歪み

 賢とワームモンは、なぜか、デジタルワールドでもない、現実世界でもないところ迷っていた。デジタルワールドにいこうとゲートを開いたのだが、別の世界に出てしまったようだ。そこは、ひたすら霧で覆われている世界だった。

「賢ちゃん、ここ、どこなのかわかる?」

「分からない、現実世界ではないし、かといってデジタルワールドでもない。」

「一乗寺君。」

霧の向こう側から声がする。

「誰?」

「行ってみよう、賢ちゃん。」

賢とワームモンは声のする方へ走っていった。

声の主は二人が知っている人物だった。

「高石く、ん?」

「待ってたよ。」

タケルはにっこり笑った。

「君はここがどこだか分かるの?」

「まあね。」

「どこ…?」

「ここはね、デジタルワールドと現実世界の間にできた世界。ここではデジタルワールドみたいに思ったことが具現化する世界なんだよ。」

タケルはクスクス笑った。

「僕が望んだ世界?」

「やだなぁ。これは僕の思念。」

「何で…。君はこんなこと…。」

唖然とする賢をタケルが抱き上げる。

「何をするんだ。」

「賢ちゃんを返せ。」

ワームモンがタケルに食い下がる。

「君は現実世界に帰っててよ。あとで彼は届けるから。」

「賢ちゃん、賢ちゃ〜ん。」

 

 

 

 

賢が連れてこられた場所は暗い部屋だった。

「ここは…?」

「目が覚めたの。」

タケルが賢の顔を覗き込む。

「この世界は君が造ったの?なぜ…。」

「そうだね、だったら君は僕に逆らえないんだよ。」

タケルは言いながら賢の制服のボタンを外しはじめる。

「僕、君に少し興味があったんだ。」

「何をしてるんだ。」

タケルはボタンを外しながら、賢のうなじに唇を這わせる。

「やめろ…。いやだ…。」

「ふーん、でも僕に逆らえないよ、この世界では。」

さらにタケルは手を衣服の中に入れ、胸元を弄り、刺激を与えた。

「やっ…。」

「好きなんでしょ…。こういうの…。」

「違…。」

「違うの?」

タケルはクスッと笑う。

「どうして僕なんだ…。」

「だから興味があるって言ったでしょ。」

納得いかず、言葉を発する賢の唇をタケルの唇が乱暴に押さえつける。

「ん、ん…。」

賢は唇を離そうとする。しかし、タケルはそののまま舌を入れ、賢の口内を掻き混ぜる。賢の目には涙がたまっていた。

どうして、こんなことになったのか…。分からない…。今はただ、逃れたい…。しかし、タケルからは逃げられないことは感じ取っていた。彼は決して逃がしてはくれない。賢は感じた。

 賢は力ずくで唇を離し、口を開いた。

「ワ、ワームモンは?」

「彼には、現実世界に帰ってもらったよ。だって、邪魔だったから…。」

「やだなぁ…。誰も助けにこれないって…。」

口調こそ普段どおりだが明らかにタケルはいつもと違う…。

「さてと…。」

タケルは賢のスカートの下に手を侵入させ、太股に触る。

「つっ…。」

「へぇ、君って案外感じやすいんだ…。」

「よせ…。」

賢の顔は脅えていた。これからされること、薄々と分かる…。自分がどうなるのか。しかし、逃げることはできない。

賢の言葉を無視してタケルは、堅くなったその部分を探り当てる。

ビクッ…。

その部分をタケルは手で、弄び、刺激する。その度白い液体が賢の太股にかかる。

「やっ…。」

賢は恥じらいで真っ赤になった。

「実は誰かにしてもらいたかったんでしょ。」

「違…。」

「違わない…。」

言ってタケルはカッターでスカートを引き裂き、まだ堅い賢の中に入ってくる。

「痛っ…。」

さらに奥まで…。

「うわぁぁぁ…。やぁぁぁ…。」

賢はあまりの激痛に悲鳴を上げる。

タケルは賢を気遣うことはせず、そのまま、腰を動かし刺激をさらに激しく与える。飛び散る液体…。賢の目からはとめどなく涙が溢れる…。痛み、恐怖、様々な負の感情が賢の頭のなかをぐるぐる巡る…。そして、だんだんその感情も薄れていき、自然と腰が動いていた。そのとき、タケルが突然抜いた。

 激痛が終わったにもかかわらず、なぜか感じるのは安堵感ではなく、虚無感だった。虚っぽ、物足りなさ…。それは、賢がタケルによって支配されてしまったことを示すものだった。タケルはそのために抜いた?

「どうしたの?抜いてあげたんだよ。」

「うん…。」

賢は虚ろな返事をする。

「なにか不満?」

タケルは賢が欲するの知っていて聞いた。賢が口にしたくないこと…。

「してほしいことがあるなら言いなよ。」

「別に…。」

だんだん抜かれた部分が虚無感で疼いてきた。欲しい…。穴を埋めたい…。不覚だった。頭では求めたくなくても身体は求めている…。言いたくない…。求めたくない。求めてしまうときっと、自分が完全に壊れてしまう…。

タケルは微笑む。

「欲しいんでしょ…。」

『欲しい』と言いたかった、でも言いたくない。身体は欲しがってるのに頭は欲しくない。奇妙な矛盾…。

 タケルは、あえて屈服させるために満たしてやらない。タケルは賢を苛めかったのだ。

「言いなよ…。でないとおあずけ。」

どうせなら、この場から逃げ出したい。しかし腰が立たない。

「しい…。」

「えっ、何?ちゃんと言わなきゃ分からないよ。」

「欲しい…。」

賢は顔面が真っ赤になった。そして、自分が今口にしたことを後悔した。いくら生理的な衝動とはいえ、自分が情けない…。

「よろしい。」

タケルはニッコリ笑うと再び賢の中に入ってきた。

「あっ…。やぁぁぁ。」

賢はうめいた。今度は痛みからではなかった。別の、奇妙で不思議な感情…。逃げたい、逃げられない…。賢は感じてしまう自分を嫌悪しながらも身体はタケルの行為にのめりこむ。タケルは疼く賢の部分をつきまくる。

「やぁぁぁぁ…。」

だんだん意識が薄れていく…。何も考えられなくなる…。自分が何なのか分からなくなる…。

 

 

 

 

どのくらいたったのだろう。

「愉しかったよ、一乗寺君。」

気がつく、となりにタケルがいた。

ここは…。タケルが創り出した思念の世界…。しかし、実在の世界…。デジタルワールドと似た世界…。

「逃げられないよ…。これからもずっと…。」

「帰らないと…。現実へ…。」

「僕が簡単に帰すと思う?」

言いながら、タケルは賢の太股に手を触れていた。

「あっ…。何を…。」

「何って、君にはまだ用がある。飽きるまで帰らせない…。」

タケルは賢を押し倒す。

そしてそのまま…。

「クク、君にはボロボロになってもらうよ…。こんなじゃすまさない。」

タケルの心の中には完全に闇が宿っていた。闇を憎むあまり、闇を心に宿してしまったのだ。今、賢は、はっきりとそれが分かった。

彼は僕を完全に壊してしまうまで逃がしてはくれないだろう…。

何度も繰り返される淫らな行為…。