古代の狩猟道具としてブーメランが存在していたことはよく知られています。
オーストラリアの先住民「アボリジニ」は、数千年も前から狩猟および祭事の道具として、ブーメランを使っていたと推定されています。同様に世界各地(エジプト、中央ヨーロッパ、インド、アメリカなど)でも、今日のブーメランの原型ともいえるものが発見されています。中でも有名なのは、紀元前1370年頃の古代エジプトのツタンカーメン王の出土品の中から、象牙細工を施した立派なものが発見されています。
その他の国から発見されたものも、おおよそ紀元前数千年頃のものと推定されていますが、いずれも互いに交流や伝搬により作られたものではなく。、独自にそれぞれ考案されたもののようです。一番初期のものは、まっすぐな棒の表面を、石で少しづつ削って断面を流線型のように細工し、火で熱してねじれをつけています。このタイプ(キラーステック)のものは、戻ってくる効果はなく、地上1mくらいの高さをまっすぐに100m以上も飛ぶことができるものでした。
「く」の字に曲がった棒を用いたのは、きっと偶然だったに違いありませんが、そのブーメランは、飛んでゆく方向が変わる効果を持っていたわけです。初めて投げた古代の人や、それを見ていた人たちはきっと驚いたに違いありません。
ブーメランは、このように世界各地で発見されていますが、一般にはオーストラリア特有のものと思われています。実は、オーストラリア以外でも、紀元前の昔に存在していましたが、それ以後、狩猟道具は弓矢や槍に代わってしまい、大陸の影響を受けることのなかったオーストラリアだけが、つい最近まで先住民「アボリジニ」の生活道具として伝承されてきたからといえます。これは、カンガルーやコアラなどの有袋動物がオーストラリアに集中していることと似ています。
近代に至って、このアボリジニのブーメランに初めて遭遇したのが、英国の探検家、キャプテン・ジェームズ・クックです。1770年シドニー近くのボタニー湾に上陸しアボリジニと出会った際、手にしていた棒を見て、「それは何か」と尋ねたところ、アボリジニが「ブーメラン」と答えたのが起源のようです。
スポーツとしてのブーメランは、今からおよそ37年前にある雑誌にその不思議な飛び方をすることが紹介されて依頼、アメリカを中心に愛好者が増えました。当時は、まだ、競技性は薄く、もっぱら、「自分で作ってみる」ことと「投げてキャッチする」ことが主体でした。
競技としては1969年に年にアメリカで競技会が開かれ、また1973年にはオーストラリアで競技会が開かれています。この頃は、まだ競技の種目も非常に限られていました。その後、ヨーロッパ(オランダ、ドイツ、フランスなど)にも愛好者が増えて、1988年にはオーストラリア建国200年記念行事の一つとして、オーストラリア・バルーガで世界7ヶ国が参加した大会が開催されました。
そして現在では、それぞれの国で競技会が開催され、また2年に1度世界大会(1994年は日本)が開催されています。競技種目も、最も基本的なオーストラリアンラウンド種目をはじめ、アキュラシー種目、ファーストキャッチ種目、MTA(滞空時)、トリック/ダブリング種目、エンデュランス種目など非常に多彩になっています
(ブーメランハンドブックより)