僕は、急に忙しくなり、家を空ける事が、多くなる。泊りがけも度々だった。賢を抱く事も少なくなった。
僕は、自分の多忙を呪った。
一つの仕事にカタがつき、久々に家に戻る事になった。僕は、賢の顔が見たくて、嬉々として家路に向かった。小さな頃から、家を継ぐ為だけの勉強を強要されてきた為か、僕は、感情を表に出さない、何かを望んだり、喜んだりすることが少なかった。そうすることが、生きていく上で無難なことだと考えていたからだ。アンドロイド一体でこうまで変わった自分が少し、可笑しかった。
帰宅すると、賢は薔薇園にいた。僕はそっと近づくと、賢は何やら嬉しそうだった。それは、薔薇を慈しむ心とは少し違っているように見えた。少なくとも賢が変化したことに僕は不安を抱く。しかし、その時は少しでも長く賢と繋がりたいという、気持ちが大きく、すぐに不安を忘れた。
「賢。」
僕の声に賢は振り向いた。
「タケル様。あの、お帰りなさいませ。」
「ただいま。」
僕は賢の顔を見てニッコリ笑った。
「今から、いいかな。僕の部屋で。」
「はい。」
賢は薔薇の手入れを切り上げ、僕についてきた。
「寂しかったよ。賢。」
僕は、後ろから賢のメイド服を脱がせていった。そして、そのまま賢を抱きしめ自分の唇を賢のに重ね、舌を侵入させる。賢はおずおずとそれに応え、舌を絡めてきた。久々の賢の舌の感触に僕は少し、興奮していた。
「ふぁ・・・。」
賢は相変わらず、初々しい反応を示した。
唇を離し、その唇をうなじにつけ、そこに舌を這わせ軽く噛んだ。
「ひゃぁ・・・。」
「ここがいいの?」
賢は顔を朱色に染めた。僕は、賢の身体のあちこちに痕を付けていった。まるで、小さな子どもが自分のお気に入りに自分の名前を書いていくかのように・・・。少しでも、賢が僕のものであるという証が欲しかったのだ。そうしないと、賢がいなくなってしまうような気がしたのだ。
そう、僕は、何となくではあるが、賢の微妙な変化に気付いていた。外からは分からない内面的なものではあるが・・・。理由はどうあれ、賢は確実に人間らしくなっていた。そのことは、良い事である筈なのに、僕を不安にさせるだけであった。
僕は、それを賢自身にぶつけるように、賢を貪る。賢はいつも通り、従順だが、それは数ヶ月前の賢の従順さとどこか違って見えた。従順ではあるが、その眼は・・・。
それでも、僕は何故かその不安を賢に悟られたくなかった。
僕の指はだんだん下部へと移動した。
「僕がいない間、ここはいい子にしてたのかな?」
その言葉に賢は耳まで真っ赤にする。
僕は賢のそこに指を入れた。
「あはぁぁ・・・。」
賢は僕の指の動きに反応する。
「やだぁぁ・・・。」
「どこが嫌なのか言ってごらん。」
そう言ってやると、賢はますます顔赤くして口篭もった。その仕種に、僕のちっぽけな不安などどうでもよくなっていた。今は賢は自分のものなのだ。あの、可愛らしい仕種を見れるのも、賢の身体に触れるのも、全て僕だけの特権なのだ。何を不安に思うのだろう。人間らしくなった事だっていい事じゃないか。僕は胸にそう、言い聞かせた。
「ごめん、意地悪だった?」
僕は指を中で動かしながら言った。
「やぁぁん・・・。」
賢の目がトロンとしてきた。
「ねぇ、そろそろ、いいかな。」
「は、い・・・。」
息も絶え絶えに賢は返事をした。
そう言って僕は賢の背後に回り、後ろから抱きしめる。そして、僕は賢に押し入り、僕達は下半身で繋がった状態になる。
「いたぁぁ・・・。」
「そのうち気持ちなるでしょ。」
「やぁぁぁ・・・。」
賢は最初は痛がるが、だんだん、慣れてくると、無意識にでも僕を求め、自分から腰を動かす。
「やぁん・・・。」
「あはぁぁ・・・。」
「もっと、声、聞かせて。賢の声、可愛いんだから。」
「やぁぁん・・・。」
「賢、賢、賢・・・。」
僕は、賢の名前を呼んだ。
僕は、ふと、賢の顔を見た。その顔は、僕ではない、別のものを見ているように僕には映った。前は明らかに僕だけを見ていたのだ。それが愛ではないと分かっていたけれど。それはいわば、僕への奉仕のことだけを考えていたに過ぎないけれど。だけど、今の顔は明らかに人間の顔。その顔は僕に向けられていない、僕は、そう、思った。
賢は自分のその顔に気付いていないのだろうか。
僕は、賢に聞こえないように一言、漏らした。
「君は、誰を見ているの?」