僕達はいつまでここにいるのだろう・・・。いつまでこんな生活が続くのだろう。
そう、いつかは終わりが来る。
僕は、賢を手頃な太さの木に拘束した。今の彼の体力では逃げる事などできる筈がないのに。
それでも、僕は怖かったのだ。一人になることが怖くてたまらなかった。だから・・・。
だって、僕に抱かれている時賢が口にするのは、僕の名前じゃない。僕は求められていない。それどころか、彼は僕から解放されたがっている。いずれ、僕は一人にならなきゃならない時がくる。
それが怖くてたまらない。
別に彼が微笑む事など求めてはいない。
ただ、居てくれればいい。
賢が目を覚ます。また、僕は仮面を被る。悪魔の仮面を・・・。
「起きたんだ。何か、食べた方がいいよ。作ったから。」
「いらない・・・。」
虚ろな目で賢は答える。
「食べないと、死んじゃうよ。」
「いい、死にたい・・・。」
淡々と、無感情な声で賢は言う。
痛い。
どこが痛いのだろう・・・。
心が痛い?
どうして?
仮面にひびが入る音がする。
考えてはイケナイ。悩むな。見かけの罪悪感に惑わされるな。
僕は、悪魔の仮面のひびを接着剤で直す。
口を歪ませた。
なるべく冷淡な声を出す。
「君はそうかもしれないけど、僕が困るんだよね。死なれちゃうと。分かるでしょ。僕はまだ満足していない。」
僕は自分を奮い立たせるために、邪悪な笑みを作る。
「食べなよ。そして、もっと鳴くんだよ。」
「食べたくない・・・。死にたい・・・。」
賢はその台詞を繰り返すだけだった。
僕は悲しい・・・。でも悲しめば悲しむほど自分が惨めになることは分かっていた。だから、悪魔の仮面は外さない。
僕は食べ物を口に含んだ。そして彼の唇に自分の唇を重ねる。彼は僕を手で振り払おうとする。
「いらない、ほっとけよ。」
賢にしては少々ヒステリックな口調だった。
「元気じゃない。だったら、いつまでも寝てないで僕の相手をしてよ。」
大丈夫。まだ、大丈夫。悪魔の仮面は壊れない。