第80回
西国三十三箇所巡礼の旅 vol.5
〜2006 夏休み特別企画〜

 5日目。この企画、車移動になって初の週末。移動手段は車と相変わらずだが、週末となったことによる道路の混雑の懸念があるのが不安である。  さて、前日11箇所と大量に貯金を稼いだこの旅、この日は前回最後の総持寺からは方向が違う場所に。逆に言えば前日に総持寺まで行っておいて効率がかなりよくなったということだ。さすがに旅慣れてきたか、それとも流れがきたか。

 この日、最初の目的地は第二十三番札所、勝尾寺。場所は箕面。新御堂筋を北にあがればいいので悪い場所ではない。前日のような(結果として無駄となった)早起きもしなくてよかったが、とりあえず8時着を目指すことに。

 しかしながら、ここからは個々の寺の距離が長い。姫路や宮津には一度家に戻って…という手段が使いにくいので、万が一に備えて着替えを持参。本当に使うかは別として。泊まるとなると金もかかるし、できれば避けたいところではある。

   自宅 9/2(土) 7:24 総走行距離 795.4km

 駐車場代は1800円。いつも通りか。もう何の感情もない。車は北上し、箕面に。朝7時半の新御堂筋はガラガラというわけではないが比較的空いている。朝会社に行く際に見える混み混みの新御堂筋がウソみたいだ。時間帯が違うし、そもそも土曜日だというところに決定的な違いがあるのだが。

 勝尾寺 9/2(土) 8:00 総走行距離 813.8km

 30分ほどで勝尾寺到着。途中、ひどい山道ではあったが片側1車線ずつと別に狭かったわけではないし、問題はない。ただ、山奥の寺となると、ここも例によって駐車場が寺のものしかなく、有無を言わさず止めさせられて金を徴収されるということになるのである。御多聞に漏れず、ここも500円。いた仕方ない。

 8時ジャストでちょうど開門、というところだったが、何やら山門の前は工事中で賑わっていた。警備のおっちゃんもおり、とりあえず迂回路を歩かされる。山門の写真は何とか工事が見えないようなアングルで撮影。苦労した。

西国第二十三番札所
応頂山 勝尾寺
山門
本堂

 納経所はプレハブのような場所。ここも工事中か、と思ったが、どうも工事している様子はなかったので、ここは元々プレハブなのかもしれない。このプレハブを出て目についたのがこれ。

但書

 なんと、大っぴらに鐘が撞けるようだ。23箇所目だが、自由に撞ける鐘は車移動の初日、ギリギリの時間に駆け込んだ七番札所の岡寺以来である。というか23箇所のうち2箇所って。少ないなぁ。鐘の土台にビッシリ置いてある赤いものはダルマである。ここは「勝尾寺」(読みは「かつおうじ」)というだけあって、「勝つ」にかけており、寺の案内にはスポーツ選手も祈願に訪れる場所だそうだ。誰とは書いてなかったのでよくわからんが。まあダルマの数は多かった。売店にもダルマ売ってたしね。

 山奥の寺ゆえに敷地面積は広いが、のんびりしている時間もないので30分ほどで退散。最後に山門で入山料払った僧侶に「もっとゆっくりしてったらええのに」と声をかけられたが、急ぐ旅なので仕方ないのだ、諦めてくれ。

 勝尾寺 9/2(土) 8:28 総走行距離 813.8km

 8時半。5時半起床の前日とペースがもう一緒になった。いかに清水寺で時間の使い方に問題があったかがよくわかる。さて、次は二十四番札所、中山寺。場所は阪急中山寺駅のすぐそば、ということは宝塚市である。箕面から宝塚。さっそく大移動だ。

 途中で腹ごしらえのためコンビニに寄る。この日はいままで以上に移動に時間を費やすことがわかっているのでどこかに留まってのんびり飯を食べているヒマなどない。国道176号線を南下し、ひたすら宝塚を目指す。

 中山寺 9/2(土) 9:13 総走行距離 834.7km

 国道を走るということもあり、途中ちょっとした渋滞にも巻き込まれる。さすがの週末でも9時を過ぎると車通りが多い。

 阪急の駅前ということで、さすがにここでは車はすぐに停められる100円パークがあるだろう、との私の予想はすぐに覆される。確かに駐車場は数多くあるにはあったが、どこも参拝客を狙ったもので、100円パークのような時間に応じた金額ではなく、停めただけで600円取られる駐車場しかなかった。残念だが、迷ってるヒマは無い。

 駐車場から参道のような道を歩き、3分ほどで中山寺に到着。山門は道路に面しており、その道路が車が1台やっと通れるような狭さのものだったため、引きで写真が取れず。残念ながら無駄にアップ。ちなみに入山料は無料。

山門

 山門をくぐると、すぐ見えたのが階段。山を切り開いて中腹に作ったような寺なので、そこかしこに階段が見られる。紀三井寺などと同じ造りである。が、最初見えたその階段の横には、そこが寺とは思えない、寺の境内にはおよそ似つかわしくない風景がそこにはあった。それは…

いきなりモダンに

 バリアフリー化の波が押し寄せているとはいえ、さすがにエスカレータの存在には驚かされた。私のような健常者には大した階段ではないのだが、参拝客には年寄りも多いだろうから重宝されているのだろう。できれば醍醐寺など、参拝がしんどいところにつけてほしかった。ケーブルカーとまでは言わないが、エスカレータの1つもあれば楽だっただろうな。

 さて、本堂に向かう。すると、

 

西国第二十四番札所
紫雲山 中山寺
本堂

 また工事中。どうしてこの時期に重なるんや。前期予算の〆が近いからか?そんな事情って寺にもあるのか?あ、少なくとも施工業者にはあるかも。

 中山寺 9/2(土) 9:40 総走行距離 834.7km

 駐車場600円の割には滞在時間は30分弱。相変わらずもったいない。次は第二十五番札所、清水寺である。名前は同じだが、もちろん京都市のあの清水寺ではない。西国三十三箇所の中で唯一、寺院名が同一の寺、ということでクイズに出たことあるかもしれない。私はクイズは好きだが強くないのでよく知らないが。もし出てたとすればきっと有名なのだろう。私の知識はそのくらい、この清水寺に関しては希薄である。ちなみに京都の清水寺と区別するため、「播州清水寺」と呼ばれているそうである。

 場所は加東市。関西人でもピンと来ない地名だ。旧町名は社町。高校野球予想に毎年挙がっては惜しいところで敗れる社高校がある、あの社町だ、と言えばこのHPの読者の8割がわかってくれるだろう。わからない人は東条湖ランド(現「東条湖おもちゃ天国」)のそばだ、と思えば間違いない。それでもわからん人は各自地図で調べるように。

 さて、そんなわけで三田も三木も越えた兵庫の奥の方である。宝塚からだとちと距離がある。ここは中国道に乗ってひとっ飛び。あ、その前に給油。中国道は宝塚ICからひょうご東条ICまで。1050円。

 ひょうご東条ICからは山道を。ところが、この日は土曜日。この東条湖付近のおもちゃ天国に向かう車が多い。心配事項であった渋滞が山道で起こる。完全に車が止まってしまうような渋滞ではなく、ダラダラと徐行運転。が、信号もロクに無いような山中である。どう考えても、渋滞の原因は先頭付近におる遅い車だ。おおかたファミリーカーを運転しているウィークデードライバーなのだろう。焦っても仕方ないが、まさか東条湖で渋滞に捕まると思っていなかっただけにイライラする。

 逆に東条湖を過ぎると道が空く。反対車線は混んでいる。というか、そんなに東条湖ってみんな来るものなの?私はここに来るまでテレビのCMで見たことしかなく、「東条湖ランドってのが東条湖ってところにあるんやなー」ぐらいの感覚だったが。

 東条湖を過ぎ、しばらく走ると清水寺の方向を示す看板が。やれやれ、やっと着くのか、と思っていた矢先。道路を塞ぐようにして私を待っていたのは、予想だにしない建物と看板であった。それは、

登山口!?

 登山口て。スキー場か!!まさか寺1つのためにこんなゲートがあるなんて。ちなみに、カーナビが示す寺の場所はまだ3kmほど先である。ということは、3kmもの間、この道は清水寺参拝客のための専用道路(言うなれば私有地)ということか。怖ろしい規模である。醍醐寺も真っ青。いや、面積的には醍醐寺の方があるのか。登山客!?はここで入山料300円を支払うことに。メンテナンスを考えると、1人300円でやっていけるのだろうか、こちらが心配になってしまう。

 この3km区間が本当に清水寺の管轄の私有地だったとしたら、運転免許は必要なかったり、違法改造した車を運転する走り屋がブン回しても怒られないということなのか?不思議な地帯である。また、私有地であるかを誇示するように、

ガードレールに注目

 ガードレールが緑色なのである。こんな色見たことない。すごいところに来てしまったものだ。

 清水寺 9/2(土) 10:42 総走行距離 885.8km

 3km走ってようやく清水寺の山門前に到着。広い駐車場のような場所があり、ここに停車しろということらしい。先客も何台かいた。車道の登山口にゲートを作るような寺である。さすがに境内も面積が広い。また、眼下に見える景色もなかなかのものだ。写真撮ってないけど。とりあえずいつもの山門と本堂を。

西国第二十五番札所
御嶽山 清水寺
山門
本堂

 参道では、途中こんなわき道も。

わき道

 入ったら戻って来れそうにない道である。こんなわき道がそこかしこにあるのである。私だったら絶対迷う。仮に襲撃されたとしても逃げ遂せるような造りになっており、テロ対策は万全である(何のこっちゃ)。

 清水寺 9/2(土) 11:04 総走行距離 885.8km

   さて次。第二十六番札所、一乗寺。場所は加西市。京都のラーメン屋ばっかりあるところではない。ここが加東市で今度が加西市。漫画みたいやな。加西市といっても加古川と姫路の間ぐらいのところなので、とりあえずは海側に出る。

 また東条湖に。で、また渋滞に。反対側やなー、と思っていた道がまたこっち側。東条湖を越えたらまた反対側。疲れるわ。

 一乗寺 9/2(土) 12:02 総走行距離 923.8km

 一乗寺に着いたのは12時過ぎ。これでこの日4箇所目。さすがに前日のペースには到底追いつかない。この寺、やはり山奥にあり、一度通り過ぎた駐車場に戻ろうとするもUターンできる場所が無いほどの一本道。看板が出るのが遅すぎる。断じて私の運転の腕が悪いわけではない、とここで言い訳しておこう。そして例によって停めざるをえない駐車場で300円。

 着いてすぐ、まずあっけにとられたのはこの階段。

どんだけあんねん
カメラを引くとこんな感じ

 これを登らないといけない、ということ自体がまず面倒くさい。172段と段数だけ聞けば大したことはないのだが、172段もあれば今の私には充分体に堪える。泣き言言っても始まらないのでひたすら登る。なんだってこんな上の方に本堂を作るのか。そしてその階段を登らすのか。伊東キャンプか!!

 本堂より先に納経所が目に付く。しかし、何故か本堂の前に陣取るようにプレハブが建てられている。勝尾寺もプレハブだったので、プレハブ自体には驚かないのだが、建ってる場所が異様すぎる。聞くと、本堂が工事中とのことで、仮本堂が奥にあるとのこと。もはや本堂が工事中でもこちらも驚かない。こんなんばっかり。基本ツイてない。

 山門らしき門が見当たらないので、入口付近にあった石碑で勘弁。写真に写ってしまっている方は当方とは一切関係ございませんで、勝手にフレームインしてますので悪しからず。

西国第二十六番札所
法華山 一乗寺
山門!?
(仮)本堂

 ね、プレハブの立ち位置おかしいでしょ?ちなみに本当の本堂は

(本)本堂

 立ち入ることすらできず。三重塔もあったが急勾配のためアングルが悪く掲載しずらいので割愛。なんや、ネタがあるのかないのかわからんところになってしまった。

 一乗寺 9/2(土) 12:22 総走行距離 923.8km

 まあ20分で出てきてしまった、ということは敷地面積が狭かったか見どころが少なかったか(よくわからなかったか)のどちらかである。今回は両方かな。

 次は二十七番札所、圓教寺。場所は姫路である。さらに西方面に走る。地図で見る限りは三十三箇所のうちの最西端。ここさえクリアしておけば、あとはこれより西は無い、ということだ。気合を入れて望む。時間は12時半の少し前。これなら場所によってはあと3つ、うまくいけば4つはクリアできそうだ。

 加西市から姫路市に。もともと一乗寺が姫路に近いところにあったので、まあ距離としては大したものではない。山道だが、地道に進む。しばらくして姫路市内に。姫路といえば、白鷺城の別名がある姫路城が一番の観光スポットであり目玉であるのだが(意味一緒か)、当然そんなものはスルー。一路圓教寺を目指す。

 圓教寺は書写山という山の中腹にあるとガイドブックには記されているが、お馬鹿カーナビが圓教寺までの道を示してくれない。またカーナビが狂い始めたか、やれやれ。じゃあ正確な場所をちゃんとガイドブック読んで確認しようか、と思い目をやると、「アクセス」の欄にはこんな文字が。

 国道2号姫路バイパス中地ランプから書写山方向へ6.5km。

 そうかそうか、バイパスからは多少距離があんねんな。そこからどう行けばいいんや?

 ロープウェイ4分。

 うんうん、ロープウェイね。はいはい。ってロープウェイ!?

 山上駅から徒歩25分。

 さらに歩けというか!!なんという三段オチ。正直、二段目が一番オチてるが。どうして毎日毎日、1日1箇所こういうネタがあるんやろうか。もううんざりする。しかしこれぞ修行と呼ぶべきではないか。そう、私は修行に出ているのだ。楽して仏様の御加護に与ろうなど虫のいい話。なんのこれしき。大体、HPがネタで潤ったじゃないか。

 しかし、いざ行くとなると大変である。ロープウェイの運行間隔がわからんし、徒歩25分は往復50分、ロープウェイを全く待たずに往復できたとしても単純に58分はかかる計算だ。それに本堂回って納経して、と考えると、どう軽く見積もっても1時間20分はかかる。現在は各寺院が離れていて移動距離が長いモードに入っており、さらにさらに、現在向かっている先は三十三箇所最西端。これだけ悪条件が揃えば他に言うことは何もない。「記事を起こした時においしい」。このただ1つのメリットだけが私のモチベーションを辛うじて保ってくれているのである。きっと行った人にしかこの苦しみはわからん。

 書写山ロープウェイ山麓駅 9/2(土) 13:05 総走行距離 945.5km

 ロープウェイ乗り場に到着。想像以上に広い駐車スペースがあり、山に登る人はここに停めろ、と言わんばかりに待ち構えている。ただ、この駐車場は無料であった。それは気分がいいが、山に登る人以外は使わないであろうこの駐車場、無料だろうが有料だろうがもはやどっちゃでもいいわ。

 さ、ロープウェイにいざ出陣。駐車場は無料だったが、ロープウェイは当然有料。券売機の前に立つと、「片道500円」「往復900円」の2つのボタン。もちろん往復で。片道は誰が買うんや?団体割引が15人以上で1割引。他の14人を探す気力も無い。また、回数券が11枚綴りで9000円で売られていたが、回数券を買うのと殆んど額が変わらないという意味の無さに脱帽。いろんな意味で脱力である。運行は15分間隔で、どちらも毎時0,15,30,45分に出発らしい。到着が13:05ということで、13:15の便に乗る。

ロープウェイ山麓駅
出発直後の眼下
山上駅手前

 乗車時間はガイドブック通り4分。ガイドさんが同乗していていろいろ喋っていたが聞く耳持たず。一生懸命喋ってくれたお姉さん、ごめんなさい。

 書写山ロープウェイ山上駅 9/2(土) 13:09 総走行距離 945.5km

 山上駅からしばらく歩くと、とあるゲートが。そこにはテントが張られており、どうやらここで入山料を払うシステムになっているようだ。しかしよく見ると、

謎の「バス送迎」

 価格が2種類。300円は普通の入山料であるが、問題は右側。「拝観志納金含む」まあこれはわかる。左と同様ということだろう。「食堂宝物館」まあこれもわかる。境内にそういう館があって別料金になってるから、そこに入れる券もくれるということだろう。で、問題は一番右側。「バス往復送迎」である。写真にもチラっと写っているが、バスがこの場所から山門まで走ってくれているようなのである。なんや、じゃあ700円の上積みでバス乗れて時間短縮になるやん、と思った貴方。甘い。このバス、なかなか走らないのである。確か20分に1本ぐらい。係の人に聞くと、「若い人なら待ってるより歩いた方が早いかも。また道には33体の観音様が両脇におられるから拝んでいくといいよ」とのこと。観音様のありがたみはともかく、一刻を争う今回の旅では時間短縮につながる道を選択するしか私に残された道は無いのである。

 ひたすら歩く。山麓駅から圓教寺まではさらに登り坂。先を急ごうにも足が進まない。走るのもしんどい。早歩きの要領でとにかく急ぐ。両脇の観音様は、正直拝んでいる余裕なで全くない。

 しばらくして山門が見えた。が、その先はまだ道が続く。だいぶ中途半端、というか中腹にある門のようだ。ぬか喜び。さらにそこから5分、ようやく建物が見えてきた。長い旅だったが、徒歩では15分足らず。25分は大げさすぎたようで、25分と聞いて逆に急いだのは結果オーライなのかもしれない。

 圓教寺 9/2(土) 13:21 総走行距離 945.5km

 摩尼殿と呼ばれるお堂が本尊があるのでおそらく本堂だが、正面からの写真が無いのでこの寺に限りローアングルでお楽しみ下さい。

西国第二十七番札所
書写山 圓教寺
山門
本堂

 圓教寺はこの摩尼殿の他、様々なお堂がありどれも有名であるようだ。また、映画「ラストサムライ」のロケ地となったらしく、境内にはそこかしこにラストサムライの文字が。が、ここは他のお堂にも寄らず。言わんやラストサムライをや。すぐに下山すべく来た道を戻る。せっかく姫路の奥まで来て、ロープウェイ乗って山登りまでして辿りついた場所なのに、本堂以外を放棄するという暴挙。しかしこの判断が、最後に思わぬドラマを巻き起こすのである。それはのちほど。

 書写山ロープウェイ山上駅 9/2(土) 13:55 総走行距離 945.5km

 下山は登山よりやはり早い。14時ちょっと前に山上駅に到着。ということは、14時ジャストの便に乗れるということである。滞在時間ちょうど1時間。そのうち30分ちょっとは山登りの時間である。なんてストイックなんでしょ。

 書写山ロープウェイ山麓駅 9/2(土) 14:09 総走行距離 945.5km

 思わぬ時間を食ってしまった圓教寺も何とかクリア。これで残りはあと6箇所。いよいよゴールが見えてきた。次は第二十八番札所、成相寺。さて、場所は、と地図を確認すると見当たらない。ここより東であるのは間違いないのだが、はて、遠いのだろうか。縮尺を広くしても見つからない。別の県か、とさらに広くするとようやく見つかる。場所は京都府のようだ。うーん、兵庫(しかも姫路)から京都とは。長旅になりそうだ。で、住所を確認すると「宮津市」の表記を発見。宮津…。天橋立で有名なあの宮津である。観光名所が近くにある、とかそんな感動は要らない(姫路城にすら寄っていないのである)。行ったことないから初めて見る場所だ、という感覚も無い。問題は場所だ。天橋立といえば、日本海の入江にできた砂州である。そう、日本海なのだ。ここは姫路。見える海は瀬戸内海である。ということは、必然的に山陽から山陰へと、縦断をさせられる格好なのである。

 何が大変かって、その時間である。山陰横断の道は限られており、その殆んどが山道である。唯一、舞鶴若狭自動車道という高速道路が真っ直ぐに貫かれているのではあるが、起点は吉川JCT、場所は三木市である。つまり、まずは三木(吉川JCT)に行くことが最優先になる。姫路から吉川JCTまでは地図を見る限りでの直線距離でも40km、ちゃんと道路を走ったらおそらく50kmは越える。さらにそこから、宮津までは約100km。全てを100km/hで走ったとしても、1時間半かかる計算だ。もちろん、全行程を平均100km/hで走ることなど不可能なので、少なくとも2時間はかかるだろう、という予想は容易にできる。時刻は14:09。仮に2時間半かかったらもうギリギリである。一刻の猶予もない、またしても時間との戦いが今始まるのである。

 幸い、この日は午前中に中山寺付近で給油を済ませていたため、ガソリンの心配は無い。問題があるとすれば私の弱いお腹であるが、この日の調子は悪くない。もう時間のロスは許されない。ひたすら進む。姫路市内からまずは播但連絡道路に。国道312号線沿いの船津ICから福崎で中国道。さらに吉川JCTへ東上。ここまでで既に1時間弱が経過。15時を回る。タイムリミットまであと2時間。諦める手は無いのでとにかく走るしかない。吉川JCTからは舞鶴若狭自動車道。北上、北上、ひたすら北上。カーナビは情報が古く、綾部ICまでしか乗ってないが、そこからは京都縦貫自動車道に変わり、終点の宮津天橋立ICに。ストレートな名前だ。素人でもよくわかる。高速代はなんと3750円。時間には帰られない。まさにタイムイズマネー、時は金なり。

 ICからは国道178号線を宮津湾に沿って北に。途中、天橋立の看板があるが無視。17時まではとにかく目的地に行くことが先決である。「天橋立ケーブル」という看板も発見。電車で行く人はこれを使って成相寺に行くのだが、こちらは車であるのでこれも無視。国道からわき道に入りお寺を目指すが、例によって車1台分ほどの幅。1台しかすれ違わなかったが、これが何台もすれ違うようであれば時間のロスになっていたであろう。

 成相寺 9/2(土) 16:45 総走行距離 1117.1km

 ようやく成相寺にたどり着いたのは16:45。またこの日も最後はギリギリである。16:38にNGだった前例があるので不安ではあったが、入山手続きは問題なく終了。500円だったが。聞くと、入山は遅くまでやってるらしいが、納経は例によって17時までとのこと。慌てて納経を済ませる。14時過ぎに前の場所を出たのに、次の納経がギリギリ。いかに遠かったかがおわかりいただけるだろう。総走行距離もこの行程でついに1000kmを突破した。「長旅」という言葉がよく当てはまる。

 車での入山(寺のある程度の場所までは車で入れる)だったので、山門が無かった。ここでは本堂だけ。

西国第二十八番札所
成相山 成相寺
本堂

 納経は済ませたが、この寺の不思議の1つである、「納経は17時まで、でも入山は遅くまで」の秘密に迫る。実は寺の境内の上の展望台があり、そこから天橋立が一望できるのである。もう17時を過ぎてやることも無い。ここでは行かない手は無い。

 ところが、この展望台までの道がひどい悪路。けっこうな勾配の上に、道路が舗装さえていない。いわゆる「砂利道」である。スピードも出せないし、轍の跡がかなり複雑でゆっくり進んでもやたらガタガタいう。オートマだったがギアはLowに入れて走らざるをえない。途中バイクの姿を見たが、バイクはさらに運転が大変そう。展望台までの距離は1km以上あり、押して歩くには距離がある。ましてこの勾配にこの路面状況である。押すという選択肢も取りづらそうだった。

 成相寺展望台 9/2(土) 17:10 総走行距離 1118.3km

 苦労してようやく展望台に。が、特に建物らしきものは存在していなかった。ただ山の上から天橋立を眺めるだけだ。それでもさすがに周囲にここより高い場所は無く、どうやら一番高い場所から、といういいシチュエーションで生まれて初めて天橋立を見ることになるようだ。

天橋立

 股のぞきはどこからやればいいのだろうか。この写真を逆にしても別にいい景色とは思えないのだが。

 この日はこれで終了。宮津から家に帰るとなると来た道となる舞鶴若狭自動車道から中国道を経由することになるが、さすがに3750円をもう1回払う気にはなれない。ましてや、一度家に帰って次の日また通ることを考えると2回払うことになるのだ。第二十九番札所の松尾寺は舞鶴にあり、そうなるとさらに戻る理由などなくなる。往復で3750×2=7500円だとしたら、それ以下の宿に泊まる方が明らかに安上がりだし時間の短縮にもガソリン代の節約にもなる。ということで、この日はこの旅始まって以来の外泊となった。着替え持ってきてよかった。

 次の日の1発目が舞鶴とわかっているのだから、これは舞鶴に泊まる以外ない。宮津から舞鶴は海沿いの道で約40km。今度は急ぐ道のりじゃないので焦ることはない。まずは舞鶴入り。

 舞鶴市内 9/2(土) 17:10 総走行距離 1159.8km

 舞鶴市内では、まず駅前に。東舞鶴、西舞鶴の両駅があったが、どちらも駅前が開けているとは言い難い。宮津から行くと西舞鶴の方が近いのでその界隈をぶらつくことに。目ぼしいビジネスホテルを何軒かチェックし、電話をかける。駅前の国道に面している宿が5900円というのでそこに。これで宿も決まった。あとは食糧の調達であるが、酒の飲めない私は(下戸であるし、そもそもの移動手段が車なので)近くにあるスーパーで手軽に御飯と惣菜を購入。買って宿に行くことにした。

 宿 9/2(土) 19:00 総走行距離 1184.3km

 ヒマつぶしすらない舞鶴での宿泊。次の日の行程を確認。もうロープウェイのような奇抜な乗り物には乗りたくない。乗らざるをえないとしても、心の準備だけはしておきたい。次の日はいよいよゴールまで、と意気込んだがどうしても越えられない時間の壁が存在することがここでの確認で発覚。詳しくは次回をお楽しみに。

 歩数は11693歩。書写山での山歩きが効いたか。1万歩ペースは相変わらず。

 この日はやることもなかったが、テレビを見て過ごす。遠くに来たつもりでいたが、舞鶴である。京都府内だ。チャンネルが違うはずもないのである。テレビしかない生活もしんどいが、テレビしかないのでテレビを見る。結果、多少の夜更かしをしてしまうダメな生活に。宿から松尾寺は20kmほどあるので、8時納経を考えると7時半には宿を出ておきたい。夜更かししてる場合じゃない。深夜まで起きていたことによる翌日の寝坊の懸念、及びこの日消耗した体力の回復を考えると明らかな愚行。さて、これらが次の日にどう出るか。合わせてお楽しみに。


経費
駐車 自宅そばパーキング 1800
入山料 23 勝尾寺 400
納経 23 勝尾寺 300
駐車 勝尾寺パーキング 500
納経 24 中山寺 300
駐車 中山寺そばパーキング 600
給油 ガソリンスタンド 4402
入山料 25 清水寺 300
納経 25 清水寺 300
入山料 26 一乗寺 300
納経 26 一乗寺 300
駐車 一乗寺パーキング 300
ロープウェイ 書写山ロープウェイ(往復) 900
入山料 27 圓教寺 300
納経 27 圓教寺 300
高速 船津→宮津天橋立 3750
入山料 28 成相寺 500
納経 28 成相寺 300
宿泊 西舞鶴駅前ビジネスホテル 5900
小計 21752
これまで 93824
合計 115576

訪問寺院
1 青岸渡寺 和歌山県那智勝浦町 2 金剛宝寺 和歌山県和歌山市 3 粉河寺 和歌山県紀の川市
4 施福寺 大阪府和泉市 5 藤井寺 大阪府藤井寺市 6 南法華寺 奈良県高取町
7 岡寺 奈良県明日香村 8 長谷寺 奈良県桜井市 9 興福寺 奈良県奈良市
10 三室戸寺 京都府宇治市 11 上醍醐寺 京都府京都市 12 正法寺 滋賀県大津市
13 石山寺 滋賀県大津市 14 園城寺 滋賀県大津市 15 観音寺 京都府京都市
16 清水寺 京都府京都市 17 六波羅蜜寺 京都府京都市 18 頂法寺 京都府京都市
19 行願寺 京都府京都市 20 善峯寺 京都府京都市 21 穴太寺 京都府亀岡市
22 総持寺 大阪府茨木市 23 勝尾寺 大阪府箕面市 24 中山寺 兵庫県宝塚市
25 清水寺 兵庫県加東市 26 一乗寺 兵庫県加西市 27 圓教寺 兵庫県姫路市
28 成相寺 京都府宮津市 29 30
31 32 33

巡礼の旅 コンプリートまであと5箇所

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