望むもの

「もしもし、高石ですが。」

「おい、タケルにそっちにさぁ賢行ってない?」

「えっ、一乗寺君?来てないけど。何か用なの?」

「いやさぁ、サッカーの練習付き合ってもらおうかと思ってさぁ。」

「そうなんだ。」

「分かった、切るわ。」

「うん。」

大輔からの電話だった。

タケルの言うことは嘘である。賢はタケルの家にいるのだ。

「本宮、本宮!!」

「少し黙ってなきゃ、電話中なんだからさ。」

大輔との電話の間、賢の口はタケルの手で塞がれていたのだ。

「邪魔、いなくなったね。」

「帰る・・・。」

「帰らせない。」

「今日、母さん帰ってこないし。」

「母が心配するから。」

「連絡するよ。今日は泊るってね。」

賢は両手足を縛られていたので、身動きできなかった。

「何で・・・。」

「実験。」

「実、験?」

「そ、実験。」

「かつてのデジモンカイザーがどんな声をあげて鳴くのか興味あってさぁ。」

「僕はね、まだ君を許してないんだよ。大輔君は君に甘いけどね。分かるよね。」

賢は頷く。かつて賢がしてきたことはどんなに謝っても許されることではないことを賢自身承知していた。

「君がどんなに目あったって大輔君に助けを求める資格はないんだよ。」

言いながら、シャツのボタンを外す。

白い肌が露出する。

「女の子みたいだね、君の身体、細いし、白い。」

「やだ・・・。」

タケルの唇が賢のうなじを這う。

「君が誘ってるんじゃない。」

「違う・・・。」

「そうなんだ。」

タケルは目を細める。

「怖い?顔に出てるよ。」

「いつも、自分で背負ってるんだよね。何もかも。それで満足?それで自分のやったことが許されるとか思ってるでしょ。」そうすれば楽になれると思ってる。」

「違う・・・。」

「分かるよ。」

「図星。」

「だったらさ、もっと手っ取り早い方法があるのに・・・。」

タケルは賢のズボンのジッパーを下ろす。

「やめ・・・。」

「君が望んでいることだよ。」

「違う・・・。」

タケルは賢の奥に手を滑らせる。

「やぁ・・・。」

「知らなかったでしょ。こんなの・・・。」

「お願い・・・。やめて・・・。」

「もっと素直になりなよ。」

本宮・・・。賢の頭にその名前が浮かぶ。

「今、大輔君のこと、考えてる。」

読まれた。彼は全てを知っている。僕の狡さも、本性も・・・。全てを暴露される。怖い。

「大輔君は優しいからね。」

「やぁぁ・・・。」

白い液体が賢の秘部から太股に伝う。

「はぁぁ・・・。」

「もっと声出したら?」

「やだぁぁ・・・。」

「大輔君がみたらどう思うんだろう。」

賢の顔が青くなる。大輔にこんなところ見られたら・・・。彼はきっと軽蔑する。僕から離れていく。

「言わないで・・・。」

「そうだね、言えないよね、僕とやって乱れてたなんて。」

「お願い・・・。」

「だったら、僕を楽しませて。ねっ。」

「いたぁぁぁ・・・。」

タケルが指で賢の塞がった部分をこじ開ける。

「痛いでしょ・・・。」

「痛い・・・。」

どのくらい時間が経ったのだろう。

「一乗寺君、お腹すいたでしょ。」

賢はタケルの声で目覚めた。

「もう、帰る・・・。」

「帰れないって。」

「誰か・・・。」

「誰も来ないよ。」

「やぁ・・・。」

「ほら、こんなに感じてる。」

「気持ち良くしてあげる・・・。」

「あはぁぁ・・・。」

タケルが賢の耳元で囁く。

「君が誘ったんだよ。」

違う・・・。誘ってなんかない・・・。

「やぁん・・・。」

「はぁぁ・・・。」

「誘ってる、こんなに鳴いて・・・。もっとして欲しいんでしょ。」

賢自身、タケルの手の感触が恐怖から快感に変わりはじめているのが分かった。

しかし、頭にあるのは嫌悪感だった。

自分が乱れることで罪が許される。それは嘘・・・。そんなことあっていい筈がない。でも、心のどこかで楽になりたいと思ってはいた。それは心のどの部分なのか賢自身にも分からない。自分が本当に何を望んでいるのか、それすら分からないのだ。