僕はどこにいるの?
僕は誰?
あれは誰?
あれは誰?
「お母さん、僕ね、また、満点だったんだよ。ねぇ、お父さん。見て、見て。」
「そう、でもね、あなたはもっと、賢くならなくてはならないわ。」
「そうだ。お前はこの家を継ぐ為にいるのだからな。」
「そうよ。あなたはこの家にとって大切な大切な・・。」
道具・・。
僕は、道具なの?
僕は、人間だよ。
「さぁ、もっと勉強するんだ。」
「もっと勉強なさい。」
ねぇ、答えてよ。お父さん、お母さん・・。
「アレはちゃんと、勉強しているか。」
「はい、もう、十歳で大学を卒業ですものね。あの子は素晴らしいわ。」
「計画通りだな。」
「ええ、うまく出来た子・・。」
僕はあなた方にとって何ナノデスカ・・。
ドウグ・・。
家のため、家の繁栄のための・・。
ドウグ・・。
「僕、今日卒業式なんだよ。」
「そうだな。だから、どうした。」
「は?」
「お前は、たかがそれだけのことで浮かれいたのか。馬鹿目が。」
「そうよ、あなたは、もっともっと勉強して立派になるのよ。誰よりもね。」
僕はあなた方にとって何ナノデスカ・・・。
「愛しているわ。タケル。」
嘘だ・・。
嘘だ・・。
それは、本当の愛じゃない。
僕が便利だから、都合が良いから、おまえ達は「愛している」という。
違う、違う・・。
「愛しているわ。愛しているわ。」
便利な、便利なタケル。
都合の良いタケル。
ヤメロ・・。
ヤメロ・・。
そう言って、お前らは、僕を突き落とす。
「事故で、お父様とお母様が亡くなられました。」
涙が、出ない・・。
お父さんって、誰?
お母さんって、誰?
誰が死んだの?
今、ここにある、死体は、僕の知らないヒト・・。
僕は、その知らないヒトに祈りを捧げる。偽りの祈りを・・。
そうだ、この死体は僕の知らないヒトなんだ。
違う、これは人ですらない・・。
だって、僕は、人じゃないもの・・。
父と母という名の機会が生産した道具なのだから・・。
その道具を生み出したのも人間ではないのだ。
みんな、みんな、人間ではないのだ。
「タケル様。」
「君は、誰?」
「タケル様、さようなら・・。」
「待って、行かないで。」
「タケル様。」
「タケル様。」
「あ・・。」
「ご無事でしたか。」
「ここは?どこ?」
さっきのは、夢?
だとしたら、最低の夢だ・・。
「タケル様、お目覚めになられてよろしゅうございました。」
見覚えのある、初老の男性が僕に傅く。
「先程、お医者様をお呼びしておりました。」
「そう・・。」
まだ、現実と夢の区別がつかないくらい、僕の頭は朦朧としていた。
ふと、ベッドにつながれている、鎖を見やる。
鎖が千切られている。
ケン、ガ、イナ、イ。
「賢は?」
「は?」
「賢は、どうしたの?」
「申し訳、ありません。しかし、タケル様が・・。」
「クククク。」
「ハハハハ。」
「タケル様、どうなさいましたか。」
「アハハハハ。」
「お気を確かに持たれて下さいませ。」
「ハハハハ。」
「ハハ・・。」
「すぐにお探ししますから。」
そうだ。このまま、済ませるわけがない。
このまま放っておくものか・・。
思い知らせてやる。
「ハハハハ。」
僕は、完全に狂気に取り付かれていた。
必ず、お前らを・・。
「クク・・。」