【episode2】

シャドームーンが葬られた地は、今まさ、大きなエネルギーで満ち溢れていた。十数年前、力を倍増してシャドームーンが復活してきた時とは比べものにならないものであった。

本能的にその力を感知した小動物達は、ざわめき、普段、静かな筈のこの地が一斉に雄たけびをあげているようであった。

この地に眠るシャドームーンは、今、まさ、に復活の時を迎えようとしていた。

そして、復活しつつある、脳裏にも、また、どこからともなく、刻みこまれたようなビジョンが映る。

「貴様は、誰だ。」

シャドームーンと対立して立つその戦士は、輝く白銀のボディを身にまとい、構えることなく、超然と立っていた。

「貴様は、敵・・。」

白銀の戦士は無言で、両手に握り締めた、鋭い、エモノをシャドームーンに向けた。

「タタカウ。」

「タタカウ。」

シャドームーンの本能に刷り込まれたような、意識。

その、意識に、シャドームーンもまた、混乱していた。

その頃、津上翔一は風谷真魚と買い物から返って来て、美杉家の門をくぐろうとしているところであった。

談笑しながら、歩いている二人。

そんな時であった。

翔一は、買い物袋を手から滑り落とし、その場に立ち尽くした。

脳裏に流れる、不思議な感覚。

それは、アンノウンを察知した時の感覚とは異なるもので、力そのものといっても過言ではなかった。

「翔一君・・?どうした?」

真魚は、翔一の顔を覗きこんだ。

そんな真魚を無視するように、翔一は、地面に落とした、買い物袋もそのままに、自分のバイクにまたがり、

走り去った。

「翔一君。?」

「翔一君。」

真魚が叫んだが、翔一は、その声に振り向くことはなかった。

翔一は、バイクを疾走させた。

アギトとしての本能に導かれるように。

バイクは、引き寄せられるように、シャドームーンが眠る地に到着した。

バイクから降りる、翔一。

その場を漂う、大きなエネルギーが翔一を包み込んだ。

「ここは・・。」

翔一は、大きなエネルギーに身体を反応させながら、その辺りをゆっくり歩いた。

そして、吸い寄せられるように、シャドームーンの眠っている、地の上に、立っていた。

「タタカウ。」

「タタカウ。」

そんな声が翔一の脳裏に響いた。

急にひどい、頭痛に襲われる。

それは、先程、激痛を感じ、倒れた時と似たような感覚であった。

「う・・。」

「お前、は・・。だれだ・・。」

翔一は、うめくように言った。

その声は、低く、しかし、明確な声であった。

「タタカウ。」

「タタカウ。」

翔一の脳裏に響く声は次第に大きくなっていった。

「や、め、ろ・・。」

「やめろ・・。」

翔一は、その場に腰をつき、脅えるように、首を横に振った。

「やめろ・・。」

「タタカウ。」

「タタカウ。」

声の鼓膜を突き破るかのように、声はボリュームを増していった。

「うわぁぁぁ。」

翔一は、叫び声をあげ、意識を失った。