ブーメランがもどってくるためには、2つの大切なことがあります。
その1つは、ブーメランが回転しながら進むときに風を受ける部分の断面が飛行機の翼のようになっていることにより、ブーメランに揚力が発生することです。そして、もう1つは、ブーメランを立てて投げると、回転中心より上側の方が下側より大きな風を受けることにより、進行方向が変えられる力が発生することです。
 まず、飛行機のような翼断面に風をうけることで、風と垂直方向に上向きの力が発生します ブーメランを立てることでこの力は水平方向になります。このとき回転中心より上側では、前進と回転が合わさった強い向かい風を受けるのに対して、下側では、前進から受ける風向きと回転が同じ方向になって追い風となるため、風が打ち消しあってしまいます。このため、上側と下側で、翼に作用する風の強さに差ができ、この差がブーメランに働く揚力の差となり、ブーメランを倒そうとするように働きます。
 ここで、コマを思い出してください。コマを立てたとき、必ず倒れようとする力があります。手を離したときにも、もしコマが回転していなければ、すぐに倒れてしまいます。ところがコマが回転していると、実際には倒れようとする方向と90度ずれた方向に力を受けます。このためコマは倒れる代わりに、首振り運動を行います。これは、立てて投げたブーメランが進む方向を変えることと同じ原理です。右図のように、コマがブーメランであると想定してみると、飛んでいるブーメランにどのような力が作用しているか、そしてその力によって「ブーメランの飛んでゆく方向が変えられ、投げたところに戻ってくる」ことが理解いただけると思います。
 立てて投げたブーメランが、戻ってきたときにほぼ水平になっていることに気づかれた人もいるのではないでしょうか。これも同じ原理によるものです。飛んでゆく方向が変えられる力は、ブーメランに作用する上下の力の差によるものですが、水平になろうとする力は、前後の力の差によるものです。ブーメランは常に回転して飛んでいますが、右図のように「く」の字がどの位置にあるのかにより上部、下部、前部、後部と呼んでいます。この時、円盤の前部は風を切って(大きな風をうけて)進むのに対し、後部は、前部の陰になるような形で進むため風をあまり受けません。したがって、仮想円盤の前部の位置にある翼と後部の位置にある翼は受ける風の強さが違ってきます。
 また、ブーメランに正(ポッジティブ)の上反角(右図)があると前部の位置にある翼は裏側から風を受け、揚力が増加するため、前後の揚力差が大きくなり、立てて投げたブーメランが水平になるように作用します。その結果、上反角を大きくすると水平になる力が大きくなるため高く舞い上がる(急上昇する)ようになります。逆に負(ネガティブ)の上反角になっていると、前部が表側から風を受けるため、翼に発生する揚力と打ち消しあってしまい、立てて投げたブーメランは裏側で水平になろうとするために墜落してしまいます。ブーメランを低く飛行させたり、高く舞い上げてゆっくりヘリコプターのように飛行させたりするための調整は、この原理に基づいています。
 向い角(右図)を大きくして翼に発生する揚力を大きくすると、上下の揚力差が大きくなります。この結果、進行方向を変える力が大きくなるため、飛距離が短く(小回りなります。このように、迎い角や上反角を変えることで、ブーメランの飛び方を変えることができます。
 ブーメランの重さに関しては、重いほど飛距離が長くなります。紙ブーメランでも、2枚張り合わせて作ったり、先端部をビニールテープを巻くことで飛距離が伸びます。競技用ブーメランでは比重の大きい材料で作ると、飛距離が伸びます。、また、同じ効果を得るために、翼の先端の近い部分におもりを埋め込むことで飛距離を伸ばすことができるのです。

                                                (ブーメランハンドブックより)
ブーメランはどうして戻ってくるのか
BACK
揚力発生のメカニズム
揚力
進行方向
進行方向を変える力
大きい揚力
倒れようとする力
回転
小さい揚力
首ふり運動
断面図
歳差運動
回転
倒れようとする力
実際に働く力
コマの首ふり運動
上反角
迎い角