あの日から、本宮大輔は、僕達の前から姿を消した。その後、彼は、消息をたったという噂も耳にしたが、僕にとってそんなことは問題ではなかった。
邪魔者が消えて、嬉しい筈の、僕だった。しかし、僕の心は、何故か、満たされなかった。理由も分からないのに、心は決して満たされない。次第に、苛立つようになった。その苛立ちは、全て、愛している筈の賢に向けられていた。
「ねぇ、僕のこと、愛しているんでしょ。だったら、もっと、嬉しそうに、脱いでよ。」
「申し訳、ありません・・・。」
賢の「申し訳ありません。」という台詞を聞く度に、僕の苛立ちはエスカレートしていった。
そして、結局、賢が服を脱ぎ終わる前に、僕が賢の服を乱暴に剥ぎ取り、行為に及ぶ毎日であった。僕は、訳の分からない焦りに刈られ、賢を組み敷いては、乱暴に犯した。
「いたぁぁ・・・。」
「嘘。気持ちいいくせに・・・。」
「言ってみなよ。気持ちいいですってね。」
そう言って僕は、また、賢の中に押し入った。
「やぁぁぁん・・・。」
僕のエスカレートした動きに賢は、痛みを訴え、叫んだ。しかし、そんなことで、僕は、行為を止めることはなかった。寧ろ、その泣き叫ぶ声を聞く度に、苛立ちとそして、奇妙な、嗜虐心が僕の行為を更に酷いものに変えていった。
「ほら、言いなよ。気持ちいいんだろ。」
「気持ち・・・。」
賢は、やっと動く唇を動かし、僕の命令通りの台詞を口に出そうとする。
「聞こえない。」
僕は、賢が必死なのにも関わらず、冷たく言い放った。
「気持ち、いい、で、す・・・。」
「よくできました。」
僕は、その時笑った。その顔を見た、賢は脅えていた。悪魔を見るかのように。
そう、心からの笑いではなかった。それは、笑いとも言えなかった。
それは、悪魔そのものだったのだろうか・・・。
しかし、その時の僕にとって、そんなことを考えている余裕など、微塵もなかった。ただ、焦り、苛立つ自分と、それをどうにかしようと必死でもがきながらも、それを一人で整頓できずに、ひたすら、目の前の賢に当たり散らしていた自分がそこにはあった。
「タケル、様・・・。今日は・・・。僕・・・。」
僕の過剰な、猛攻に耐えかねた賢がついに、僕に弱音を吐く。それが、気に入らない、僕。
「何、言ってるの・・・?」
その時の、僕の瞳は、もはや完全に、人間の光を失ったもので、その、恐ろしい瞳で、賢を見据えていたのだろうか。僕が組み敷いた身体から、痙攣が伝わった。
「君は、さっき、気持ち良いって言ったじゃない。だったら、もっと、できるでしょ。」
「君は、淫乱なアンドロイドだものね。」
そう言って、僕は唇を歪めて言った。
そして、その言葉通り、僕は、賢に何度も、押し入り、中から賢を痛めつけた。
「やぁぁぁぁん・・・。」
「あはぁぁぁん・・・。」
賢は、ひたすら、首を横に振りながら、泣き叫んだ。
「そうだよ。君は、もう、帰る所なんてないんだ。クク・・。」
「ハハ・・。」
「ハハハハ・・・。」
乾いた笑いが込み上げる。僕の中の虚しさを乾いた風が突き刺すように、僕の心は・・・。
イタイ・・。
イタイ・・。
「もう、絶対に、逃がさない。」
僕は、何かに言い聞かせるように呟いた。
そして、爪で、幾度に渡る、行為で目が虚ろになっている、アンドロイドの白い、人工肌をなぞった。人工肌とはいえ、人間のそれとはなんら変わりはなく、白い肌に、赤い線がうっすらと残った。
「そうだ、君は僕だけの玩具だ・・・。」
「玩具なんだよ・・・。」
「クク・・・。」
「ハハ・・・。」
暗い一室に、僕の乾ききった笑い声が、やけに響いた。