昔、昔、中国には仙人が住むと言われる桃源郷があった。桃源郷では、たくさんの仙人が暮らしたり修行をしたりしていた。位が上の仙人は、弟子をとり、その弟子を仙人にすべく教育していたのだ。

そして、ここに岳という、力の強い仙人も弟子をとろうと思い、人間界におりて弟子を探していた。岳という仙人は若く、髪の毛は金髪、青い瞳の美しい仙人であった。

岳はとある中国の村に降りることにした。そして、様々な人々を観察していた。しかし、なかなか、弟子にしたいと思える人間はいなかった。収穫がないので、そろそろ桃源郷に帰ろうとした時、とても汚いなりをしているが、顔は少女のように愛らしく、肩まで切り揃えられた真っ黒の髪の毛をした少年が歩いてくるのが目に留まった。岳はその少年が気になり、後をつけた。

当たりはだんだん、薄暗くなっていった。

この当たりは妖怪が出るということで有名な場所であった。そして、その妖怪は、美しい少年を食べることを好む妖怪であった。

どのくらい、歩いただろう。

その時だった。

「グハッハッアア・・。お前、うまそうだな。」

少年はその声に気付き、後ろを向くと、何とも大きな魔物が少年に襲い掛かろうとした。少年は脅えて逃げると思いきや・・・。

「ああ、僕を食べて下さい。僕はもう生きていても仕方がないのです。」

少年は、そう言って、魔物の前に進み出た。後を付けていた岳はこれには、驚いた。

「全く、何考えてるんだろ・・。」

ぼやきながら岳は魔物の前に飛び出ていった。

「何だ。お前は。お前も食われたいのか。」

「へぇ、君、僕に勝てるとか思ってるんだ。」

「なんだと?」

岳は宝具を取り出すと、それをトロルの上に軽く当てると、魔物の巨体は頭から解けていき跡形もなく消え去った。

「あーあ、こんなに簡単に融けちゃった。」

岳は事も無げに言った。

少年は岳を呆然と見上げていた。

「あ・・・。」

「で、君は死にたいわけ?」

「は、い・・・。」

「何で?」

岳はぶっきらぼうに訊ねた。

「僕、父と母と暮らしていたのですが、二人とも、その・・・。」

「死んじゃったんだ。」

「は、い・・。妖怪に・・・。」

「それで、君も死のうと思ったんだ。」

少年は頷く。

「馬鹿みたい。」

岳は平然と言い放つ。

その言葉に少年はじわじわと目から涙を溢れさす。

「そんな・・・。」

「だって、そうでしょ。合理的じゃないと思うな。心中なんて。命の無駄だよ。」

「それにさ、君、可愛いから、勿体無いよ。」

「は?」

唖然とする少年の顎を岳は掴んだ。そして、そのまま、自分の唇を重ねる。

「ん・ん・・・。」

あまりに突然の出来事に少年は驚き、身体が動かなくなる。そのまま、岳は少年の口に舌を侵入させる。そして、そのまま、口内を弄んだ。

「ふぁんん・・。」

「ふぅぅん・・。」

少年は、耳を桃色に染め、目には涙を潤ませ、一気に腰が崩れ落ちて、ヘナヘナとなる。その腰を岳が手で掴み、更に、口内を舌で掻き回す。

「ん、ん・・・。」

「ふぅぅう・・・。」

唇を離してやると、少年は、苦しそうに息をした。

「ほんと、可愛いね。」

岳はクスリと笑った。

「な、にをする、んです、か・・・。」

少年は非難の瞳で岳を見た。

「睨んでも怖くないから。」

言って岳はクスクス笑った。

「ねぇ、こうしない?」

「は?」

「僕ね、実は、仙人なんだ。さっき、見たでしょ。あれ、僕の宝具っていうんだ。聞いたことあるでしょ。」

「へっ?仙・人・・・?」

突然の告白に少年は目を丸くした。

「君、僕の弟子になりなよ。そうしたら、強くなって、君のお父さんとお母さんの仇が打てるようになるようにしてあげるから。」

「本当、ですか・・・?」

「勿論。」

「僕、何でもします。だから・・・。お願いします。」

「そう、いい心がけだね。」

岳は内心、良い獲物を見つけたといわんばかりにニヤリとした。

「で、君の名前は?」

「賢といいます。」

「いい名だね。」

「では、君は今日から桃源郷で暮らすことになるけれどいいよね。」

「はい。仙人様。」

賢は、涙を拭って返事をした。

そして、岳はペガスモンという聖獣を呼んで、賢を乗せて、桃源郷へ向かったのであった。