午後から予想もしなかった雨が降った。
傘を持って来ていなかった耕一郎と千里とみくと瞬は図書館で勉強をしながら、雨が止むのを待っていた。
他の生徒達も朝の天気から雨は降らないだろうと判断し、傘を持って来ていなかった、生徒で図書館はいつになく、人が多かった。
「ねぇ、健太は?健太も傘、持って来てなかったと思うけど。」
千里の問いに呆れ顔で瞬は答えた。
「ああ、あいつ、見つかると補習受けさせられるとか言って、傘も持たずに帰ったよ。全く、ただでさえ、成績やばいのにな。この雨だ。今頃相当濡れてるぜ。」
「全くだ。あいつの不真面目さには呆れてしまうよ。」
耕一郎は眉間に皺をよせて言った。
「全く困った奴だよね。」
千里も溜め息をついて言った。
「あの馬鹿、雨の日くらい勉強してビリ脱出しようとか思わないのか・・。」
「だよね。」
三人とは違い、お気楽そうに同調するみく。
「って、みくも人のこと言えないでしょ。この間の数学、赤点だったでしょ。明日が追試でしょ。」
千里はみくを窘めるように言った。
図星を突かれたみくは慌てたように、
「あはは、大丈夫だよ。たっ、多分。それよりさ、この雑誌に書いてあった星占いによると・・。」
そして、かばんから雑誌を取り出し、話をすりかえようとする。
「はいはい、みくは明日のテスト勉強をする。」
言いながら、千里は雑誌をみくから取り上げる。
「は〜い・・・。」
渋々と数学の教科書を開くみく。
「分からないことあったら聞けよ。みく。」
瞬が言うとみくは、嬉しそうに、
「うん。一杯あるんだ。」
言って笑う。
「良かったね。みく。」
千里はからかうような口調でみくの肩をつついた。
「エヘヘ・・。」
みくは照れ笑いをする。
そして、瞬、耕一郎、千里もそれぞれ、問題集を開いて、目を通し始めた。
みくは十分程すると、退屈そうに欠伸をして、雑誌に手を伸ばそうする。
「みく、まだ十分しか経ってないよ。」
それを見逃さない千里。
「は〜い・・。」
みくはきまずそうに、少し笑いを浮かべて、上目に千里を見て、シャープペンシルを握り直す。
「大丈夫か?みく分からないんじゃないのか?」
そう言って、みくの教科書を覗き込む、瞬。
「んと、この問題がね・・。」
瞬に言われ、みくはつまずいていた問題をシャープペンシルで指す。
「ここはな・・。」
瞬が解説をはじめようとすると、耕一郎も、
「俺にも聞いていいんだぞ。」
とみくの教科書を覗き込む。
「ちょっと、お邪魔でしょ。」
千里は、ひじで、耕一郎の肩をこずく。
「何だよ。俺は、同じデジタル研究部の部長としてだな。」
「はいはい。みくは瞬に任せて私達は勉強するわよ。」
「全く、何だよ・・。」
耕一郎は理解できないという風に何やらぶつぶつ言いながらも、自分の問題集に再び取り掛かる。それを確認した千里もまた。
それから1時間。図書室も閉まるまであと30分。
外を見ると、雨が止んでいた。
「雨も止んだことだし、そろそろ帰ろうかな。」
「あ〜ん、分かんないよ〜。これじゃあ、明日の追試も最悪だよ〜。」
隣で嘆きの声を上げるみく。
「落ち着け、みく。」
瞬はパニックになっているみくを一生懸命、なだめていた。
「俺、もう少し、みく教えるから。もう少し残る。千里は帰っていいぜ。」
「じゃあ、そうさせて貰おうかな。みく、がんばるのよ。」
「うん。」
千里の言葉に半泣きのみくは頷いた。
「じゃあ、俺は、部長としてみくに付き合うか。」
「って、あんたも帰るの。みくは瞬一人で大丈夫だから。」
「今日は何だよ、千里。」
「いいから、いいから。」
「じゃね〜。」
千里は二人に手を振りながら、耕一郎を引っ張りながら、図書館を出た。