刀剣類

ここでは、日本刀を除いた剣全般について紹介する。
広義的には全て「剣」でまとめられるが、片刃のものを「刀」、両刃のものを「剣」と区別する事もある。

エストック
錐状の刀身を持つ刺突専用の剣。刃がついていないので斬る事は出来ない。
レイピアより以前から存在した剣で、その威力は下手な板金鎧すら貫いたという。
それゆえ「メイルピアッシングソード(鎧を貫く剣)」という別名を持つ。
また、両手でも持てるように長い柄を持っている。

カトラス
船乗り達が用いた断ち切り用の剣。長さは50〜60cmと、やや短めである。
切っ先から刀身の1/3くらいまでは両刃で、断ち切り用とはいえ刺突にも適応した形になっている。
同様の形状で一般市民が狩りに用いた「ハンガー」という剣もある。

カッツバルゲル
ブロードソードの一種で、「喧嘩用」という意味を持つ。
実用性を追求した剣で、S字型に曲がった鍔を持っている。
ベルトに引っ掛けて持ち歩くために、このような、曲がった鍔を持っているという。

環頭大刀(かんとうたち)
古代日本で用いられた、片刃の直刀。柄頭に環状の装飾が付けられている事からこう呼ばれる。
この当時は日本でも盾を持って戦う戦法が用いられており、この剣も片手持ちである。
「たち」と言う読みは、そもそも「断ち切る」という意味から呼ばれるようになったもので、斬撃が主戦法として使われる。

グラディウス
古代ローマ時代に使われていた剣。ラテン語で「剣」と言う意味を持つ。
広義的にはこの時代に使われた剣全般だが、狭義的には歩兵用のものを指す。
主に刺突攻撃に使われた剣で、刀身は短く50〜70cmと言ったところである。
当時のローマ軍は密集隊形を取って戦っていたため、短い刀身の方が都合が良いためこのような寸法となっていた。

クレイモア
スコットランドの精鋭・ハイランダーが用いた両手剣で、「大きな剣」という意味を持つ。
シンプルな十字型の柄と鍔先についた輪飾りが特徴と言える。
鎧が重視されなくなった時代の剣で、重さよりも刃の切れ味で勝負するタイプの剣である。
そのため、薄く鋭い切れ味を持った刃を持っている。

サーベル
騎兵用の片手剣で、長い刀身をしている。
片刃の半曲刀タイプのものが一般的に考えられがちだが、世界中で使われただけに形状はさまざまである。
直刀タイプのものは刺突用、曲刀タイプは斬撃用、そして半曲刀タイプは突き斬りの両方に適応したものである。
ただし、使いやすさの問題から半曲刀タイプのものが多かったようだ。

シャムシール
英語読みだと「シミター」。日本では「三日月刀」とも呼ばれるペルシャの曲刀で、「ライオンの尻尾」という意味を持つ。
西洋におけるサーベルの原点ともなった剣で、斬り合いに非常に適した剣である。
そのシルエットは、イスラム圏の旗章としても用いられている。
かつてはペルシャでも直刀が用いられていたが、斬撃主体の戦法に適応するため、湾刀であるシャムシールができたという。

ショートソード
ロングソード同様、両刃で直身の剣。そのうち70〜80cm位の長さのものが、これに当てはまる。
ロングソードは馬上で斬る目的で使われることが多いが、こちらは主に歩兵が刺突用に用いた。
一般的に、白兵戦で便利な刀剣はこの寸法のものだという。

ショテル
エチオピアで使われている曲刀。S字状に湾曲した両刃の刀身をしており、中には鉤爪状に極端に湾曲したものも存在する。
実は実戦的な観点から作り出された剣で、横殴りに振り回すことで盾を避けて攻撃することを目的としている。
もちろん、刀身が湾曲していることから、通常の斬撃にも十分適している。
ただし、その独自な形状から鞘に納まらないため、相手に気付かれて効果が半減することも少なくないらしい。

スクラマサクス
北欧で使われてきた剣「サクス」のうち、長さ85〜100cmという大型のものを指す。
「短い剣」と言う意味を持ち、言うなれば北欧版ショートソードと言ったところだろうか。
形状としては片刃でまっすぐな峰を持ち、鋭い切っ先を持っている。
この武器が発展して、ファルシオンになったと考えられている。

スパタ
ローマの騎兵が使っていた剣。ギリシャ語で「つぼみ」という意味を持っている。
同じ古代ローマ時代のグラディウス同様、刺突用の剣だが、こちらの方が刀身は長い。
また、騎兵が片手で扱えるように軽く、細身に作られている。

ツーハンドソード
両刃の直剣のうち、長さ180cmを超える大型のもの。名前通り両手持ちの大剣である。
腰に差せる大きさではないので、背負うか手に持って持ち歩くことになる。
歩兵用の武器として使われたもので、バランスよく扱えるようにかなり長い柄を持っている。
扱うには、十分な腕力と敏捷性が要求される。

ツヴァイハンダー
ツーハンドソードのドイツ語読み。柄の部分に特徴があるため、あえて区別して呼ばれている。
他の両手剣よりも柄と刃の根元が長く、この刃根元の部分には刃がついていない。
この形状は、戦場で運搬する際に背負ったり紐をくくり付けて担ぐためのものである。
また戦闘の際は、刃根元を握って攻撃すれば攻撃力が上がり、防御時は手に対する攻撃をかわすのにも使われたという。

バスタードソード
片手半剣とも呼ばれる剣。つまり片手でも両手でも使える剣、ということである。
ロングソードよりも長くツーハンドソードよりは短い剣で、全長140cmといったところである。
普段は片手で戦い、ここぞという時には両手持ちで必殺の一撃を放つ、という戦法がとれる優れものである。
ただし攻撃力で優れている反面、防御面では劣るようだ。

パタ
まっすぐで両刃の刀身と、篭手状の柄を持つインドの剣。「ジャマダハル」の発展形と言われている。
手首が篭手の中で固定される形になるため使い方が難しく、攻撃に失敗すると自分の腕を痛める危険もある。
だが攻防一体の形状だけに、使いこなせば強力である。

ファルシオン
片刃の曲刀。長さ的にはショートソードと同じ位だが、こちらの方が重く作られている。
曲刀とはいえ日本刀などとは違い、峰の部分はまっすぐに出来ている。
刀身の短さと斬撃の威力から、乱戦時において有効な武器だったらしい。
こういった曲刀は中東から伝わったと考えられがちだが、峰がまっすぐな事から北欧の「スクラマサクス」が原点らしい。

フランベルジュ
波状の刀身を持つ両手剣。「火炎の形」という意味の通り、その刀身は炎をかたどったものである。
この形の刀身をもつ細身剣も存在し、「フランベルク」と呼ばれる。
波状の刃は傷口を広げる効果を持ち、外見に似合わず強烈な殺傷能力を誇る。
その装飾的な形状から、戦場から両手剣が消えた後も儀礼用に使われてきた。

ブロードソード
幅の広い、両刃の刀身を持つ剣。歩兵にも騎兵にも愛用された剣である。
その幅広の刀身を利用して、斬撃に使うのが主な戦法である。
ちなみに幅が広いと言っても極端に分厚かったわけではなく、実はロングソードなどとそう大した違いは無い。
と言うのもこの剣が登場したのが17世紀以降で、当時よく使われていたレイピアに比べて広いと言う意味だからだ。

朴刀(ぼくとう)
長く幅の広い片刃の刀身を持つ、中国の両手剣。両手用の武器である事から「双手帯(そうしゅたい)」とも呼ばれる。
長柄武器である「大刀」の柄を短くしたもので、大刀同様刃の重さを利用して叩き斬るように使う。
民間で大刀の所持が禁止されたために考案されたという話もあるように、軍隊より民間で使われることが多かった。
清王朝末期の太平天国の兵士が使ったことから「太平刀(たいへいとう)」という別名もある。

柳葉刀(りゅうようとう)
「呉鉤」と呼ばれる中国の曲刀の中でも、特によく知られた形もの。日本では俗に「青龍刀」と呼ばれることが多い。
その名の通り柳の葉に似た刀身を持ち、日本刀に比べると遥かに厚みがある。
柄の短い片手用の武器ではあるが重く、その重量を生かして斬りつけることで威力を発揮す。
ちなみに呉鉤には様々なバリエーションがあり、刃先がのこぎり状になっているものも存在する。

レイピア
刺突用に使われる細身の剣。刃がついているので、一応斬ることも出来る。
鎧の継ぎ目を突くために使ったと思われがちだが、レイピアが登場した頃に鎧は使われなくなっている。
それゆえに剣で防御し、反撃する「剣技」が考え出されるようになり、これがフェンシングの源流である。
また、右手にレイピア、左手にマインゴーシュという二刀流スタイルで使われることも多い。

ロングソード
全長80〜90cmの直身の両刃剣全般を指す。ただし長さとしては、95cmを超えることは無い。
この長さの剣は斬り突きの両方に対応できるが、主として斬る目的で使われる。
初期のロングソードはまだ鋼の無い時代だったので、焼入れをすることで強度を上げていた。
また、強度の補強のために厚い剣身をしていたという。
鋼が使われるようになると、全体的に細長い剣が作られるようになり、突きにも適応できる鋭い切っ先の物もつくられるようになった。
ロングソードはその形状が十字架に似ている事から、神聖な武器としても用いられた。

倭刀(わとう)
中国に輸出された日本刀のこと。形状は「日本刀」の項で説明しているので、ここでは割愛する。
宋王朝の時代から、日本刀は輸出されていたのだが、武器としてより美術品としてであった。
しかし、明王朝の頃に「倭寇」と呼ばれる海賊が日本刀を使って猛威を振るった事から、武器として注目されるようになった。
武器として取り入れられてからは、現地でも日本刀型の刀が作られるようになったという。
また、中国では日本と中国の剣法を組み合わせた、独自の剣法もあみ出されたという。

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