レストランアギト。
今日も翔一は、オリジナルメニューの研究に没頭していた。
「よーし、今日は・・・。」
その時であった。
ドンガラガッシャーン。
翔一は、その音を聞いて、もしや思い、少し嬉しそうに、振り向いた。
昨日来て、翔一の料理を完食した蛇柄のジャケットの男だった。勿論、戸は壊されている。
「あ、今日も来てくれたんですね。嬉しいなぁ。」
「腹が減った・・・。」
男は、ボソリと呟き、中に入ってきた。
「ああ、できてますよ。新メニュー。」
翔一は、テーブルに並んだ様々な変わった料理を男に示した。
男は、何も言わず、何らかのソースがかかっている、鶏肉にかぶりつく。そのまま、肉を凄い勢いで食いちぎり、骨まで間食してしまう。
「骨まで間食してくれるなんて、俺、嬉しいなぁ。」
そんなことを言っている間に、男は、二品、三品目に突入していた。
その様子を翔一は満足げに眺めていた。
その時だった。
今日も、氷川がやってきた。
「あ、津上さん、今日も研究に熱心ですね。」
「はい。これが俺の生きがいですからね。で、今日は何の用ですか?もしかして、俺の新メニューが食べたいとか?」
「いえ、残念ですが仕事です。また、脱獄囚をこの辺りで見逃してしまって。来ませんでしたか?」
「いいえ。それらしい人は。」
「そうですか。あれ、奥に人がいるようですが。」
氷川は、奥から、ガツガツとモノを食べる音を聞いて、言った。
「ああ、最近、俺の新メニューを試食してくれる人がいるんですよ。だから、俺、熱が入っちゃって。何と言うか、もうやる気マンマンだぜっってカンジですね。」
「はぁ。それは、良いことですね。」
「はい。氷川さんも頑張って下さいね。」
「はい、頑張ります。あっ、情報あったら、絶対通報して下さいね。それから危険人物なので、津上さんも気をつけて下さい。」
「はい、いざとなったら、変身しますから。アハハー。」
「いや、それはちょっと・・・。」
「では。」
氷川は、一度、敬礼すると、その場を立ち去った。
氷川が帰ると、翔一は男の方を見た。テーブルの皿は舐めるように食い尽くされていた。
男は、最後の一口を食べ終えると、少し、満足げな顔をして、再び、厨房を出た。
「あっ、今度は感想聞かせて下さいねー。待ってますー。」
翔一は嬉しそうに、蛇柄の後ろ姿に手を振っていた。