僕達選ばれし子ども達(2002年)はキャンプへ行くことになった。とりあえず、一通り事件が無事収まったということもあったし。
都心から少し離れたところに手のいいキャンプ場があって、その日ヤマトさん(高石)のお父さんが休暇を取れ、保護者を引き受けてくれた。
僕達は、昼間に現地に到着し、昼食を取ってテントを張った。
このキャンプ場は川魚が結構いるので、昼から僕達は釣りに没頭した。魚釣りをヤマトさんのお父さんが僕達に教授してくれたのだ。
「賢〜、また糸切れちゃったよ〜。」
大輔はなかなか釣れなくて糸ばかり切っている。
「また?ほんとに大輔って下手だなぁ。」
「うるせー。」
大輔は拗ねたように僕に抗議した。思わず「可愛い」などと思ってしまう・・・。
僕は今日、明日と大輔と一緒に寝起きができることが嬉しい筈だった。だが、やはりそうは思えない。
その理由が高石の存在だった。僕達は少し前から身体の関係を続けていた。高石が「贖罪」と称して僕を抱いたのがきっかけだった。それ以来、僕は高石と断る事が許されない約束をする度に身体を重ね、異常な行為を繰り返していた。そのことは僕と高石だけの秘密だった。僕自身、誰にも知られたくなかった。僕さえ、我慢してれば、何事もなかったかのように、時間は経つのだ。高石から逃れられない僕は、それだけを願い、高石の言う通りにしてきた。そして、一番の願い、大輔だけには知られたくない。
そんな時だった。高石が何を思ったのか、キャンプの話を持ち出してきた。勿論、皆賛成だった。僕は気がすすまなかったが、表向き、賛成せざるを得なかった。
そして、僕にとっては不安だらけのキャンプの日を迎えてしまったのだ。
それでも、僕は最初のうちは不安など忘れてしまっていた。というのも、大輔と一緒にいられることに、喜びを興奮を覚えていたから。それは、感情を楽にする一時しのぎであることには違いなかったが。
夜は、僕達はカレーを作り、夕食の後、花火をした。
赤や青や黄色等、色とりどりの炎の星が当たりを明るくし、大輔ははしゃぎまくっていた。そんな大輔を眺めていて楽しかった。
「一乗寺君、楽しそうじゃない。」
隣で線香花火を持った高石が話し掛けてきた。忘れていた不安が蘇る。
「高石君・・・。」
そう、僕はつかの間の平和を楽しんでいただけにすぎないと、その、青い瞳は教えていた。
「この花火、一乗寺君に似てるね。」
そう言って高石はクスクス笑った。
線香花火はやなぎになり、だんだんそれも小さくなり、丸い火の玉を落として消えていった。
「ほら、似てるでしょ。」
その意味するところを僕は考えて恐怖した。
「賢〜、タケル〜何やってんだよ〜。」
大輔がはしゃぎながらやってくる。そう、この幸せのピリオドだった。
花火が終わり、僕達は3つのテントに別れて寝る事になった。ひとつは、ヤマトさんのお父さん、そして、二つ目は、京さんとヒカリさん、残りの少し大きなテントに、僕と、大輔と高石と伊織君が一緒に寝る事になった。
大輔と伊織君は今日の疲れか、すぐに寝息を立てていた。
高石は起きているのだろう、僕はぼんやり考えていた。そして、僕自身も眠る事ができなかった。いっそのこと、眠った方が楽だと思ったが、僕の心に反して頭は冴えていた。
少したってから、案の定、高石が話し掛けてきた。
「一乗寺君、勿論、起きてるよね。」
僕は黙ったが、高石は僕に身体を寄せてきた。
「狸寝入りはやめた方がいいよ。そのつもりで来たんでしょ。」
高石が耳元で囁いている。
「やめ、て・・・。二人が起きるから・・・。」
僕は他の二人を起こさないようになるべく小さな声で抗議する。
「だったら、抵抗、しないことだね。」
言って高石は僕の口にハンカチを咥えさせ、後ろで結んだ。
「や・・・。」
口を塞がれ、僕は、声を出そうともがいたが、声にならない、うめきしか出せない。
「困るでしょ、大輔君にこんなところ見られたら。」
高石は笑って、僕のTシャツに手を入れてきた。突起の部分を探りあて、それをもみくちゃにして、弄んだ。
僕はその感覚にゾクゾクし、声にならない、声が洩れるのが分かった。
「気持ちいいの?」
高石が耳元で囁く。そして、体中の至る所に舌を這わせた。
高石は僕のズボンに手を入れた。そして、僕の秘部を探り当てた。そこはさっきまでの愛撫に感じてまい、白い液体が滲んでいた。
「今日は早いね。隣で大輔君が寝てるから興奮したのかな。」
言って、高石はクスクス笑った。
その言葉に僕は耳まで熱くなるのを感じた。
「や・・・。」
僕は拒絶の声を出そうとしたが、ハンカチのお陰でモガモガという言葉にならない声しか出せない。
「一乗寺君、何を言っているのか、分からないよ。」
そのまま、いつものように、指が入れられる。1本、2本。そして中で動かされる。
すでに何回をされていることなのに、最初に痛みと奇妙な異物感はいつまでたっても消えない。
「やっぱり今日はよく入るね。賢のココ大輔君にも見せてあげたいくらいだね。」
そう言って、高石は邪悪に唇を歪めた。
僕のそこは、何度も指で貫かれ、白い液体を放出した。
「相変わらずやらしいんだね。ほんと、こんなに出して、大輔君が見たらどうするつもりなの?」
今日の高石は執拗に大輔の名前を出してくる。それが、口のさるぐつわと合間って更に僕の羞恥心と屈辱感を掻き立てた。
大輔が隣で寝ている。その隣で僕はこうして高石と淫ら行為をしている。考えたくもない状況である。
「二人が起きない内にやらないとね。」
言って、高石は自分のを露出し、再び身体を重ねた。
高石のソレが僕の中に入ってきた。
「っ・・・。」
僕は痛みに声に変わりにひどく顔を歪ませた。痛みから、羞恥から逃れようと、自然と腰が引いていく。その腰を高石は掴んだ。
「今日はあまり時間がないんだから。」
そう言って高石は更に深く、押し入る。僕は、顔を更に歪ませて、口の中でもがいていた。
声が出ないことがこれほど苦痛だとは思っても見なかった。
「どう、大輔君がいるところで犯されるのって?嬉しくて声も出ないかな?そうか、出せないんだよね。」
高石が口を笑いに歪ませて言った。僕はかぶりをを振った。
「ほんとはやりたいくせに。」
「ほら、早く僕を気持ち良くしてくれないと大輔君に見られちゃうんじゃないの?」
高石は僕を言葉で煽りながら、何度も押し入った。
ふと、大輔の寝顔が僕の目に飛び込んできた。途端に涙が溢れ出てきた。
大輔がいるのに僕は何をやっているのだろう。自分がひどく、惨めで、醜く、汚い生き物に思えた。
テントごしに薄っすらと月が笑っているように見えた。
早く、ここから抜け出したい・・・。