、タイムリミットはあと3時間半。いいペースだ。これならあと2つか3つはいけるかも。

 次は十一番札所、醍醐寺。今度は京都の地下鉄東西線。昔の終点。距離も10kmちょっと。楽勝で着く。おやおや、これではうまくいくと14時に終了するではないか。ほほほ、いいペース。良すぎて笑いが止まらない。

 途中は見どころ無し。20分足らずで到着。

 醍醐寺 8/31(木) 13:53 総走行距離 437.3km

 さて、醍醐寺である。山門らしき門が目の前にあり、その横に例によって駐車場。親切な造りだ。車を止める。ここは自動化されているので帰りに金を払うシステムの模様。金額は700円。うーん、微妙だがまあアリやな。アリとナシの境は特に設けていないが。

山門

 ところが、1つ気になる点があった。お馬鹿なカーナビが全然違う場所を目的地として示していたことである。ひょっとして、醍醐寺は2つあるのか?という疑問も湧いたが、実際山門(上記写真)を見たところでは西国第十一番云々と書いてあるし、間違いはなさそう。おかしいな、と思って首をかしげながらも納経に向かおうとする。醍醐寺は敷地面積が激しく広いので、迷子にならないようにしなければならない。確か駐車場のそばには案内図があり、奥まったところにあるような描き方をしていたので、まあ山門に背を向けて歩いていけば着くだろう、という甘い認識を持っていた。この認識は、まあ間違いではないのだが、後に親の仇よりも甘いことを思い知らされる。  最初の分かれ道の十字路。ご丁寧にどっちに行けば何があるかが書かれている看板を発見。さすが、迷わないための処置やな、と思って見てみると……そこには驚愕の事実が書かれていたのである。


































地獄への案内図

 徒歩63分!?この車社会にそんなことがあっていいものか!!思わず二度見したわ!!

 醍醐寺は上醍醐、下醍醐と別れており、今いるのは下醍醐。そして納経所は上醍醐なのである。下醍醐は敷地内に入るのに入山料を取られるが、上醍醐にだけ行く人は横の方の道から行けるらしい。当然金を払わない方を選択。別に距離の長さにキレたわけではない。とにかく時間を心配しているだけである。納経に関係ない場所を見ている場合ではないのだ。

 結局「どこがいいペースやねん!!」と自分で自分を小さくツッコむぐらいしか自分を鼓舞することができない自分がいた。まさかの徒歩1時間。前日の施福寺を大きく凌ぐ大記録樹立である(まだ歩いてないから樹立してないけど)。だが行くしかない。ひたすら歩くしかない。前方に見えるのは明らかに山である。ということは、歩くのは明らかに山道なのである。降参もできない。徒歩以外に手段も無い。諦めるしかないのである。

 入口にご丁寧に杖置き場が。「ご自由にお使い下さい」との表記。杖をついて歩かなくてはいけないほどの道なのか…。いや、これは地元の好意で置いてあるだけだ、と自分に言い聞かせる。そうだ、確か金比羅山にもあった。こういう道にはこういう杖がつきものなのだ。金比羅山は長いことは長かったが大した道のりではなかった。それを考えると…大丈夫だろう。意を決して歩を進める。

 下醍醐寺山門 8/31(木) 13:56

 予想を裏切らない、完全な山道である。もうひたすら山道。周りは木しか見えない。14時過ぎであるが、木に完全に覆われている部分では薄暗い。たまに開けると今度は日差しが暑い。どう転んでも天国にはなりえないのである。さらに、この夏の豪雨で所々倒木もあり、ただでさえ狭い参道を塞いでいるところも数多い。まさに修行。他に手段が無いというのは現代人は楽をしすぎているということなのか。

薄暗い参道
ウドラーが現れた。コマンド?

 まるでルーラを覚える前に一生懸命に次の町まで徒歩で行こうとするドラクエのパーティのようだ。違いと言えば敵が出ないこと、装備が軽いことぐらいか。似ている点といえば、とにかく歩かないと先に進めないことと、歩いているとやがて夜になることである。

 途中、丁石が参道脇に。昔の道標になる、「○丁」と書かれている石碑?である。一丁、二丁ぐらいならまだ元気。声を出して数えると大声クイズのネタだ。この石、どこまであるか不明。とりあえず数が増えていくのは間違いなさそうだから、1つ1つ見つけながら進んでいく。三丁、四丁。まだまだ。五丁、六丁。おいおい、すでにハネ満あるで。もう体もしんどい。「2.9km」という距離感覚が私には無いから、63分歩かないとアカンという時間だけしか目処が無い。なんと無情。

 八丁に達した頃、道が石段になる。整備されたというべきか、これだけ整備しとかないといけない道だというのか。もうどっちでもいい。十丁。なんだか中間地点のような小屋を発見。休む人が何人か。先を急ぐ私は休憩せず。湧き水があったのでここは給水。駅伝やマラソンと違い、ゆっくり給水。日が当たらないとはいえ、さすがに歩き通しでは水分も失われるというもの。ただでさえ人一倍汗をかく私である。まさかこんな長丁場だと思ってもいなかったので、お茶などの水分は持ち合わせていない。

 先の見えない道はまだ続く。復路を急ぐ人とすれ違うと、誰もが例外なく疲れ切っている様子。旅路の厳しさを顔色だけで思い知らされる私。そしてついに丁石は十二丁。あがり役をつければ数え役満である。やった。いや、達成感は無い。まだゴールが見えないのである。当然、この先十三丁、十四丁と続くのであるから。

 十六丁。なにやら立て看板。内容は大したものではなかったが、ここから道が下っている。ゴールは山頂じゃなかったのか。この思い切り膝が笑っている状態で下りは物凄く危険。ちょっと気を緩めると勝手に走り出す始末。山道で一方が崖なので、かなり手ごわい。慎重に進む。

 十九丁。ようやく門が見えた。字面にすると大した文ではないが、これで正味1時間。「ゲームセンタCX」でも1時間足止め、などと軽々しく言っている場面を見受けるが、当人はたまったものではないのだ。こればかりは体験しないとわからない辛さである。ただ、どうやら寺務所に入る門らしい。これはスルー。

 本堂(納経所)まではまだ長い登り階段。ぬか喜びさせんでほしいわ。でも登るしかない。ここからまた200段ぐらい登り、ようやく、本当にようやく納経所にたどり着く。完全に汗だく。喉はカラカラ。でもまずは納経。

西国第十一番札所
深雪山 上醍醐寺
寺務所入口
本堂

 納経1つのために片道1時間の山道を歩く。これを「修行」と言わずして何を修行と言うべきか。

 納経所の横に休憩所。さすがにここでは休憩。先客のおばちゃんがいたが、なんか慣れてる様子だった。毎日来てるわけではなかろうに。お茶持参だったので新参者ではないことだけはわかった。で、このおばちゃん連中が僧侶とお話中。なんか仲いいということは、やっぱり常連。会話内容は諸事情により書けません。

 あ、書きたいことは書いたので復路はすっとばします。コスモクリーナーをゲットした後の宇宙戦艦ヤマトばりに、復路は見せ場が無いので悪しからず。

 下醍醐寺山門 8/31(木) 16:00

 戻ってきたら16時ジャスト。次は十二番札所、岩間寺。ギリギリ滋賀県。醍醐から山を越えて滋賀側に行かないといけない。地図を確認、で住所をナビに入力。が、住所のところをよく見ると、なんと岩間寺は16時半までらしい。醍醐から岩間寺までは30分はかかる行程。飛ばしてギリギリである。前日は飛ばしてなんとか間に合ったが、今回は山を越える必要があり、分が悪い。そこで思い出したのが前日同様の回避策。十三番札所の石山寺に先に行く案である。石山寺は瀬田川沿いで山は越えるがたどり着きやすい場所。制限時間は16:45と17時前ではあるが、岩間寺より余裕がある。ということでこの日も1つ飛ばして石山寺に行くことに。

 しかしそこは山道。スピードが出ない。こんな時に限って遅い車が前にいる。45分ある、という捉え方もできるが、45分しかない、という考え方もできる。とにかく微妙なのである。滋賀に入り、しばらくしてようやく車がいなくなる。早速飛ばす。なんとか間に合わせるために。

 石山寺 8/31(木) 16:38 総走行距離 465.1km

 終了7分前に到着。よかった、間に合った。併設されている駐車場は車が殆んどいない。これは前日の岡寺でも同様。本来であれば駐車場代を取られるところも、もう係の人がいない。全然白線通りに止めず、とにかく急いで山門に。

 がしかし、山門では今まさにおばちゃんが門を閉めようとしているところだった。事情を話し、中にいれてもらおうとするが、「納経所はもう閉まってます」というキツい一言であえなく撃沈。私のような、基本的にツイてない人間が2日連続でそうそううまくいくはずがないのである。納経所が閉まっているのであれば、もう行っても意味がない。石山まで来て、出直しということになってしまった。思えば、駐車場に係の人がおらんかったところで気づかなくてはいけなかったのだが、冷静さを欠いていた。駐車場から山門までダッシュしたその体力は、醍醐で2時間山歩きをしていた体に思いっきり応える。ギリギリ間に合わなかった、という残念具合も輪をかける。だが仕方ない。自分の都合で進められる旅ではないのだから。

 思えばこの日も昼食抜き。それでいて山登りだ山下りだ、最後にはダッシュだと体力を使う1日だった。結局この日は前日同様5箇所。2日で10箇所とは明らかなペース配分ミスである。だが次回は場所のわかる滋賀の2つのお寺から。幸い、京滋バイパスのICにも近い。さらなる早起きを誓うべく、この日は寄り道をせずにとにかく帰路を急ぐ。

 自宅 8/31(木) 18:13 総走行距離 528.5km

 家到着は18時過ぎ。体力回復に努めるため、この日は早めの就寝。万歩計は18391歩。醍醐の往復だけで1万歩費やしたのかもしれないが、かなりの歩数確保。1万歩の目標は軽く突破である。さすがにこんな障害が今後もあるとは思えないが、引き続きの目標はやはり1万歩とすることにする。


経費
駐車 自宅そばパーキング 1600
高速 南森町→香芝 1100
入山料 6 南法華寺 600
納経 6 南法華寺 300
駐車 南法華寺パーキング 400
入山料 8 長谷寺 500
納経 8 長谷寺 300
駐車 長谷寺そばパーキング 1000
給油 ガソリンスタンド 4234
納経 9 興福寺 300
駐車 奈良公園パーキング 900
高速 木津→西田辺 700
入山料 10 三室戸寺 500
納経 10 三室戸寺 300
駐車 三室戸寺パーキング 500
納経 11 上醍醐寺 300
駐車 醍醐寺パーキング 700
高速 石山→吹田 2000
小計 16234
これまで 65590
合計 81824

訪問寺院
1 青岸渡寺 和歌山県那智勝浦町 2 金剛宝寺 和歌山県和歌山市 3 粉河寺 和歌山県紀の川市
4 施福寺 大阪府和泉市 5 藤井寺 大阪府藤井寺市 6 南法華寺 奈良県高取町
7 岡寺 奈良県明日香村 8 長谷寺 奈良県桜井市 9 興福寺 奈良県奈良市
10 三室戸寺 京都府宇治市 11 上醍醐寺 京都府京都市 12
13 石山寺 滋賀県大津市 14 15
16 17 18
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28 29 30
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