「タケル様。」

ノックの音と使用人の声が外から聞こえた。

タケルは、口を歪めてた。そして、その顔でチラリと賢の顔を見やる。

賢は、ストッキングを降ろす手を止め口を震わせ、目を閉じていた。

「賢、何をしてるのさ。さっき、僕と約束したじゃない。」

言ってニヤリと笑う。

「は、い・・。」

賢は震えながら、返事をし、目を開け、震える手でストッキングを再び降ろし始める。

「タケル様?」

タケルの返事がないのに不思議に思った使用人が再びタケルの名前を呼んだ。

「ああ、入れてやってよ。」

「畏まりました。」

そして、部屋のドアが開く。

「ほら、大輔君に見せてあげたら?君がどんなに可愛らしくて、そして、いやらしいかを、ね。」

タケルは賢の耳元でそう囁いてクスリと笑った。

賢は手を口に当て、身体を震わせたが、必死で震えを止めようと、歯を食いしばる。そして、タケルの思う侭の格好をする。

これ以上、大輔の心を繋ぎ止める訳にはいかない。これ以上、大輔を振り回したくない。だったら、一層、自分は大輔に嫌われてしまった方がいい。賢は、そう思っていた。

「賢・・。」

タケルの部屋に入ってきた大輔は、茫然自失に近い表情を見せた。

「ああ、大輔君。」

タケルは口だけで笑った。

「タケル、これは、どいういうことだ・・。」

大輔は怒りを露に、言った。

「どうって、何か、問題がある訳?」

タケルは故意にとぼけて見せる。

「賢、大輔君にも、少し、見せてあげてよ。君が乱れるトコ。ああ、君は一度大輔君にも抱かれたことがあったんだよね。」

タケルはクスクス笑いながら、賢のの太股に愛撫を加えた。

「やっ・・。」

「・・めろ。」

大輔は、下を向き、拳を震わせ、低く言った。

「やめろ・・。」

「何言ってるのか、聞こえないよ。折角、賢が可愛い声あげてるトコ見せてあげるって言ってるのにね。」

「さぁ、賢・・。」

「はい・・。」

タケルの命令で、賢は、四つん這いの体勢になる。

「賢、やめろ・・。」

「やめろ!!」

今度は、大輔が大きく叫び、賢を背後に伸びるタケルの手を振り払う。

「やだなぁ。大輔君。これは、賢の意志だよ。」

タケルは大輔に手を振り払われたことなど、気にも留めようとせずにサラリと言い放つ。

「嘘だ。」

「嘘じゃないよ。ほら、その証拠に・・。」

タケルは一笑し、賢をチラリと見た。

賢は微笑を浮かべていた。それは、今にも消えそうな、儚い微笑に大輔には映った。

「大輔。タケル様の言う通りだよ。これは、僕の意思。」

「嘘だ!」

大輔は、すがるような目で賢を見た。

「嘘、じゃないよ。だからさ、もう、帰って欲しいんだ。これ以上、君がいると・・。」

それから賢は下を向いてポツリと言った。

「め、いわく、だから・・。」

「何、だって・・?」

大輔は自分の耳を疑った。まさか賢の口からそんな言葉が出るとは、思っても見なかった。

自分を好きだと言った賢の言葉は嘘だったのだろうか。自分が抱いた賢の身体は幻だったのだろうか。全ての出来事が信じられなくなる。

「そんな・・。嘘、だろ・・。」

「嘘じゃない。僕は、タケル様を愛している。だから、さ、君にこれ以上、邪魔、されたく、ないんだ・・。お願いだから・・。」

「うわぁぁぁぁぁ!!」

「わぁぁぁぁぁぁ!!」

「わぁぁぁぁぁ!!」

突然、大輔は、狂気にも近い叫び声をあげ、タケルの部屋を出た。それは、精神が錯乱し、衝動的に行った行動であった。

それから、タケルの部屋は嵐が去ったように静けさを取り戻した。

「アハハハハハ。」

その沈黙を破ったのは、タケルのけたたましい笑い声だった。

「何だよ。賢、その顔は、寂しそうだね。クックック。」

笑いながら、タケルは賢の顎を掴んだ。

「いえ、僕は、タケル様がいらっしゃれば・・。」

そうは、言うが、大輔を完全に失ってしまった賢に拠り所などある筈がなかった。彼に残されたのは、タケルだけだった。しかし、賢は、それでもいいと思った。大輔が自分を忘れてしまうことを願った。できることなら、大輔の頭から自分の記憶すら消されてしまえばいいとすら思った。

それで、大輔が幸せに暮らすことが、できるのなら。

そして、自分は、タケルに対しての裏切り行為をこの身体を一生捧げることで償わなければならないと、思った。それが、じぶんのこれから生きていく意味であると、理解した。

「僕がいれば、か・・。ハハハハハ・・。」

言いながら、四つん這いになった賢の後ろから指を突き込んだ。

そして、容赦せずに、ズブズブと指を動かし、中を弄んだ。

「やはぁぁぁぁ・・。」

「やぁぁぁぁん・・。」

「クククク。」

「やだぁぁぁあ・・。」

「ほら、もっと鳴いてよ。もっと僕のために鳴いてよ。」

「どうすれば、良いか、分かるよね。」

タケルは、賢の耳元で囁いた。

「これからは、君は僕の意思だけで生きるのだから。」