「さっさと抱いたらいいだろ。」
賢は僕を睨みつけた。
「君も淫乱だね。そんなに僕に犯されたいんだ。」
僕は、口を歪ませて言った。
「違う・・・。」
悔しそうに唇を震わせながら否定する、賢。その、しなやかで細い両腕は後ろ手に縛られて痛々しい。そう、僕が縛った。
「そんなに急かさなくても、望み通りこれからたっぷり喘がせてあげるよ。」
言いながら、僕は、賢の服を剥いでいった。
僕達が肉体を重ねたのは、一度や二度じゃなかった。僕は、事ある毎に賢を呼び付けては、無理矢理、ベッドに押し倒し、犯す。他の選ばれし子どもに知られないようにする。その代わり、僕は賢を抱く。暗黙の了解だった。
肌が露出していく度に羞恥と恐怖に顔を歪ませる賢。また、こんな顔をさせてしまった。
僕は、無理矢理賢の唇に自分の唇を押し付けた。いやいやしながら、逃げようとする賢の顎を捕らえて、歯を割り、舌を賢の口内に侵入させる。そして、舌を使い、賢の口内を弄ぶ。賢の目から涙が潤み、腰がガクガクと震えた。無意識だろう、僕に捕まる、その小刻みに震える指が愛しく感じる。体中の力が抜けたのか、力が、抜けたように、賢の身体がヘナヘナとなる。
僕は唇を離した。
「抵抗、してみたら。」
冷ややかに言い放つ、僕に賢は憎悪の視線を向けた。僕は、その瞳に妙に胸が締め付けられた。
そのまま、僕は、賢の露になった、胸元に唇を這わせ、その赤く、突き出たところを軽く噛んだ。
「やっ・・・。」
それに反応して賢は、ビクビクと身体を跳ね上がらせる。僕は、その反応を楽しもうと、再び、軽く噛んだ。
「つっ・・・。」
僕のちょっとした刺激でも、ピクピクする賢の体が可愛らしい。
賢は耳まで真っ赤にして、唇を羞恥に震わせていた。
「どうしたの?この程度で感じちゃったわけ?君の身体は。」
「ちが・・・。」
「違うの?こんなに身体を震わせてるのに。僕に触わられるのがいいんでしょ。」
「違う。」
今度ははっきりと否定。
「今日も良い声で鳴いてよね。」
言って、僕は、太股に指を這わせる。これからなされる行為を賢は悟り、恐怖に顔を引きつらせる。
「怖い?君が僕を拒もうと力入れるからいつも痛いんだよ。」
太股を撫で上げる。
「やぁ・・・。」
短く、賢は声を上げた。
僕の指は賢の秘部まで達した。そして、指でそこを探り当てる。そこは、さっきのキスで感じたのか、白い液体が滲み出ていた。
「もう、こんなに濡らして待ってたんだ。やらしい。」
僕は、クスリと笑う。その白い液体を指で拭い取って賢に見せた。
「これ、君のだよ。」
賢はそれから目を背けようとする。
「自分のなんだから。」
僕は、賢の頭を抑え付けて、僕の方を向かせる。そのまま、賢の唇を指でこじ開けて、その液体を舌に擦り付ける。
「どう、君の出したものの味は?」
賢は苦しそうに咳き込んだ。別に賢が苦しむ姿見たいわけではないのに。しまったと思いつつも、口から出る言葉は、やはり賢をなじる言葉しか出ない。
「不味かった?」
僕は唇を歪ませた。
「ほんと、淫乱なんだから。君は。」
言いながら、また、指をそこへ戻す。そして、中に入れ、指を動かす。
「いたぁぁぁ・・・。」
「まだ、慣れないの?」
「やぁぁぁん・・・。」
痛みからなのだろう。賢はポロポロと涙をこぼした。また、賢を泣かせる。いつものパターン。
それでも、僕は、内面を賢に悟られたくなかった。弱いと人から思われるのが嫌だった。無意味なプライドが邪魔をして、賢を傷つけていく。
僕は、指を動かした。賢は、痛みに喘いだ。
「やだぁぁぁ・・・。」
「何言ってるの?こんなに濡らしといて。淫乱な賢。」
僕は賢の耳元で囁く。その言葉に賢は羞恥の表情を見せた。
指を動かしながら。クチュクチュと粘着質な音が僕と賢以外、誰もいない寝室に響く。白い液体が、賢の太股を伝い、流れた。
「あはぁぁぁん・・・。」
次第に賢の声は痛みの喘ぎから遠ざかっていく。僕の指から快楽が導き出され・・・。
「やぁぁぁん・・・。」
「はぁぁん・・・。」
「あぁぁん・・・。」
「いい声で鳴けるじゃない。淫乱賢。」
「やだぁぁ・・・。」
「ご褒美だよ。」
僕は、賢に覆い被さり、賢の中に入っていく。
「やぁぁぁぁん・・・。」
賢は僕が入るやいなや、異物感であろう、声が大きくなった。
「やだぁぁぁん・・・。」
僕達のそこは繋がり、お互いの液体が交じり合い、布団に落ちた。
「はぁ・・・。」
僕は、賢の中で動いた。そして、賢の体が過敏に反応するように仕向ける。
「あはぁぁ・・・。」
「あぁぁん。」
「もっと聞かせてよ。」
僕は、賢のしなやかな肉体に溺れていく。賢の愛らしい泣き声に溺れていく。賢の全てに溺れていく。「愛している」という気持ちが溢れ出して止まらない。賢の身体だけを手に入れてしまったことへの空しさが込み上げる。
ココロガホシイ。
僕は賢を抱きしめる。僕は賢を泣かせることができないくせに、この期に及んで賢に振り向いて欲しい、賢に見て欲しかった。過ぎた願いであることは分かっている。あまりにもムシが良すぎる事も分かっている。だけど・・・。
「賢、愛してる・・・。」
僕は、ついに口にする。初めて賢に対して明かす、本心。賢は聞いていないだろう。でも、口にしたかった。口にするくらいならいいだろう。そう、考えていた時だった。
「た、かいし君・・・。それ、本当。」
賢は息も絶え絶えになりながら、口を開いた。僕は、ハッとした。賢は聞いていた。
「高石君、僕のこと嫌ってると思って・・・。」
震えながら言う賢を僕は黙って抱きしめる。
「もう、一回、言って。」
僕は困惑した。思いが通じたこと、そして、今まで、自分が賢にしてしまったことを考えれば、僕は、賢に愛を貰える資格なんかないということ・・・。それでも・・・。
「賢、愛してる・・・。」
僕は静かに繰り返す。
「高石君、僕の身体だけが目的だと思ってたから・・・。」
「ずっと、好きだった。」
無意味なプライドが音を立てて崩れていく。僕は解き放たれる。賢によって。自由な世界へ・・・。檻から抜け出す。背中に大きな羽をつけて。
僕は賢になるべく、優しく、唇を重ねる。賢も今度は逃げずに舌を絡めてくる。そのまま、僕達は再び、繋がり、お互いの身体の存在を確かめ合う。
「やぁぁん・・・。」
賢は可愛らしい声で鳴く。
「やぁぁぁぁん・・・。」
「あはぁぁぁん・・・。」
賢がいくらか嬌声を上げて、僕達は果てる。
僕は夢を見た。どんな夢だったかよく分からないけど、賢がいた。そして隣にも賢は可愛らしい寝息をたてて眠っている。