道楽さん「合唱」を語る

 ハミング練習は大切です。
                                 2020年初夏


 この文章は2年前に書いたものだ。コンサートレポートではないので発表はしなかった。この度、気が変わって発表することにした。きっかけはFひらさんが投稿したフレーベル少年合唱団のハミング練習である。

 合唱は三密の世界である。練習場所は密閉に近い、練習体型は密集、密接の形になる。本番でも同じ形になる。私事だが昨年度は事情があって合唱を休団した。今年度は戻ろうと考えていたら緊急事態宣言で練習は休止、解除後は練習場所(自宅から遠くなった)の関係で会場に入れるのは15名、その他はオンラインになった。詳しいことは省略するが引き続き休団状態である。その代わり、家で積んだままの状態になっていた音楽関係の書物を読む機会とした。これらを読んで今までの自分を振り返ってみた。
 合唱関係の本を読み、大切なことは自分が歌うと同時に他のパートの声をよく聴くこと、そのために大きな声で歌わず丁寧に歌うこと、歌詞の意味(練習している曲は主にドイツ語)をよく知ることを学んだ。これらのことは練習中、何度も指導者から教わったが文章で読むと、理解が深まると同時におろそかになっていたことがわかった。歌い方に関しては大きな声の方がやりやすい。似たようなメンバーが多くいて「楽譜を見て。ここはメゾピアノ」と注意されることが多かった。言うまでもないがピアノはピアニッシモのことだ。弱音で歌うことだが周囲に聴こえなくては意味がない。弱音で周囲に聴いてもらうのは難しいことで自分の課題の一つだ。このことはボイストレーナーの声楽家が実際に歌って(プロは違う)聴かせてくれた。「聴いている人の心に静かに伝えるように」ということだ。頭では理解できるが現実は厳しい。「合唱はソロと違い、みんなでやることを忘れないでください」。一人で大声を出す必要はない。この一言が救いだった。

 これとは別にハミングでの練習もよくやった。「コツは口を閉じても口の中はあいていること。下顎を動かさないでください。口の中にゆで卵を縦にするようイメージしてください。」と教わった。蛇足だがたまたま居合わせた小学生の男の子に「本当のゆで卵を口に入れたら喉を詰まらせて死ぬからやめてください。歌はイメージが大事です」と注意した。ハミングは腹式呼吸の練習にもなったし、音を意識するのに役立った。

 ピアノ伴奏者の本から学んだことは、歌詞の意味を理解し演奏者の気持ちになる、何よりも心を込めて弾かなければいけない。これを読み伴奏の先生への感謝が足りなかったと反省した。また、某声楽家を例に出し、会場のお客様とコミュニケーションを取るようにして歌っていたことが多くの人を惹きつける結果になったことが紹介されていた。これを読み、自分は歌うことに精いっぱいでお客様までは気が回っていなかったと気付いた。このことで思い出したのは、昔観たオペラのプログラムに掲載されていた主役級のソプラノ歌手の「歌はわめきたてるものではありません。大切なことはリッスン ツー ミーです」という文章だ。お客様に聴いてもらうという意味だろう。正しい練習方法でストレス解消はよいが、大きな声で歌うことがストレス発散というのは間違えていることをあらためて理解した。

 これらの書物を読み、わかっているつもりが、そうではなかったことに気が付いた。これをチャンスと考え、これからの練習に生かしたいと思う。

 さて、今回のコロナの影響でどこの合唱団も練習がままならにようだ。前述したように、合唱は三密の世界だし合唱団によっては、練習室に入れる人数が限られているようだ。そのような中でフレーベル少年合唱団が練習室の窓を開け、ハミングで練習をしていることを知った。ハミングをしっかりやれば(このための基礎が必要)歌をより理解できる。それに大声にはならないからお互いの声がよく聴けるはずだ。合唱のレベルを高めるには良いことで、少年たちはハミングならではの美しさも実感できるだろう。 せっかく練習したのだから、適切な場所で関係者や入団希望者を対象に発表会を行ったらどうだろうか。少年合唱団の新たな魅力が発見されるだろう。災い転じて福にして欲しい。

 最後に私事だが合唱の練習には諸般の都合で参加していない。参加していない分、『道楽さんの少年合唱団行脚』を書いている。どちらがいいのかは自分にもわからない。