長柄武器

鉾、槍、薙刀など、長い柄に穂先の付いた武器。
刀剣など短兵器の間合いの外から攻撃できる分、有利な武器と言える。

大身槍(おおみやり)
日本で使われている槍のうち、穂先が2尺(60cm)を超えるもの。
穂先が大きい分、柄は通常の素槍よりは短くなっている。
通常の槍の倍近い重さを持つので操作上不利だが、その分威力は勝る。

戈(か)
柄に対して垂直に向いた刃を持つ、中国の長柄武器。
戦車で戦うために使われた武器で、相手の戦車兵に向かって打ち込んだり引っ掛けたりするように使う。
古代の殷、周王朝の時代は戦車が主力だったため、矛よりも重宝した武器だという。
しかし漢王朝の頃には戦車自体が廃れており、そのために使われなくなった。

鎌槍(かまやり)
穂先の根元近くに鎌状の刃が付いた槍。
鎌の部分で相手の武器を受け止めたり、斬りつけることが出来るので、素槍よりもテクニック面で有利な武器と言える。
また、これらの技術を駆使するために、柄は素槍に比べて短く出来ている。
柄の断面は桃型になっており、握っただけでも鎌の向きがわかるように出来ている。

ギザルム
「二つの斧と一つの剣を有した」と言われる長柄武器。
細長く内側に曲がった刃と、その背中に分岐した刺が付いている。
相手を突くだけでなく、引き倒す、なぎ払うといった戦法も使える。
鎌で草を刈るように使えたことから、農民兵にも簡単に使える槍だったと言う。

グレイヴ
ファルシオンのような、片刃で三日月状の穂先を持った長柄武器。
突くことも出来なくはないが、刃を一杯に使って振り回すのが、主な使い方である。
農業器具として使われた大鎌が武器として転用されたものが発展して出来た武器だと言う。

戟(げき)
矛と戈を組み合わせたような武器。付くための「刺(し)」の下に「援(えん)」と呼ばれる横向きの刃が付いている。
両手用の長戟と、片手用の手戟の二種類があるが、基本的な使い方は共通している。
刺の部分で敵を突き刺し、援の部分で引っ掛けるというのが主な使い方である。
戦国時代から晋王朝までは主力武器として使われていたが、性能的に中途半端でもあったという。
宋王朝の頃には戟といえば方天戟の事を指すようになり、本来の戟は儀式用のものとなっていった。

槊(さく)
中国で使われた、騎兵用の長槍。
長く重いために振り回すことは出来なかったので、片手で固定して馬の突進力を利用して突いたという。
また、馬上で持ったときに安定させるため、肩にかけるための紐が付いているものもある。

二郎刀(じろうとう)
先端が3つに分かれた両刃の穂先を持つ武器。「三尖両刃刀(さんせんりょうじんとう)」とも言う。
この名前で呼ばれるのは『封神演義』や『西遊記』で英雄神・二郎真君(じろうしんくん)の武器として登場するからである。
主に斬るための武器で、真上もしくは斜め上から振り下ろすように使う。

スピア
長い柄と鋭い穂先を持った武器。要するに槍である。
長さで分類され、1.2〜2mのものを「ショートスピア」、2〜3mのものを「ロングスピア」と呼ぶ。
長柄武器の中でも初期のものであり、穂先に余計な刃や横手は付いていない。
中世以降は他の様々な長柄武器に分化していき、スピア自体は廃れていってしまった。
とはいえ、これこそが長柄武器の基本であることに変わりは無い。

素槍(すやり)
日本で使われている、一般的な槍。直槍(すぐやり)とも言う。
穂先が直線形で枝や横手が無く、全体がすっきりした棒状のものを言う。
一般的といっても流派によってそれぞれ形状が違い、細部に至るまで細かい決まりがあるという。
柄の長さは短いもので120〜180cm、一般的には260cm程度のものが多い。
矛が主に片手で使われるのに対して、こちらは基本的に両手で用いる。

青龍戟(せいりゅうげき)
槍のような穂先を持ち、片方の側面に月牙が付いている武器。「戟刀(げきとう)」とも呼ばれる。
使い方は似たような形状の方天戟と特に変わりは無く、穂先で突き月牙で斬るといった寸法である。
また、月牙は突いたときに穂先が深く刺さりすぎないようにするという役割も持っている。
『三国志演義』における呂布の武器・「方天画戟(ほうてんがげき)」は、名前の割にはこちらの形状で描かれることが多い。

槍(そう)
ここでいう槍とは、中国で使われた槍の事を指す。
穂先がシンプルな直線型で、主に木や竹で作られた長い柄を持つことは、他の国の槍とそう違いは無い。
柄が鉄で作られたものは鉄槍(てっそう)と呼ばれ、重く扱いにくい分、破壊力では勝る。
また、中国の槍には大きな特徴があり、穂先の下に纓(えい)と呼ばれる紐の束が付いている。
これは血が穂先から手元に流れるのを防ぐためにあるとも、演武などで見栄えを良くするための飾りとも言われている。

大刀(だいとう)
幅の広い、反った片刃の刀身をもつ長柄武器。
斬るための武器だが刀身は重く、その重量を生かして叩き斬るように使う。
斬る事が出来なくても、重さによる打撃力で鎧の上からでも十分な威力になったという。
『三国志演義』における関羽の武器・「青龍偃月刀(せいりゅうえんげつとう)」も大刀の一種で、最も重いものである。
ただし、偃月刀は実戦用ではなく、演武や訓練用だったという。

蛇矛(だぼう)
矛の一種で、蛇がうねったような波状の刃を持っている。
同様に波状の刃を持つフランベルジュなんかもそうだが、このような刃を持っているのは、刺したときに傷口を広げるためである。
『三国志演義』における、張飛の武器としても知られている。

トライデント
3本に分かれた穂先を持つ槍。ギリシャ神話における海神・ポセイドンの武器としても知られている。
本来は農具や魚捕りの銛であり、正規軍の武器ではなく農民兵やゲリラの武器である。
ローマの剣闘士にも使われた武器で、右手にトライデント、左手に網というスタイルで使われていた。
3本の穂先で突かれた傷は、治りが遅かったと言われている。

長柄槍(ながえやり)
日本の戦国時代に使われた、長さ3間(5.4m)程度と言う長い槍。
雑兵が使った武器で、兵の弱い家ほど柄の長いものを用いたと言う。
この武器は立てて構え、上から一斉に振り下ろすと言うのが主な戦法である。
また、長柄を何列かに並べて先を交錯させて前進するという「槍衾」という戦法もある。
この武器の登場により、足軽が戦場の主力になって行ったという。

長巻(ながまき)
薙刀に似た形状を持つ武器。ただし、こちらの方が柄が短く刃の部分が長い。
また、薙刀との違いとして、鍔も付いている。
非力な者が野太刀を使う際、刃の部分に布や縄を巻きつけて、薙刀代わりに振り回したのが元になっている。
そこから、太刀に長い柄を付けるようになり、最終的には刃の部分も専用のものが作られるようになっていった。
刃が長く重いために使いにくいが、使いこなせば威力は相当のものである。

薙刀(なぎなた)
「長刀」とも書かれるように、長く反った刃を持つ長柄武器。
武術としては槍、剣、棒を兼ねるものと言われ、突き斬りだけでなく、打撃でも有効な武器である。
平安時代に直刀から湾刀である日本刀が出来たように、この時期に鉾から変わって行ったと考えられている。
源平の時代から南北朝時代までは、主力の長柄武器として活躍していた。
しかし、戦国時代になると長柄武器の主力は槍となり、主要な武器ではなくなっていく。
さらに江戸時代以降は、薙刀は武家の女性の護身術として用いられるようになった。

パイク
歩兵が使う対騎兵用の槍。
5〜7mと非常に長く、騎兵だけでなく歩兵相手にも十分な効果を持つ。
パイク兵は、他の武器を持つ歩兵や騎兵の援護役として、優秀な役割を持っていたという。

パルチザン
幅の広い、両刃の穂先を持つ槍。
刺突目的のスピアや、斬る目的のグレイヴと違い、両方の目的で使うことが出来る。
さらにハルバードのように突きと斬りの部分が分かれていないため、シンプルで扱いやすい。
ゲリラ部隊の名前から取られた武器だけに、当初はゲリラが使っていたものだが、後に正規軍も使うようになったという。

ハルバード
スピアの穂の横に、斧状の刃が付いた長柄武器。日本語では「斧槍」「鉾槍」と呼ばれる。
槍の部分は突きに、斧の部分は斬り付ける攻撃に対応している。
また、斧の部分の反対側には鉤爪が付いており、これによって相手を引き倒す事も可能である。
打撃力も高く、上から振り下ろせば鎧の上からでも十分なダメージを与えられる。

矛(ぼう)
尖った幅の広い両刃の穂先を持つ武器で、槍の前身にあたる。
槍同様刺突用の武器で、直線的に繰り出して相手を突き刺すように使う。
穂先はソケット状になっており、竹か木製の柄に差し込んで釘などで固定する方法が取られている。
日本にも輸出され、平安時代まではメインの長柄武器として使われていた。

方天戟(ほうてんげき)
槍のような穂先の両側面に「月牙(げつが)」と呼ばれる三日月状の刃をつけた武器。
名前こそ「戟」だが、戟というよりも槍の発展系武器である。
とはいえ使い方は戟に似ており、月牙で斬ったり引っ掛けたりという使い方ができる。
明王朝の時代には本来の戟の形が忘れられてしまい、『三国志演義』などに出てくる戟はこの方天戟になっている。

ポールアクス
穂先が斧の刃のようになっている長柄武器。
突くための切っ先も付いており、突き斬りの両方に対応している点では、ハルバードと同様の武器とも言える。
ハルバードとの大きな形状の違いとして、こちらの柄には鍔がついている。
片手で扱える代物ではなかったので、歩兵用の武器として普及していった。

ランス
騎兵用の槍。典型的なランスは、三角錐状の形をしている。
場合によっては、バンプレートと呼ばれる笠状の鍔が付いており、手元を保護する役割を果たしている。
使用法としては、片手で持ち馬の突進力を利用して突き立てるように使う。

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