「やだぁぁん・・。」
「もう、やめ・・。」
「ほんとはしたいくせに。」
「お願い・・・。」
「ホラ、もっと鳴いたら?」
「あはぁぁん・・。」
僕は今日も賢を犯す。
賢はイキカケテイテ、それでも僕は賢を責めて・・。
賢を犯しながら、ふと窓を目にやる。
侵入者が一人・・。僕が知っている侵入者・・。一目見ただけだが、忘れる事はなかった。
ダイスケ・・。
彼は、毎日あそこに顔を出していたのだろう。そう、来る筈のないものに会うために・・。
僕は口を小さく歪めた。
(丁度いい・・。)
「いいよ。今日のところは許してあげる。」
僕は、冷めた声でそう告げると、イキかけた賢を放って部屋を出ていった。賢は彼が来ている事など、まるで知らない。
そして、あの、薔薇園へ足を運ばせた。
大輔は、待ち人の姿を追っていた。
(来る筈、ないのにね・・。)
そして、待ち人が来ないのだと、悟ると、頭を垂れて、また、垣根を越えて出て行こうとする。
(このままで済むと、思わないでよね・・。)
「待ちなよ。」
僕は、後ろから、彼に声をかけた。大輔ははっと振り向いた。僕は、偽りの笑顔造る。
「賢に、会いたいの?」
大輔は少し驚いたようだった。そう、彼は、僕の顔など、まるで知らないのだ。
「お、前、知ってるのか?」
「知ってるよ。」
僕は、胸の内を隠そうと、にっこり笑った。
「俺、その、賢のことが・・、その・・。」
「それも知ってる。」
そして、今度は小さく笑う。
「会わせてあげるよ。」
「えっ・・。いいのか?」
「勿論。」
「サンキュー。誰だか知らないけど恩に着る。」
(こうも簡単に・・。)
僕は、心の中で、ニヤリと笑う。
「ついてきて。」
彼は僕の憎悪の感情などまるで、知らなくて、僕のことを信じきって僕についてきた。
好都合だ・・。
僕は大輔を屋敷に招き入れる。
「あの、タケル様?この方は?」
執事が不審そうな顔で大輔をまじまじと見た。
「僕の友達だから。気にしないで。」
「は、はぁ・・。ご友人様でしたか。」
僕は外の人間を招き入れるという事が、なかったので、家の者は、もの珍しげな視線を送る。
僕は、大輔とさも友人のように振る舞おうとした。
大輔は、緊張しているようで、落ち着かない様子で周囲を見回しながらついてきた。
「何緊張してるの?」
僕は、いかにも彼の心をほぐそうとしているかのように笑いかけた。
「いや、俺、こんなデカイ家入るの、はじめてで・・。」
「楽にした方がいいよ。」
彼の信頼を更に高めようと、満面の笑顔を見せる。
「お前、いい奴だな・・。」
「そう?ありがとう。」
準備は整った。
僕は、自室の前に彼を連れてきた。そう、その中には、僕によって戒められた賢がいるのだ。
「この中に賢はいる。会ってやって。喜ぶから。」
「あ、ああ。」
大輔の顔は希望の色が伺える。賢に会える事を心から喜んでいる。
僕は、内心、腹を抱えて笑っていた。
彼の絶望する顔を想像して・・。
その、希望に満ちた顔が変化する瞬間を頭に描いて・・。
自分が抱いた人間の正体を知ってどんな顔をするのだろう。
ショックで発狂するのだろうか。それとも、泣き叫ぶだろうか。怒り狂うのだろうか。
僕は、想像するだけで笑いが止まらなかった。
これほど面白いショーがどこにあるだろうか。
そして、絶望した彼を、目の当たりにした賢は本当に僕だけのモノになるのだ。
僕は邪悪な感情に胸を躍らせた。
(さぁ、絶望しろ・・。)
「さぁ、どうぞ。」
僕の部屋の扉が開かれる。