『yami』

選ばれし子どもたちはデジモンカイザーによって破壊されたデジタルワールドの復興作業に来ていた。勿論、当の本人一乗寺賢も仲間に加わり。

キリが良いところで一息入れる。

賢は、ふと、ワームモンを連れ、仲間から離れた場所に座っていた。

「賢ちゃん、どうして、みんなと休憩しないの?」

ワームモンは賢を見上げて言った。

「僕なんかが彼らの仲間になっていいのかなって。」

「また、そんなこと言って。」

「見てご覧。ワームモン、このデジタルワールドを。あの多くの黒い塔、そして、壊れてしまった建物や自然を。」

「賢ちゃん・・・。」

ワームモンは神妙な顔つきで賢を見上げた。

「全部、全部・・・。」

賢の声は震え始めた。

「賢ちゃん、それ以上言わないで。賢ちゃんは今、こうして頑張ってるじゃない。」

「僕がやったんだ。」

賢の言葉を続けたのは賢本人ではなかった。

後ろから低く笑う声が聞こえた。

「高石君・・・。」

「何がおかしいんだ。」

ワームモンは賢を庇うように言った。ワームモンも高石タケルが賢に対してあまり良い感情を持ち合せていないのは分かってはいた。そして、それは、賢自身が撒いてしまった種であることも十分承知していた。だが、それでも、ワームモンは賢を庇った。それは、賢が自分にとって、かけがえのないパートナーだから。一番大切な存在であるから。

「君まで怖い顔して。大丈夫。相談に乗ってあげようって言ってんだよ。一乗寺君のね。」

そう言って、タケルは青い瞳を細める。

「ちょっと、二人だけで話がしたいんだけど、いいかな。」

タケルの申し出に賢は頷く。

「賢ちゃん・・・。」

ワームモンは心配そうに賢を見つめた。正直、タケルが本当に賢の相談に乗るか、疑問を感じていた。大輔ならともかく、タケルは決して、賢を受け入れているわけではない。ワームモンはそれだけは分かっていた。

「大丈夫。だから、一人で行かせて。ねっ。」

賢はワームモンに微笑んでみせた。こういう時の賢は何を言っても聞かない。ワームモンは知っていた。

「分かったよ。僕は賢ちゃんを信じる。」

「じゃあ、お許しも出たことだし、行こうか。」

賢はタケルに頷き、二人は、ワームモンを置いて、その場を離れた。

二人は少しの間、黙ったまま、歩いていた。

「随分と大切にされてるんだね。」

「えっ?」

「とぼけることないじゃない。というか、僕が信用されてないんだろうね。」

「そんな・・。」

タケルの予想もしていなかった発言に賢は戸惑う。というか、タケルが何を言ったとしても賢が予想していたという台詞はないのだが。

「ここに座ろうか。」

そう言ってタケルは人間二人が座れるくらいの丸太に腰掛けた。タケルのあまりに、何事もなかったかのような、表情に賢は戸惑いを隠せず、立ったままだった。

「そこで立ってられても困るんだけど。」

タケルは苦笑して言った。

「何で、僕を呼び出したの?」

賢は吐き出すように言った。

「やだなぁ。怖い顔して。とにかく座りなよ。」

賢は頷き、タケルの隣に座る。

「で、君は苦しんでるんだ。」

タケルの問いかけに賢は頷くだけであった。

「デジタルワールドの為に?それとも、自分の為に?」

後半の言葉の時、タケルは僅かに唇を歪ませた。

「分からない・・・。自分の為、かもしれない・・・。でも、それだけじゃない、と思う・・・。」

「楽しい?」

「は?」

「そうやって、大輔君や皆の同情を買うのって楽しいのって聞いてるの。」

「僕は、そんなつもりじゃ・・・。」

「じゃあ、どんなつもりさ。」

「僕は・・・。」

「僕は?」

タケルは薄く笑みを浮かべながら賢の顔を覗き込んだ。賢はタケルの賢の罪の全てを知りすぎた、あまりに青すぎる瞳に顔を強張らせた。自分の罪は認めていた。だが・・・。

「そうだ、面白い遊び、知ってるんだけど。」

「あそ、び?」

「そう、付き合って。」

タケルは、そう言いながら賢の制服の釦に手を掛けた。

「遊びって、まさか・・・。」

「そうだよ。何か不都合でも?」

「そんな遊び、したくない。君は、どうして、何のつもりで僕を呼び出したんだ。」

賢は声を荒げて言った。

「どうせ、同情買いたいんなら、もっとそれらしいシチュエーションを作ってあげようと思ってね。」

そう言って、クスリとタケルは笑った。

「ワームモンを呼ぶ?スティングモンに進化して助けてくれるんじゃない?」

冷たい笑みを浮かべ、タケル、賢を地に押し倒し、抑え付けた。

「いやだ。」

賢は死もの狂いで抵抗した。何で自分がこんなことをされているのか、分からなかった。タケルの行為の意味が分からなかった。分からないのにこんなことはされたくない。例え、自分が汚れた罪を背負っていたとしても嫌だった。

「やめて。」

しかし、細い筈のタケルの腕は見た目に関わらず、力があり、難なく抵抗する賢の腕をねじ伏せ、動けない様にした。

それから、タケルは、器用に賢の制服のベルトを抜き取り、両手首を後ろ手に縛った。

そして、賢の震える唇に自分の唇を押し当てた。舌の侵入拒む歯を力ずくで割り、舌を侵入させ、賢の口内を掻き混ぜる。

「ふっ・・・。」

賢は、目に涙を溜めながらも、首を横に振った。しかし、その抵抗も空しく、腰がガクガク揺れているのを感じられ、抵抗が鈍くなっていき、次第にタケルの思うがままになっていた。

鈍い音を立ててタケルは唇を離してやる。

賢は、ケホケホと咳き込む。しかし、もはや、立ち上がることもできず、身体が言うことを聞かなかった。

「どう、して、こん、なこと・・・。」

「どうしてって、さっき言った通りだよ。」

「嫌だ。ふざけてる。こんなこと。」

「ふざけてる?そうかな?君は悲劇の主人公になりたがってるように見えたから、してあげてるんじゃない。」

「違う・・。違う・・。」

賢の否定の声など構わず、タケルは、外しかけた釦を全て外し、舌を這わせた。

「やっ・・。こんなの、やだ・・。」

「ねぇ、こんなことしちゃったら結構感じちゃうんじゃない?」

そう言って、胸の突起している部分を鈍い音を立てて噛む。

「つっ・・。」

奇妙な感覚に賢は顔をしかめた。

「ホント、気持ち良さそうだね。これじゃあ、悲劇の主人公になんてなれないんじゃない。」

高石はクスクス笑った。

唇をそのまま、這わせたまま、手は太股へと伸びる。

「やだっ。」

「ここまで来て勿体ぶったって意味ないんじゃない。」

「いやだ・・。」

「いやだ・・。」

しかし、その台詞も太股が愛撫されるに従い、次第力ないものと化していった。そして、喘ぎに似たものに変っていく。

「やだぁ・・・。」

「はぁ・・・。」

そして、手の愛撫は次第にまた、上へ上がっていき、その奥に滑らせるように入っていく。

「そこ、はぁ・・。」

「結構、濡れてるじゃない。最低。」

そう言ってタケルは笑ってみせた。

「今入れたら、確実に入るよね。」

「いや、入れないでっ・・。」

賢の声も虚しく、タケルはそこに指を入れる。

淫らな音をたてて指は奥まで入り込んで行く。それが、賢にはどこか、グロテスクな印象を与え、耳を塞ぎたい気分になっていた。

「いたぁ・・。」

ズブズブとタケルの指は賢の中をこじ開けるように侵入していった。

「やぁぁぁ・・・。」

「あぁぁぁ・・・。」

痛い。痛い。

しかし、タケルは容赦なく賢の中を指で貫く。

次第に、痛みすら奪われていく感覚。

「やぁぁぁん・・・。」

「あはぁぁぁん・・。」

「ほら、良い声で鳴いてる。」

タケルは賢の耳元で囁いた。

”もうどうでもいい・・。”

そう思った瞬間だった。

先程を上回る痛みが賢を襲う。

タケル自身が賢の中に入ってきた瞬間だった。

「やぁぁぁぁ・・・。」

タケルは腰を上下に動かし、賢を追い込んで行く。

「やだぁぁ・・。」

「あはぁぁぁ・・。」

痛みと言葉では言い尽くせない感覚で賢の意識は失われていった。

どうして自分は人にこんなところまで触れられなければならないのか。そうまでして、僕は罪を償わなければならないのだろうか。デジタルワールドを復興するだけでその罪は許されないとは分かってはいた。別に許して貰いたいなどとも思わなかった。どう足掻いても許される罪ではないのだから・・。

だったら・・。

不意に、ワームモンの、大輔達の笑顔が目の前に飛び込んでくる。

(僕は、誰かに、甘えていた?)

大輔やワームモンが自分を責めないことにどこか甘んじていた、自分があったことに気付く、賢。

「最低、だ・・。」

タケルには聞こえない様に賢は呟く。

(僕は自分だけが苦しいと思ってた・・。)

(自分だけが・・。)

タケルの言った意味がやっと分かった。

(僕は、何も分かってはいなかったんだ・・。自分だけが悲劇の主人公を演じることで、楽をしようとしていた・・・。)

(そして、自分の闇をひけらかしていたんだ・・・。)

賢は、タケルに犯されながらも自分という生き物があまりに卑しく、黒く、映る。

気がつくと、タケルがあの、薄笑いを浮かべながら賢を見下ろしていた。

「君がここまで淫乱だったとはね。ほら。」

そう言いながら、その場に落ちていた白い液体をタケルは賢に見せた。

「それは?」

「君の体内から出たものだよ・・。」

賢は、目を背けた。

「クク。悲劇の主人公になる筈がただの淫乱賢君になっちゃったね。」

「ハハハ。クク。ククク。」

「そうさ、その程度で自分は償ってますって顔されちゃ困るんだよ。その程度で・・。」

「僕は何一つ許しちゃいない。僕は君に好意なんて抱いていない。むしろおぞましい。そうだよ、君の中の闇がおぞましいんだよ。僕と似てるんだよ。そして、君はそれをあたかもひけらかすようにするんだ。だから余計おぞましいんだよ。」

そう言ってタケルは笑い続けた。

”僕達は、死を見た。

僕達は、失った。

僕達は似ていた。

僕達は同じ闇を持っていた。

同じ、深い闇を・・・。

それは、何人たりとも踏み込めない、深い闇を・・。”