僕は、賢に手錠をはめた。そして、足にも。そして、前より頑丈な首輪をつけ、足鎖を前より短くして、ベッドに繋いだ。
それから、賢がしゃべれないように、口の中に布を詰めた。
僕以外の名前を呼ぶことは許さない。
僕以外のことを考えるなんて許さない。
僕の頭の中は、狂った独占欲に支配されてしまっていた。
賢は、僕の為だけに抱かれ、僕の為だけに泣き、僕の為だけに考えるのだ。
僕以外の人間は勿論、いや、人間でなくとも、僕以外のために行動することは許さない。
そう、僕達は一生ここで暮らすのだ。
永遠の時をここで暮らせば良い。
賢は、口一杯に布を積められ、苦しそうだった。
顔を赤くして、僕に懇願の表情を向けた。
「苦しい?」
僕は、口を歪ませた。
賢は返事のかわりに頷いた。
「だったら、僕の許した言葉しかしゃべらないで。」
「そうすると誓うなら口に布を詰めることだけはやめてあげる。」
賢は僕をすがるような瞳で見つめた。
「僕以外の名前を呼ぶことは許さない。」
「僕以外のものを表現することは許さない。」
「これだけ守ってくれるなら、ね。」
賢は頷いた。
「そう、いい子だ。」
僕は少し、笑みを浮かべて、賢の口一杯に詰まった布を取り除いてやる。
全ての、布が取り払われ、賢は苦しそうにハァハァと息をついていた。
「さあ、僕の名前を呼んでみて。」
「タ、ケル、様・・。」
賢は息も絶え絶えと言った声で僕の名前を呼んだ。
「クク。クク・・。苦しくても君は僕の名前を呼ぶ。」
訳もなく込み上げてくる笑い。
これで満足なのか?
満足だ。
満足に決まっている。
僕は自分に言い聞かせた。
「いい子だ。」
僕は、賢に笑って見せた。
「今度はさぁ、僕を愛してよ。」
「は?」
賢は、僕のとりとめのない要求に唖然とした。
「君は、いつか、言ったよね。命令だったら、僕を愛することもできるって。」
あまりの要求に焦りの表情を見せる、賢。
無理もない。
あの時は賢は”愛する”ということの意味を知らなかったのだ。
だけど、今は違う。
彼はその、意味、その行動の難しさを理解しているのだ。
いきなり”愛せ”と言われて、普通の人間だったら”はい、分かりました”とは言えない。
だけど、僕は、その無理難題を下げることはしない。
だって、僕は狂ってたから。
「ねぇ、早く愛してよ。」
僕は故意に賢を急かす。
「愛してよ。」
「愛して、おります。」
「違う。」
僕は言い放つ。
「愛して、おります。タケル様。」
どう、違うのか分からぬまま、同じ台詞を繰り返す、賢。
「だったらさ、行動で示してよ。」
「行動?」
「そうだよ。」
「だって、君は僕を愛しているんでしょ。だったら、それを大輔君に見せてあげてよ。そうしたら、信じてあげる。」
賢が戸惑いの表情を見せる。
「だ、いすけ・・?」
「そう。」
「そ、れは・・。」
「君は僕に従えないというの?」
「いいえ。タケル様のご命令なら。」
「良い心がけだ。」
その時だった。
「タケル様、先程、昨日、屋敷で暴れていた者がまた来まして、取り押さえてございますが。」
何というタイミングだろう・・。
笑いが込み上げてくる。
「いいよ。この部屋に連れてきても。」
「しかし・・。」
「いいから、連れて来て。」
「か、畏まりました。」
「さぁ、賢、君は何をすべきか、分かるよね。」
言いながら、手錠を外す。
「は、い・・。」
そう言うと、賢は、僕の首に身体に腕を絡ませた。
「そうだ。」
僕は賢のメイド服のボタンを外しはじめる。
「見せて貰おうかな。君がどれだけ、僕を愛しているのか。」
「はい。タケル様。」
言いながら、賢は腕を僕に絡めたまま、スカートを自分でめくり、ストッキングを降ろし始める。
僕は、ボタンを外し終え、ストッキングが取り払われた部分を愛撫してやる。
賢は少し、恥じらいと、脅えの表情を残したまま、ストッキングを剥いでいった。
「そう、いい子だ。」
そうだ。
これでいい。
これで・・。