嫉妬
彼の気持ちが誰に向いているかなんて、とっくに知っている。僕じゃない。
それでも僕は彼を所有したい。所有するだけでいい。それが例え彼の意にそぐわなくても、強制的でも・・・。
僕の心は暴走している。
最初、彼を犯した時は彼は泣き叫んだ。
彼はひたすらある人間の名前を呼ぶ。
「本宮、大輔・・・。」
許せなかった。
「一乗寺君、ほんとは大輔君とやりたいんでしょ。」
彼は困惑の表情を隠しきれていない。
僕は、彼の秘部に指を這わせながら言う。
「でも、君、僕とこんなことして大輔君と一緒になれるわけないよね。」
「好きなんでしょ。」
図星だった。
僕は彼に苛立つ。
「つっ・・・。」
「痛いの?」
「やめ・・・。」
「だって、君、僕以外のこと考えてる。」
「ちが・・・。」
「嘘。」
「やぁぁ・・・。」
彼は、苦痛の表情を見せた。
しかし、彼の脳裏には無意識とはいえ、本宮大輔映っている。
苛つく・・・。
その苛立ちを彼を攻めることでぶつける。
「いたぁぁ・・・。」
「やだぁぁ。」
彼の痛みなど気にもかけず、というか、あえて痛みを誘うようにと言う方が正しいかもしれない。
不意に僕は彼から抜いた。
「えっ?」
彼は驚いていた。それもその筈だ。イキかけているときだったのだから。
「どうしたの?こうして欲しかったんでしょ?」
彼の求めている答えを知りながら僕は言った。
彼は答えない。
「言わなきゃ分からないよ。」
「それとも自分でやったら?」
「まさか、したことないとかじゃないんでしょ?」
彼は図星をつかれ、耳が赤く染まる。
僕は彼の手を彼の秘部にあてさせた。
「ここを、こうするんだよね。」
「こんなになっちゃって。」
「やぁぁ・・・。」
彼は手を秘部から離そうとする。顔は物足りないままといった感じで。
「もうしないの?」
「それだけでいいの?」
僕の問いに彼は泣きそうだった。
「やぁ・・・。」
そうやって彼をいたぶっているのも、やはり、本宮大輔と彼自信への苛立ちからだと思う。
そして、彼の生理的なものが僕によって支配されていることの確認でもあった。
「何?僕にして欲しいわけ?それとも大輔君?」
大輔という名前に反応するが何も言わない。
「言わずに気持ち良くなろうたってムシが良すぎるんじゃない?」
「ちが・・・。」
「違うの?」
「じゃ、自分でやれば?」
彼は喉が渇いたときの表情に近いものを見せていた。
彼は本宮大輔に対する罪悪感と恋心にも似た感情から、目の前の僕の助けを拒否しているのだろう。
それはますます僕を苛立たせる。
早く言え。負けを認めてしまえ。それで僕は彼を所有できるのだ。本宮大輔を思うことすら許されない。
いや、僕が許さない。
ついに彼の意思が弱まるのを僕は見てとった。
聞こえるか聞こえないかの声で、
「おねが・・・。」
そのわずかな声を聞き取り、僕は彼を突き始める。
正直僕自信もイキかけていた。
「やぁん・・・。」
「はぁん。」
僕が目茶苦茶に突いたにもかかわらず、彼は、さっきの苦痛の表情とは違う声を発していた。
「やぁぁ・・・。」
「もっと鳴いてよ。」
「はぁぁ・・・。」
僕はいつのまにか意識が途切れていた。気がつくと彼が隣に横たわっていた。
数分して彼が目を覚ます。
「おはよう。」
僕は何事もなかったかのように接してみた。
「本宮?」
彼はまだ、寝ぼけていたらしい。大方、本宮大輔が夢にでもでてきたのだろう。
「まだ、そんなこと言ってるの?」
「えっ?」
「君さ、覚えてる?僕に言ったこと。」
「やだ・・・。」
彼は頭が動き出したらしく、行為の中で、自分が発した一言を思い出したようだ。
「本宮君の夢なんかもう、見れないよ。」
「僕のことしか考えちゃだめなんだからさ。」
彼は俯き、あきらめの表情を浮かべる。悲しそうに。
僕は彼が極端に自虐的な人間だということを知っていたから、彼が僕を求めることにこだわっていた。
求めたことで、罪悪感に襲われ、自虐的になりやすい。
卑怯かもしれない。
でも、そうまでしても、所有したかった。所有しておくことでどうにかなると考えていたのだ。
彼は、僕と行為をするとき、従順で卑屈だった。
僕は彼に対して、歪んだ、執着に近い愛情と、そして、苛立ちを覚える。
それはいつまでたっても消えない。