「ジャンケンポンッ!」

「あ〜いこでしょっ!」

今日は、巽家のお花見である。

そこで、巽兄弟四人は、場所取りを誰がするかということが問題になり、負けたものが場所取り係ということになった。一番、料理が得意なマツリは、弁当作りの戦力にということで、除外されることとなった。マツリなしでは、流石にまともな花見ができないであろうとのことである。

「よっしゃ、一抜けたっ!」

ショウがガッツポーズを取った。

「ショウ、お前、今遅出ししただろっ。」

マトイが抗議の声をあげる。

「してねーよ。負けたからって言いがかりつけんのはやめろよな。マトイ兄。」

「何だとっ!」

マトイが食って掛かる。

「マトイ兄さんもショウ兄さんもやめようよ。」

ダイモンが仲裁に入る。

「うるさいぞ。ダイモン、文句あるのかっ!」

マトイとショウが口を揃えて言った。

「だから、喧嘩は・・。」

二人の勢いについ、弱気になるダイモン。普段からどちらかというと優しい性格のダイモンは、熱くなりやすい、マトイとショウの仲裁に入ろうとして、とばっちりを食らいやすかった。ひょうひょうとしているナガレは何故かとばっちりを食らいにくいらしく、ダイモンがそのような、損な役割を不本意ながらも引き受けざるを得ないのであった。

「だったら、お前行ってこいっ!」

またもや、口を揃えていう、二人。もはや、ジャンケンどころではない。

「ダイモン、拉致が空かないから、俺達で行こうぜ。」

ナガレがダイモンの肩を押す。

「そう、だね・・。」

ダイモンはシュンとして頷いた。

結局、喧嘩をした本人達は場所取りを免れ、ナガレとダイモンが行くことになった。マトイとショウは、いがみ合ったままだった。

「マツリ、俺達、ちょっと行ってくる。二人の仲裁、よろしくな。」

「ああ、いい場所取れよ。」

などと、言いながら、マツリの作った味噌汁をすすりながら、呑気に新聞を読んでいる、父モンド。

マツリ以外は、思った。

(つーかお前も何か手伝えよっ。)

父、モンドの相変わらずは、もはや何を言った所で変わりはしない。しかし、先程の件でいがみ合っている、マトイとショウなのだ。

「親父、随分、暇そうだよなぁ。」

ショウがジト目でモンドを見た。

(怒っている・・。)

そう直感したモンドは、

「おっ、ちょっと、ビクトリーロボの修理があったな。」

いそいそと台所を出て行った。

「もう、マトイ兄ちゃんとショウ兄ちゃんって大人げないんだからっ。」

マツリはぶつぶつ言いながらも、いがみ合う二人の仲裁に入っていった。

二人は、巽家から歩いてそう、遠くない、桜がたくさん咲く公園へ出向いた。お花見シーズン真っ盛りといったところで、ピンクの花びらが散り乱れる各木の下には、花見弁当を広げた家族連れが既にたくさんいた。

「俺、マトイ兄とショウの性格が時々羨ましくなるよ。それに親父もな。」

「そう、だね・・。」

ナガレの言葉に苦笑しながらも控えめに同調する、ダイモン。

「というか、もっと、上手く生きろよ、ダイモン。」

そう言って、ナガレはダイモンの肩を軽く叩いた。

「ハハ・・・。」

苦笑するダイモン。

「いい場所、残ってるといいのにね。兄さん。」

「ああ。」

そんな会話をしながら、二人は、辺りを見まわしながら歩いていた。

「流石に、こう多いとなかなか見つからないな。」

「見つからなかったら、マトイ兄さん達、うるさいからね。」

「つーか、お前らも探しに来いっての。俺達はいい迷惑だよ。」

思わず、マトイとショウの愚痴をこぼすナガレ。

「でもさ、僕、思うんだよね。マトイ兄さんや、ナガレ兄さん、ショウに兄さんやマツリと同じお腹の中から生まれて良かったなぁって。」

「そうか?」

「そうだよ。やっぱり、五人いるから、地球を守れる大きな力が生まれたりするじゃない。それって、僕達の誇りだと思うよ。すごいことじゃない。それに、何だかんだ言っても、五人いるから、助け合ったり、心配し合ったり、するじゃない。それって特した気分にならない?何て言うか、その、良いことは5倍でさ、嫌なことは、五分の一になる。」

「そうだな。お前の言うとおりかもな。」

そう言ってナガレが微笑む。

「でしょ。」

「だな。まぁ、俺達のとばっちりは、別としてもな。」

そう言って、ナガレは思わず、ぷっと吹き出す。そして、ナガレにつられてダイモン。そして、二人は、クスクス笑った。

「とりあえず、さっさっと場所取らなきゃな。」

「うん。」