僕は、裸のまま、薔薇園で震えていた。

「大輔・・・。」

僕の大輔に対する思いは、タケル様に対する裏切りであることに改めて気付く。

僕は、アンドロイドとして、大罪を犯してしまったのだ。今更ながら思い知る。

どうして、僕は人間じゃないのだろう。人間だったら・・・。

僕は、アンドロイド。どんなに人間のような容姿であっても、それは偽りにすぎない。

だったら、大輔への思いも偽りなのだろうか。僕は、偽りの思いを大輔にぶつけて、彼を欺いているのだろうか。

目から次から次へと液体が流れてくる。

人はそれを”涙”と言った。

でも僕のそれはただの人工的な液体なのだ。

人間になりたい。

偽りの身体なら欲しくなかった。偽りの心なら欲しくなかった。

これから、僕は、大輔に会えないだろう。

だって、僕は罪を償わなければならないのだ。これからずっと・・・。

偽りの筈の心に大輔の笑顔が鮮烈に蘇る。

「タケル様の部屋へ行かなきゃ・・・。」

僕は、頬に伝わる液体を拭う。

おぼつかない、手を動かして、服を着て、立ち上がろうとする。

「っ・・・。」

体中に軋むような痛みが走った。

それでも、僕はフラフラと立ち上がり、薔薇園を後にする。

一歩進む度に身体中が悲鳴を上げる。

その痛みは、僕の罪の重さを認識させる。

神は何故、アンドロイドである僕に心と痛みを与えたのか。

そんなことを考えながらも、これから、何が起こるか、容易に想像ができる、主人の部屋に向かう。

でも、僕は行かなければならない。

それが、僕の生きる意味であるから。

「失礼します。」

「遅かったね。」

タケル様は冷めた声でそう言った。

その声は、以前のタケル様とは、明らかに違った。

コワイ・・・。

「分かってるよね。」

「は、い・・・。」

タケル様の手が、僕の身体に伸びる。

コワイ・・・。

でも、逃げる事はできない。

僕は肩をすくませる。

「やっ・・・。」

「そんなに僕が怖い?」

タケル様は笑った。だけど、目が笑っていない。

コワイ・・・。

「いえ・・・。」

「これ、前、つけたことあるよね。」

言いながら、僕の首にに、以前僕を「犬」に仕立て上げた首輪をつける。しかし、以前と違う事は、その首輪に鎖がついていたということ。

それを更に、ベッドに繋がれ、鍵をかけられる。

「よく、似合うよ。」

タケル様は笑みを浮かべた。その笑みは、以前のものとは全く違っていて、何だか、邪悪な笑みに僕には、映った。

コワイ・・・。

だけど、僕は、逃げる事も、抵抗することもできないのだ。

そして、大輔に助けを求める事も。その資格も。

僕が、タケル様のアンドロイドである以上。それが、僕が生まれた時から、背負ったものであるのなら。

これから、何が起ころうとも。僕は逃げてはいけない。

ごめんね。大輔。僕は君を裏切った。そして、タケル様も裏切った。

だから、償わなければならない。タケル様への裏切りの罪を・・・。

アンドロイドとしてあるまじき行為を取ってしまったことへの罪を・・・。

そして、大輔を裏切った罪を・・・。