「賢ちゃん、お友達がお見舞いにきてくれたのよ。高石君。」
高石・・・。
「わ、分かった・・・。」
「高石君、ありがとう、ゆっくりしていってね。あとでお茶持ってくるわね。お友達が来てくれたら賢ちゃんも元気になるわ。」
ママは高石を僕の部屋に通して、出ていった。
「どうして、君が・・・。」
「僕が来たら”元気に”、か。」
高石は笑う。
「顔に出てるよ。”帰れ”ってね。」
「まだ、体調、悪いから・・・。」
「賢ちゃん、入るわよ。」
「高石君、紅茶でよかったかしら。」
「すみません、お構いなく。」
そう言って愛想良く笑う、高石。あの冷たい表情は僕にしか見せない。彼は多分、明るい”優等生”でとおっているのだろう。
「いいのよ。ゆっくりしてね。」
「ありがとうございます。」
ママは部屋を出る。
高石の目はまた、冷たく僕を見据える。
「これね、僕の処世術。」
高石は言った。
「いつ身についたのか、あんまり覚えてないけど・・・。」
「みんな、君のこと優しいって思ってるよ。」
「君以外はね。」
「どうして、僕なの?」
「さしずめ、つけいりやすかったのかな。」
言いながら、僕の身体に触れてくる高石。
「やめて・・・。」
高石はそのまま、僕のうなじに唇を這わせる。
「やぁ・・・。」
「ちゃんと、眠らないから、倒れちゃうんだよ。」
「なんで・・・?そんなこと・・・。」
「眠るのがのが怖いの?」
高石はすべて知っている。というか、僕の全てを見透かしている。凍てついた青い瞳で・・・。
「やめろ・・・。」
「今日は、お母さんいるんだよね、ばれちゃってもいいの?」
「やぁだ・・・。」
高石はパジャマのズボンに手を入れる。
「あ・・・。」
「こうしたら、楽になれるんだよね、一乗寺賢君。」
「違う・・・。」
「だって、いつも楽しそうじゃない・・・。」
僕は、声を漏らすのをこらえる。
「声、出してみたら、助けにきてくれるんじゃない?ママがね。」
高石は笑った。勿論彼は知っている。僕が絶対そんなことできないと・・・。
僕の中で高石の指が動く。その動きが僕に奇妙な疼きと嫌な快感を与える。
「や・・・。」
「静かにしないと、聞こえちゃうよ。」
「そんなに気持ちいいの?」
「違・・・。」
「君は醜いね。ほんと・・・。」
醜い・・・。聞いたような台詞・・・。じゃあ、これは夢・・・。
「僕の夢に脅えてたの?それでずっと寝てなかったとか・・・。」
高石は知っていた。僕の睡眠不足の理由まで・・・。
「でもね、僕と君は似てるんだよ。きっとね。」
僕と高石が似てる?その時の高石の目は僕を冷たく見据えたあの”目”でなく、悲痛なまでに寂しい目だった。
なんで・・・。でも少しだけ、分かる気がする。
多分彼が背負っているモノは僕と似てる気がする・・・。
ここ数ヶ月、僕達の行為は傷の舐め会いだったのだろうか・・・。
僕は高石を本能的に求めている・・・。でもこれはイケナイコト・・・。だから僕はミトメタクナイ。
「やめ、て・・・。」
「どうして、君が求めていることだよ。」
高石は僕の中を愛撫する。
「やぁん・・・。」
「ほら、いい声・・・。でもさ、隣に聞こえるよ。」
言って高石は僕の口を塞ぐ。
唇で・・・。
僕は高石の唇をから逃げようとする。
「あの、ママが・・・。」
「僕が上手く隠せないと思ってるの?」
そう、高石なら隠すだろう。何事もなかったかのように・・・。僕が誰の助けも求める事ができないように・・・。
「少し溜まってるんじゃない?」
言いながら僕の秘部を探りあて、指を器用に動かす。
「溜まってなんか・・・。」
「でも君のここは正直だよ。」
「いや・・・。」
涙が止まらない。
「僕が処理してあげようって言ってるんだよ。」
「どうせ、自分でこんなことできないでしょ。」
「やめて・・・。」
「どうして、こんなに気持ち良さそうなのに・・・。」
「それとも自分でやりたいわけ?それも面白そうだけど。」
高石は笑う。
指を動かしながら・・・。
「やぁぁん・・・。」
僕のそこからはいやらしい音が響く。
「ほら見てよ、こんなの。」
「いやぁ・・・。」
「何が?言いなよ。」
口に出せる筈がないのに・・・。
高石に奥まで開かれ、触れられ、イカサレル。その繰り返し・・・。
これも夢・・・。目が覚めれば何も起こってなくて、高石もいなくて・・・。僕は穢れてなくて・・・。
でもこの生々しさは・・・。
この疼きは・・・。
この心の痛みはどこから来るのだろう。
これは夢魔の仕業なのか・・・。