店主の独り言的なコラムです。暇つぶし程度にどうぞ(笑)

● 後天的味覚 ●

 後天的味覚(Acquired Taste / アクワイアード・テイスト)って聞いたことありますか?

 直訳すると「習い覚えた嗜好」と言いますが、人間であれば誰でも経験していることであり、幼い頃から備わっている先天性な味覚とは対極にある、繰り返すことによって美味しいと感じる味覚のことを刺す言葉です。

 先天性の味覚は、簡単に言うと生命の維持に欠かせない「甘み=エネルギー」や「塩分=人体の水分量を調節」である。

 後天性の味覚は、「苦味=毒」「酸味=腐敗」などを意味するもので、先天的に人間の防御システムに組み込まれているものである。

 つまり、多くの人が幼い頃ピーマンが食べられないのはある意味当然のことで、長い期間繰り返し食することにより、視覚、嗅覚、味わい的にも慣れが生じ、食しているうちに苦味以外の旨みに気付きますし、出来、不出来などの違いも理解しますし、それが安全であることも知り、それを見る、又は匂いを嗅ぐだけで「美味しそう!」と、思考する様になります。

 チーズを代表とする発酵食品系などは際たるものでしょ?(発酵と腐敗は話が長くなるので端折りますwww)


 では、お酒に関してはどうでしょうか?

 これまた幼い頃に経験していると思いますが、ビールの苦味は、「どうして大人はこれが美味しいと思うのか?」と、思った方も少なくないと思います。

 リキュール類やカクテル等は恐らく子供でも飲めるものが多いと思いますが、「酒精の強さ=刺激」は、やはり先天的な危険信号が発せられるでしょう。

 ウイスキーやブランデーに関しては、ざっくり言うと、刺激が強く、苦味と甘みのバランスにて成り立っており、本来の美味しさに辿り着く為には刺激と苦味の2重のハードルを越えなくてはなりません。

 ま〜、以上の様なことを理解していると、アルコールの性質を考え、水や氷、ジュースで割って刺激を抑えるとか、甘みを加える等々、多種多様な対策を考えることも可能っちゃ可能☆

 ちゃんと勉強しているプロ・バーテンダーなら、本当の美味しさまで、時間を費やしてでもキッチリ導いてくれると思います。


が、しかし、裏を返せば食したり飲む機会が少ないと、後天的味わいの物に関して言うと、どのようなものでも親しめないということにもなります・・。


 現在も「ウイスキーは苦手で・・」とか、「悪酔いするから・・」とか仰る方も多くいらっしゃいます。

 要因は上記以外にも、法的不備によるアルコールの質の低下や、アルコールに対して無知であることもあります(無知にさせられているとも言える)。

 出来れば、製造メーカーは拝金主義はそこそこに、正直に、自己を戒め、カスタマーへ説明を怠らず、素晴らしい現代食文化の一端であることを忘れず、低価格であっても本物のお酒をプライドを持ってリリースして頂きたいと切に願うばかりです。

 ちなみに、大抵の低価格国産ウイスキーは、いくら飲んでも本当のウイスキーの旨み、喜び、感動には絶対100%届きません!!(低価格国産ウイスキーは、未熟なウイスキー原酒+醸造用アルコール+カラメル+香料+水で出来てますが、メーカーは絶対公表しません。)

 ま、多少頭が痛くなろうが、二日酔いしようが、「酔えれば良いんだよ〜ん☆」「ハッピー☆」って方はその限りでは御座いません(笑)

● 初心者向けのお酒 ●

 さて、恐らくバーという形態において日常的に使われる言葉、「初心者向けのお酒」とはどのような物を指すかお分かりでしょうか?

 「高額で無い物」、「酒精の軽い物」、「余り複雑な味わいで無い物」、「過度な個性が無い物」等が想像される範疇だろうと思いますが、お客様が申し出られる場合は大抵「高額で無い物」と言うのが大半。ま、簡単に言うと「金銭的負担を強いられず」、「安くて美味い物」、そして一番難しい「出来ればサプライズ(非日常)を感ずる物」を飲みたいと言う訳です。

 プロ側も馬鹿では無いし、あくまでビジネスなので、当然狭い範疇で出来るだけ満足行く物をチョイスするのですが、ここで言いたい「初心者向けのお酒」を提供出来ているかと言うと、胸を張って断言出来るお店は少ないと思う。

 では、いったい「初心者向けのお酒」とはいかなる物なのだろうか!?

 結論から言うと、そう言ったお酒はありませんし、ルールも無いし、何を飲もうが飲む側の問題で、論じる自体ナンセンスなのですが、我々プロ・バーテンダーの仕事としては、飲まれる方の、「その日の体調」、「お酒遍歴」、「価値観や愛好度」等を加味した上、価格的にも味わい的にも満足頂き、充足感のある時間を提供するだけなのです。

 よって、どの様なユーザーに対しても一律であり、こちら側からのサービス自体は何の変わりも無いと言う訳。恐らく当店の様なバーへ行かれる方は経験されてると思いますが、初来店の際に根掘り葉掘り聞くのはその様な理由です。ちなみにヘビー・ユーザーの方に余りお聞きしないと言うのも色々な意味があり、「好みを理解している=信頼関係」を構築している過程で、「自尊心」、「向上心」を駆り立てたり、ステップアップする際のアドバイザー的な立場でのサービスとも言えるかと思います。

 また、確かに「ライトな物からヘビーな物へ」という味わう上でのセオリーは有りますが、初心者であっても、「美味い物は美味い!」というのが現実ですので、個々の中で価値観さえご理解頂ければ、初心者でも玄人でも、多少高額でも安価でも、個性があろうが無かろうが、満足という二文字にはひれ伏すしかないでしょう。

 ま、私共の仕事としては「価値観」をご理解頂くことが一番難しいし、本当に美味しいお酒に辿り着いて頂くには時間を要するのですがね・・・。

最後に、私達プロ・バーテンダー・・、いえいえ、少なくとも私は、超能力者じゃありませんし、映画やテレビ、小説、漫画の様には出来ないのです。ですから、色々聞いても嫌がらないで付き合って下さいね!100%の初心者のお酒提供しますよ! (*^ー゚)b

● 本物のお酒 ●

 このホーム・ページの冒頭にも「本物のお酒をキーワードに・・」とか書いておりますが、さて、「本物のお酒」とは如何なるものなのでしょう?

 「原料由来の香味が生きている」、「混ぜ物がない」、「人工的な加工がない」、など、他にも色々と想像されると思いますが、結論から言うと偽物のお酒というものはこの世に存在しません。

 なぜなら、「これは○○というカテゴリーのお酒」で、「原料はこれこれ」「添加物はこれだけ」「税率はこれ位」と、いうように、各国それぞれの法律に乗っ取り製造されているので、それを偽物とは呼べませんよね(国が保証している訳です)。

 しかし、歴史をさかのぼり、そのお酒のルーツを探って行くと、大抵・・「こんなものは元々入ってないゾ!」とか、「何でコレにコレが入ってんの?」とか、製造の簡素化、機械の導入、人的労働力の削減など、「しかたない」と思われることも、「なるほど」と納得することもありますが、幾つかの「?」キーワードも見つかります。

 無論、同レベルのものが作れるのなら、大量に素早く、人間の労働力を使わずに製造するに越したことはないのでしょうが、元来お酒というものは時間も労力もかかるものです。また、更に良い物を作ろうとすればする程、その時間も、労力も増大。しかも製造量は少なくなるというジレンマもあり、ここで言ってる「本物のお酒」は、その辺のコンビニで・・っていうような手軽さはハッキリ言って皆無ということになります。

 有り余る程の資金力と労働力があれば、それもまた可能かも知れませんが、どんな大企業でもリスクを伴うような賭けに出るようなことはまず無いし、仮に賭けに出るとしても、綿密なマーケッティングを行い、損して元取れ的なリスク回避の手段も講じるはず。要は、ほとんどの消費者には「本物のお酒」は届かず、大抵各国の法律スレスレのお酒を大量に飲まされると言うことになる訳です。

 さて、どうしたら本物に辿り着くのでしょう?

 当たり前かも知れませんが、一般の方はこれだけ身近にありながら、大抵お酒のことをよく知りません。また、ここまで読むと「本物=価格が高い」と思われるでしょう。しかし、数少ないながら、小さな酒蔵でコツコツ作ってる良心的なお酒もありますし、大企業の安価な商品群にも、ナチュラルで「これは!」と思わせる様な物もあります。ほんの少し、ちょっと勉強すれば、すぐそこに本物はあるのです。

 最後に、上記を踏まえ結論すると・・・、流通するお酒はすべて国が認めた本物ではあるが、お酒元来の見識からすると偽物と呼べなくもない物は存在し、更に大量に消費されている。しかし、少なからず、人から人へ、脈々と受け継がれた技術にて製造される、農業と直結するお酒もまた存在し、「美味いとか不味い」とか、「高いとか安い」とかを超えた、感謝したくなるようなお酒もすぐ側にあるのです。

いや〜・・、ホント!正にそれこそが私にとっての「本物のお酒」ですよ。

P.S. お酒もまた趣向品であることから、私が扱わないようなお酒も美味いと思う人が居るし、一時の癒しや、明日への活力になることは理解してますので否定はしません。ちなみに、農産物以外からも飲めるアルコールを生成出来るらしいが、さすがにそれを飲用している国は無い(笑)

● シガーとは!? ●

 さて、シガー(葉巻)について皆様は何処までご存知でしょうか?

 シガーとは、本来食事の後に楽しむ、コーヒー、チーズ、チョコレート(デザート)などと同じ様に楽しまれる物で、正にそのリラックスした時間を手に入れる為の鍵なのだろうと思ってます

 しかし、ウチの店は田舎な為か、大半のお客様は「なんとな〜く」知ってる位で、シガレットの様に吸うものでは無く、吹かすものだと思い込んでる人が大半です。ま、確かにそう言えなくも無いのですが、実際、吸い込もうが、吸い込まなかろうが、もっと自由に楽しんで頂きたいと私は考ます。

 私がシガーについてご説明する際は「アロマテラピー」という言葉を良く使いますが、事実、シガーはお香の類と目的が似てる部分が大いにあります。森の腐葉土の様な芳しい香りは、仕事人間の、正に一時のリラクゼーションですよね!違いと言えば、口を使って火種を消さぬことと、最大の楽しみと言って良いと思いますが、各種お酒とのマリッジが出来ることではないでしょうか?

 特にウイスキー等の熟成したブラウン・スピリッツ系との相性は最高(私はね!)で、甘みと苦味が相互リンクするバランスとでも言いましょうか、その味わいの高まりは何事にも変え難い、充実した時間を約束されたようなものです。

 ただし!、昨今の禁煙ブームで煙に対する嫌悪感を持つ方も増えておりますゆえ、愛煙家であればあるほどマナーだけは気を付けたい所。ご自分の隣のお客様には是非断りを入れてから楽しみましょう。

 あと、もう一つだけ最低限知っておきたいのは、シガレットの様に灰皿へ押し付けて消さないことで、これはそうやって消すと、溜まったニコチンの嫌な香りが一気に広がることと、諸外国においては「怒りのサイン」とされているからなのです。勿論やらない方が良識ある大人と言えますが、「・・なん〜じゃ、この店は!!(怒)」と、お怒りでしたらサイン送ってもOK・・かな、多分(笑)。

 ま、上記のような暗黙のルールや細かいこと他にも多々ありますが、基本、粋に格好良く、美しい仕草にて楽しみたいものです。

 最後になりますが、この言葉を皆様に送ります。「ダンディズムは1日にして成らず。痩せ我慢も時には必要なり(笑)。」

● こだわり!? ●

 皆さん!バーという業態の中での「こだわり」という言葉にどういうことを連想、または想像されますか?

 私が思うに、「素材を厳選」とか「商品知識の熟知」、または「お酒にまつわる面白い話や薀蓄の数々」等が挙げられるかと思われます。無論、それに伴う技術も必要であることは言うまでも無いでしょう。

 私も、お客様から「マスターは何にこだわりを持ってるんですか?」とか「マスターこだわってますね〜」とか「異常ですよ〜!(笑)」とか言われたりしますが、ハッキリ言って決して本人はこだわりは持ってません。ただ言える事は、美味しいと思う物を、美味しく提供したいだけなのです。その為の知識、技術、素材選びで、特別なことに執着を持ったり、考えてる訳では無く、この仕事をしてたら当たり前に、又は、ごく自然にやってることだと思っています。

 でも、ついでに言うなら、美味しくする為にはそれだけじゃ駄目なんですよ〜!!店の雰囲気、スタッフの態度、仕事の見せ方や手早さ、時にはジョークだってお酒は美味くなる物ですよね。例えを挙げるならキリがありませんが、私の修行中は「見せるグラスの洗い方や拭き方をしながら目配せをどうするか?」「笑顔の作り方や笑わせ方」「付かず離れずって?」なども研究したものです。

 もう、分かりましたよね。「こだわり」と言うのは私達がやってることを指す言葉では有りますが、お客様側が考えるものであり、私らが言うものではありません。TVなどで「私は○○にこだわってます!」とか言ってる料理人さんが良く居ますよね。そういうのを見る度に「何を勘違いしてるんだろう?」「当たり前のことだろ?」「威張ってどうすんだ?」などと思ってしまいます。

 結論!「こだわり」という言葉は評価であり、何かを誇示する言葉では無い。私はそう考えてます。行き付けの本当〜に良い店があれば言ってやって下さい。「素晴らしいこだわりですね!」と。きっと涼しい顔で「有難う御座います」と言われると思います。内心嬉しい気持ちを押さえながらね(笑)。きっと美味しい物が出て来るよ☆。

● お酒が好きな(好き過ぎる)人へ・・ ●

 お酒は素晴らしい!嬉しい時、楽しい時、悲しい時、辛い時、何時でも黙って付き合ってくれる。絶世の美女となって側に寄り添ってくれたりするかと思えば、悪魔のような鬼の叱咤を受けたりもする。

 上手く付き合えばこれ以上のパートナーは居ないように思えるが、好きだとやっぱり飲み過ぎちゃって具合が悪くなったり、常用して体壊したりするんですよね。私も昔はメチャメチャ飲んでましたよ。おかげで3度の入院宣告!「これじゃイカン!」などと思って自宅のボトルは撤去、店では極力飲まないなどと決まりごとを作って現在に至ります。おかげで胃の痛みに悩ませられることは無くなりましたし、お酒の本当の良さが分かったような気もします。

 人それぞれの付き合い方はあるかと思いますが、生涯にわたり美味しく飲んで行こうと思うなら、多少の我慢は必要。それって人と付き合うことと似てるでしょ?物言わぬお酒ですから、付き合う私らがコントロール出来ないと、人と同じく不仲になると言う訳なのです。

● キンクレイス!? ●

 レアなウイスキー数々あれど、これだけ人気の高いウイスキーは中々お目にかかれません。なぜキンクレイスが人気があるのか考えたことありますか・・・?

 閉鎖してる、数が無い、イコール珍しい・・・。これじゃ一部コレクターの戯言です。よ〜く考えてください。スコッチ・シングル・モルト・ウイスキーの楽しい部分って何ですか・・・?もう分かりましたね!そう!つまり個性!個性こそがスコッチ・シングル・モルト・ウイスキーの楽しみなのです。美味いだの不味いだの言ってる間はまだまだ!作ってる方は美味しいと思い、愛情や情熱をこめて作られてるお酒ですから口に合わない物に出会った時こそ「どうして○○なのか?」とか「ここが良い所だ」と探ってみましょう。・・アラ探しなどは誰でも出来ることですよ。

 このキンクレイスというウイスキーは他のウイスキーには無い特徴がありますし、美味い物でもあります(人それぞれでしょうが・・)。でもどうしても価格を照らし合わせると、まずもってガッカリします。が!ウイスキーが好きになり、スタンダードから始めて経験値を積んで、製法や歴史を紐解いて飲んで行きますと本当の意味でのキンクレイスの価値が分かってもらえるかと思います。

 最近スコッチ・シングル・モルト・ウイスキーが好きになったと言う貴方!今は高いだけのウイスキーでしょうけど、これから経験を積んで行けば、安いと思える日も必ず来ますよ。もっともその頃にはもっと高くなってるかも知れませんが・・・(笑)。

上の写真はラスト・ヴィンテージのキンクレイスです。マニアな方なら一度飲んでみたい1本でしょうね。