賢は何日も薔薇園に姿を見せることは、なかった。
大輔は、仕事が終わると毎日、あの、薔薇園を見に行っていた。
「今日も、いないのか・・・。」
その度に肩を落として、帰っていく大輔がいた。
「どうしたのかな・・・。あいつ・・・。病気とかじゃないよな・・・。」
「それとも、俺、嫌われたのかな・・・。」
「いや、多分あいつ忙しいんだ。きっと。ここで働いているみたいだったし・・・。」
「あいつだって、俺に会いたいみたいなこと言ってたよな。うん。」
色々な考えが勝手に大輔の頭の中をグルグル回っていた。賢に関する独り言が増える。
賢の顔が見たい。大輔の願いは日増しに大きくなっていった。頭の中は、賢の事がどんどん占めるようになってしまい、仕事でも、単純なドジが目立つようにさえ、なった。
「俺、どうすればいいんだよ・・・。」
賢に会いたい・・・。賢に会いたい・・・。賢に会いたい・・・。
思い出される、柔らかい唇の感触・・・。数日会ってないだけなのだが、もう、何十年も見てないような気がする、あの笑顔・・・。大輔は、いてもたってもいられなくなる。
賢はというと、タケルから、あの薔薇園に行く事を、ますます、強く、禁じられていた。だが、賢自身、タケルがどうして、ここまで、薔薇園に行く事を禁じているのか、さっぱり理解できなかった。それは、タケルだけが知っている理由であったのだから。
賢も、ここ、何日、薔薇園というより、大輔のことが気になって仕方がなかった。大輔同様、賢もまた、大輔の事が頭の中をグルグル回っていたのだ。
その、思いはタケルとの行為の最中でも、出てくるようになり、それが、何気ない態度に表れ、ますますタケルを苛立たせた。そして、賢は、タケルとの行為についても、意味が何となく、分かり、考えるようになった。今までは、主人である、タケルの命令に従うことだけを考えれば良かったのに。しかし、大輔との出会いが賢を変えていった。賢の感情は日増しに人間になっていく。
タケルは、あの夜の賢の寝言が気になって、眠れない休日が続いた。「ダイスケ」・・・。賢は、あの夜の寝言の事は勿論、知らない。何も知らない顔をしているくせに、やたら、人間みたいな感情を現す、態度が増えてきたことが気に入らない。それもその筈・・・。会った事はないが、「ダイスケ」が賢を変えたのは何となくは分かる。賢を変えたのは、自分ではなく、「ダイスケ」・・・。だとするとこれ以上不快なことがあるだろうか。
「何、考えてるの。賢・・・。」
「も、申し訳ありません。」
「早く、脱いだら。」
抑揚のない声でタケルが命じる。
「は、い・・・。」
賢は少し、震えながらメイド服を脱いでいく。服を脱ぎ終わらないままに、タケルは、苛立ちながら、賢の唇に自分の唇を乱暴に押し当てた。
「ふぁ・・・。」
舌を激しく動かし、賢の口内を弄ぶ。賢はためらいがちに、苦しそうに、舌を絡める。賢も、最近のタケルが行為の時、乱暴になっていることが分かるようになった。そして、賢は、その理由を全くではなかったが、理解する事が難しかった。日増しに、タケルへの恐怖心と大輔に会いたいという思いが強くなっていく。
粘着質な音をたてて、唇が外される。賢は、ハァハァと苦しそうな息をした。
「何、もったいぶってるわけ?」
タケルが皮肉るように言った。
「決してそんな事は・・・。」
賢は、脅えるような態度で弁解をする。
「ふーん・・・。だったら、しっかり良い声で鳴くことだね。」
「は、い・・・。」
「はいはいって言ってるけど分かってるの?僕がどうして欲しいか・・・。返事をすればいいだけじゃないんだよ。」
タケルが苛立ちを込めて賢を叱責したので、賢はビクッと肩を震わせた。
「分かって、おります。」
「そう・・・。だったらいいんだけどね。」
タケルは目を細める。
「足、開きなよ。」
賢は言われるがままに足を開いた。
「もっと。」
タケルは静かに命じる。また、少し足を開いた。
タケルは乱暴に賢の足を開いた。
そして、秘部に指を入れ、そのまま、奥まで突き込んだ。
「いたぁぁぁ・・・。」
痛みに賢が叫ぶ。そんなことなど、構わないという風にタケルは
「もう、一本入れるよ。」
言って、指を二本入れる。
「タケル様、お許しを・・・。」
「君は、僕の命令は絶対服従だったよね。」
言って、指を動かす。そこからくちゅくちゅと淫靡な音がしていた。
「やぁぁぁ・・・。」
「いたぁい・・・。」
「あはぁん・・・。」
賢の声はだんだん、丸みを帯びてきて、それが、快楽への喘ぎに変化していく。
「もっといやらしい声出してよ。」
「やぁぁん・・・。」
「あはぁぁん・・・。」
タケルは指で賢のを弄び、賢の喘ぎを導き出す。
「あはぁん・・・。」
「ほんと、賢はいやらしいね。」
「タケルさまぁん・・・。」
「いやらしいくせにもったいぶって・・・。それとも、それは君の作戦なのかな・・・。」
「違い、ます・・・。」
賢は腰をガクガクさせながら、涙を潤ませながらも否定する。
「何が違うのかな・・・。淫乱アンドロイド。」
タケルは嘲るように言った。そして指を動かす。
「タケルさまぁ・・・。」
「もっと聞かせて。命令だよ。」
「あはぁぁん・・・。」
タケルは指で賢を犯しながら、自分を嘲ていた。自分は何をやっているのだろう・・・。顔も知らない「ダイスケ」に醜く嫉妬しているのは明白だった。しかし、その気持ちはどうにもならない。その苛立ちはどうにもならなくて、そのはけ口は賢だけだった。「ダイスケ」のことを賢に問う勇気もなくて、ただ、賢を冷たく嘲ることしかできない自分が正直情けない。
「僕も、気持ち良くしてよ・・・。」
そう言ってタケルは賢に被さり、自分のを挿入した。
「あはぁぁぁ・・・。」
「賢、賢、賢・・・。」
「やぁぁん・・・。」
賢の意識は飛んでしまったらしくて、ただ、タケルの動きに喘ぐしかなくなる。
「あはぁん・・・。」
そんな賢をタケルはとにかく貪った。賢を貪る事で、タケルは「ダイスケ」の事、自分の醜い嫉妬のことを忘れようとしていた。
しかし、それが、簡単に忘れることができないのはタケル自身分かっていた。
もはや、皮肉な運命の歯車は誰にも、止める事はできず、誰にも修正することはできなかった。ただ、キシキシと狂った音を立てて、回り続けるしかないのである。
そして、その歯車は、タケルを狂気へと導いていくのだろうか。