(第3話:ハッピー?な結婚生活その@)

僕達は多忙のあまり、新婚旅行はとりあえず、断念した。

で、二人でとりあえず、一緒に暮らす為のマンションに引っ越して・・。

ついに、結婚生活第1日目の朝・・。

「氷川君。おはよう。」

何と、警視庁の制服の上にエプロンをつけた、小沢さんが僕を起こしにきていた。

「あっ!!」

僕は、ハッとした。

「す、すみません。小沢さん。つい・・。」

「何言ってるの?私達、夫婦じゃない。ご飯もできてるわよ。早く支度をしなさい。」

何だか、小沢さんが小沢さんではないような気がした。エプロンつけているあたり、既に・・。

「は、はい。今すぐ。」

僕は慌てて、飛び起きる。あの上司が僕のために朝食を作って下さっているのだ。(何気に謙譲語・・。)のんびり寝ていられる場合ではないことに僕は気付く。というか、僕は夢でも見ているのだろうか・・。あの小沢さんが・・。

「あ、あの、何か、手伝います。」

「いいのよ。座ってて。」

「で、でも・・。」

「いいから、座ってなさい。」

いきなり命令口調・・。

何気に台所が散らかりまくっているのは気のせいだろうか・・。

「今日はね、お味噌汁と、ご飯と、卵焼きよ。」

小沢さんがニコニコ笑いながら、いそいそ、卵焼き?らしき物体を皿に盛っていく。というか、黄色い・・、卵焼きだよな・・。

ふとガスコンロの方に目をやると、鍋が吹いている・・。

「あ、あの、鍋が・・。」

「あ・・。き、気付いてたわよ。」

小沢さんは慌てたように、火を止めた。

「あ、今、ご飯盛るわね。」

言って、ご飯を山のように盛る。

そして、お味噌汁もとりあえず・・。

「あ、食べていいのよ。」

「はぁ、い、頂きます。」

僕は味噌汁に箸をつけた。

「う”・・・。」

口中に妙な甘みが・・・。というか味噌汁って甘い、のか・・?

「どう?美味しい?」

「あ、甘くて美味しいです。」

僕は、かなり頑張って苦笑した。これ、全部食べないとやばいよなぁ・・・。

「そう、よかった。お砂糖、たくさん、入れて・・。」

「は?」

お砂糖、ですと・・・?味噌汁に砂糖・・・。

冷たい汗が僕の頬を伝った。

「やっぱ甘いのが、いいじゃない。」

うわ、本当に味噌汁に砂糖入れると思っていたのか・・・。この人は・・・。

とりあえず、味噌汁は後回しとして・・・。

僕は卵焼きらしき物体に箸を付けた・・。

あまりに濃い甘さが口中をとろけるように・・・。というか、砂糖どのくらい入れたんだ?

僕は必死で笑顔を作りながら小沢さんにそれとなーく訊ねてみる。

「あ、あの、小沢さん。とっても美味しいのですが、この味はどうやったら出せるのでしょうか。参考に是非お聞きしたいのですが。」

「ああ、砂糖100g入れたのよ。」

小沢さんは平然と言い放った。

はぁぁぁ・・。100g・・・。どおりで・・・。

「あっ、でもご飯はお砂糖、入ってないわよ。」

いや、そ、それは・・・。

とりあえず、ご飯は何とか・・・。

僕は箸をご飯に移す。芯が7割近く残っているような気がするが・・・。

とりあえず、一番美味しい・・。

「あ、あの、お、小沢さん、S.A.U.Lのリーダーでお忙しいでしょうから、僕が今度から食事当番、代わりますよ。」

「いいのよ。G3−Xを装着している氷川君の方が大変なんだから。」

「は、はぁ・・・。」

「あっ、今日、私、早出だから、あっちで食べるわね。ゆっくりしていってね。」

あ、あなたは食べられないのですね。(涙)

「じゃ、職場で・・。」

小沢さんは自分の作った朝食の正体を知らぬまま、出勤してしまった。

僕は、砂糖の味がする味噌汁と、砂糖100g入り の卵焼きと芯だらけのご飯とともに、散らかりまくった台所にとり残されていた。

その後、半泣きで全部食べて、台所を片づけたのは言うまでもない。