デジタルゲートは未だに開かぬまま、僕は、賢を戒め、賢の心は僕を拒んだままだった。せめて、身体だけはと、僕は、賢を何度も無理矢理抱いたが、返ってくるのは空しさだけだった。どんなに、賢の身体を開いても、どんなに賢と肉体だけで繋がったところで、僕の中に流れ込んでくる賢の心は、拒絶だけだった
僕は、ここでも、思い知らされる。自分は不要な人間であることを。そんなの最初から分かっていた事なのに。何を期待していたのだ。何に希望を抱いていたのだ。希望なんてこれっぽっちもないじゃないか。馬鹿馬鹿しい。
でも僕の紋章はキボウ・・・。そのくせ、誰からも必要とされていない・・・。希望・・・。
希望の紋章が僕を嘲笑っているかのように見える。
希望の紋章の持ち主である僕は皮肉にも思い知らされたのだ。
希望はただの言葉に過ぎないということを。
この紋章だって玩具にすぎない。だって、僕は希望を信じてないもの。だって、僕には何の希望も見えないもの。
「クク・・・。希望だって?」
僕は紋章を海に投げ捨てようとした。しかし、臆病な僕はそれすらできず、再び紋章を握り締めた。
「こんなの、いらなかったのに・・・。」
「いらなかったのに・・・。」
隣で、賢は傷ついた顔して眠っていた。体中ボロボロで・・・。
どうして、こんな形で賢を手に入れたのだろう。
けれど、仕方なかった。こうでもしない限り、賢は僕に振り向いてくれない。
「どうしてそう、決め付けるのさ。」
声がした。それは誰の声でもない僕自身の声だった。
「そうじゃないか。賢はお兄さんのことが忘れられなくて、大輔君が好きで・・・。」
「僕の入り込める隙なんてなかった。」
「どうして、そう、思うの。」
「うるさい、黙れ。」
僕は、自分自身の声を振り払う。
だって賢は僕を見てはくれないもの。
「だったら、見てもらえるようにすればいいじゃない。」
また、もう一人の声が聞こえる。
「黙れ、黙れ、黙れ。」
もう、遅いじゃないか。
僕は、耳を塞いだ。
「もう、どうしようもないんだ。」
「もう、どうしようもない。」
心が手に入らないなら、身体だけでもいいじゃないか。
「それで満足なの。」
「満足さ。満足してる。」
「ハハハハハ。」
そんな気分でもないのに笑いが込み上げてくる。
「クク・・・。」
「クク・・・。」
でも頬には液体が伝っている。
「コレハナニ?」
「どうして僕は泣いているの?」
眠っている賢の半開きの唇に口付ける。
「ん、ん・・・。」
「ダ、イスケ・・・、兄さん・・・。」
言うな。言うな。
僕以外の名前を言うな。
やめろ。やめろ。
「やめろ、やめろ、やめろ。」