【white christmas】
僕は、何故、こんなことを言ったのか、自分でも分からなかった。
それは、12月24日、僕達選ばれし子どもたちは、光子朗さんの家に集まり、その帰り道ののこと。
「あのっ、たっ、高石君・・。」
「何?一乗寺君。」
「あの、今日、君んちお母さん、いないんだよね。」
「うん。」
「良かったら、僕の家、来ない?その、迷惑じゃなかったらだけど・・。」
自分でも何を言っているのだろうと思った。
「その、今日も、お母さん、仕事、だろ・・。」
「うん。いない。」
「だったら、うちでクリスマスしていったら、どうかなって・・。その、でしゃばってたら、ごめん・・。」
「一乗寺君って優しいんだね。」
高石は碧眼の瞳で笑った。
思わず、僕は見とれてしまう。
「一乗寺君の家が迷惑でなければ、お言葉に甘えさせて貰おうかな。」
「迷惑だなんて、そんな・・。」
というわけで、高石は僕の家に来ることになった。
どうして僕が彼を誘ったのか。誰もいない家に向かって帰る彼の背中があまりに寂しくて・・。
「お邪魔します。」
「ただいま。今日、友達が来てるんだけど。」
「まあ、賢ちゃんからお友達を連れてくるなんて。」
母はやはり嬉しそうだった。近頃、僕が本宮達を連れてくる度、この母親は顔をほころばせて喜んでいた。以前の僕は全くといって良いほど、友達を呼べる者がいなかったことが、分かるだろう。
「確か、あなたは・・。」
「はい、高石タケルといいます。」
「そう、タケル君。礼儀正しいのね。」
「さぁ、もうご馳走できてるから二人とも、いらっしゃい。それとも先にお風呂がいいかしら。」
「はい。ありがとうございます。」
僕達は順番に風呂に入り、食卓につく。
「今日はクリスマスイブでしょ。ママ、頑張ったんだから。タケル君も遠慮しないで食べてちょうだい。」
「ありがとうございます。」
「まぁ、タケル君のお母さんはクリスマスイブの日もお仕事なのねぇ。」
「はい。やっぱり仕事柄不規則で。」
「大変ねぇ。良かったらいつでも来ていいのよ。」
「はい、ありがとうございます。」
人当たりの良い、笑顔を母に向ける高石。
それから、僕達は雑談に花を咲かせた。
「まぁ、もうこんな時間。ママ、布団賢ちゃんの部屋にもう一つ布団敷いてくるわね。」
「すみません。」
「いいのよ。気にしなくて。」
少しして・・。
「お待たせ。さあ、二人とも布団の用意できたから、ゆっくりしてらっしゃい。」
「ありがとうございます。」
それから、僕は自分の部屋に、高石を案内した。
「どうぞ。」
僕達は、とりあえず、座る。
沈黙が二人の間を流れた。
「どうして、僕を、誘ったの?」
不意に口を開く高石。
「そっ、それは・・。」
「可哀相に見えた?」
「そっ、そういうわけじゃ・・。」
「フフ、一乗寺君は嘘が上手いね。まぁ、そこが良いのだけど・・。」
低く笑う、高石。
それから、僕にさらに接近し、僕のパジャマのボタンに触れる。
「な、に、するんだ・・。」
「クリスマスに誰もいない家に帰る僕。それに同情し、僕を家にまで誘う、一乗寺君。まさに天使様だね。」
高石は薄く笑った。
「だったら、こっちの方もいいんじゃない。お優しい賢ちゃんは。それともこれがしたくて僕を誘ったとか。」
言いながら、ボタンを外していく。
「やだっ・・。」
「嫌じゃないくせに。」
僕の唇に自分のを押し当て、歯を割り、舌を侵入させる。
「ふぅんん・・。」
「んんん・・。」
唇を離そうと、もがけばもがくほど、余計に高石は僕を捕られ、奇妙な快感を下半身まで植え付けられる。
音を立てて、唇が外される。
「ほら、もうこんなに顔を真っ赤にして、僕を欲してる。やらしい。」
クスリと笑う、高石・・。腰がたたなくなった僕を難なく押し倒し、首筋に舌を這わせる。高石の熱い息が直に伝わる。
「やぁぁん・・。」
「やめ・・。」
僕の制止の声など、まるで聞こえないかのように、高石は、舌をさらに下に進める。赤い突起をみつけて、軽く、噛む。
(カリッ。)
「つっ・・。」
体中が反応し、疼き始めた。
それから、上半身を弄ばれ・・。
「こっちももういいんじゃないかな・・。」
高石は、碧眼を細めた。
「やだっ。そこは、やだっ・・。」
僕の必死の制止を面白がるような顔で下半身に手を伸ばす。
「やめろっ・・。」
しかし、先程までの愛撫に、僕は感じてしまい、下半身は濡れていた。それを隠したかった。というか、隠さなければならないと思った。
しかし、高石の力には勝てなくて、高石は、パジャマのズボンの中に手を忍ばせ、太股を愛撫しながらその部分を弄る。
「クク。ほら、こんなに濡れてる。」
「ちがっ・・。」
「何が違うの?ほんとはこれを期待してたんじゃないの?」
「やぁぁ・・。」
「一乗寺、辛そう。」
さらに目を細める高石。
「でも、すぐ楽にしてあげるから。」
言いながら、力ずくで僕の足を広げた。
「やだぁぁぁ・・。」
(ズブッ。)
火照るような挿入感は僕の官能を侵していく。
高石は、僕の中で指を自在に動かし、僕の感覚を支配していく。
「やぁぁぁん・・。」
「ほら、こうするともっと可愛く鳴ける・・。」
「あはぁぁぁん・・。」
「もっと淫乱みたいに鳴いてよ。」
「やだぁぁぁん・・。」
涙がポロポロと流れる。
何故自分は彼を誘い、こんなことまでされているのか、分からない・・。よりによってクリスマスイブの日に・・。
どうして・・。何故・・。
同情?哀れみ?僕が高石を哀れんでいる?
分からなかった。
でも、分かることは、ただ、一つ。あの、寂しげな背中だった。
「ほら、僕を哀れむんなら、もっと鳴きなよ。」
「はぁぁぁん・・。」
「フフ、いい声だ。」
「いいよ。今度は僕の中も気持ち良くしてよ。」
そう言いながら、高石は自分のを僕の目の前に差し出す。
「何をするのか、分かってるんでしょ。」
僕は、これから自分がさせられることを察知した。
「やだ・・。」
「いいじゃない・・。ねぇ、早く・・。」
「やだ・・。」
「だったら、無理にしてもらうまでだね。」
言いながら、僕の髪を掴み、それを僕の口に捻じ込んだ。
「ん・・。」
「舌を動かすだけでいいんだよ。しないんだったら、僕から動くけど。」
高石は、僕の口内で動く。精液が僕の唇から溢れる。
「駄目だよ。ちゃんと飲まなきゃ。」
「ん、ん・・。」
僕はそれを口から出そうともがくが、高石は、それを許さなかった。
「逃げないでよ。自分だけ気持ち良くなろうなんて虫がよすぎるんじゃないの。」
「ん・・。」
「んん・・。」
高石は容赦なく、腰を動かし、僕の口内をそれで弄んだ。
「も、う・・。」
「んふぅぅん・・。」
高石のそれが抜かれる。僕の顔に精液が飛び散った。
「クク。いい顔だ。一乗寺君の顔に雪が降ってる。」
「いいよ。ご褒美だ。」
そう言って、高石は、僕の身体に覆い被さった。
「いたぁぁぁぁ。」
電撃が僕を貫くかのような痛みを味わう。
「痛い。痛い。痛い。」
高石は僕の身体を貫くように、腰を動かした。
「やだぁぁあん・・。」
「はぁあんん・・。」
「はぁぁぁん・・。」
「やだぁぁぁぁ・・。」
そして、また脳裏に浮かぶ。彼を誘ったのは自分であるということ。
「はは・・。賢君は本当にお優しいね。哀れみから僕に身体まで差し出すなんて。」
「はは・・。」
「はは・・。」
冷たい・・。
僕の身体に涙が零れ落ちた。
「僕のことなんか好きでもないのに・・。クク・・。ハハ・・。」
高石・・?
泣いている・・。
「お願いだから、同情はやめて・・。自分が惨めになるんだよ。」
「な、に言ってるの?君は・・。」
「本当は僕なんかといたくない癖に、可哀相ってだけで誘ったんでしょ。」
高石・・。
どうして僕は高石を誘ったのだ。改めて、考える。
どうして・・。
思い浮かんだ、肉まんを僕に手渡した時のあの、笑顔・・。
笑顔・・。
笑顔が見たい?
そう、僕は彼の笑顔が見たかっただけ・・?
僕は高石のことが、好き・・?
「ううん。同情なんかじゃない。君と一緒にいたかったんだ。君と一緒にクリスマスがしたかったんだ。だから・・。」
「嘘・・。」
「嘘じゃない・・。」
「ほんとに・・?」
高石が唖然とした。
「だって僕一乗寺君に優しくしたことなんて・・。」
「あったよ。あの肉まん、すっごく美味しかったんだ。君が手渡してくれたからだよ。あの時の君の笑顔が忘れられなかった。」
「あ・・。」
「うん。だから、もう一回、抱いてもいいよ。」
「ほんとに・・。」
「うん・・。僕も高石と寝たい。」
それから・・。
僕達は再び身体を重ねた。その時の高石との行為は温かくて、先程と違って、僕を愛撫する高石の手が優しくて・・。
それから、高石は、僕の耳元で囁いた。
「ごめん。僕、君に言わなきゃならないことがあった・・。」
「何?」
「僕もね、君が好きだったんだ。」
自分がもっとも欲しかった言葉。
”好き”
単純だけど、一番響きが良い言葉・・。
僕達はその時、身体と心の両方が繋がった。
「やはぁん・・。」
「やぁ・・。恥ずかしい・・。」
「恥ずかしがることないよ。可愛いんだから。」
「高石君んん・・。」
「名前で呼んで。賢。」
「タケルぅぅん・・。」
「あはぁぁぁん・・。」
「可愛いよ。賢。」
「タケルんん・・。」
僕の身体はまた火照っていく。
熱くて、気持ち良くて・・。
ずっと浸りたくて・・。
「はぁぁぁん・・。」
「やはぁぁん・・。」
「ねぇ、賢。外・・。」
ふと、窓の外を見ると、雪がちらほら降っていた。
「ホワイトクリスマスだね。」