きれいなハーモニーは健在、 2004年栃木少年合唱団定期演奏会 |
きれいなハーモニーを創り出すのは 基本を大切にしたきめ細かな指導 栃木少年合唱団の練習風景 |
昔「音楽の友」という雑誌でソプラノ歌手の中沢 桂さんのインタビュー記事を読んだ。その中に、学生時代、自分の師事した先生は発声練習を重点的に行い歌はあまり教えなかった。今日はレの音が出せたというふうにひたすら発声を中心に勉強したそうだ。このことが今の自分を支えているというような内容だった。栃木少年合唱団の練習を見ながらその記事を思い出した。
6月19日(土)栃木少年合唱団の練習見学のため東武線栃木駅から徒歩10分ほどの栃木文化会館リハーサル室を訪れた。事前の約束はしていなかったが快く見学を許可していただいた。リハーサル室では長机を前に6名の本科生が神永先生の指導の下、発声練習中だった。6名は長机を前にして横一列に並び歌うときの姿勢の取り方を教わっていた。足を軽く広げて膝を曲げる、手を開いて前に出す。こうすると前からぽんと押されてもよろめかないという話だ。鉄砲を撃つとその勢いで後にさがってしまう。それと同じで歌の時、後に下がらないようにこういう姿勢を心がける、そうでないと喉を痛めてしまう。更に「はっ」と声で腹式呼吸の練習では、「喉を痛めないように声を入れる。体に力を入れない。ダラッとするのではなく何もしない状態。足を意識して。地球に立っている感じ。山のきれいな空気を自然に吸う感じでラジオ体操の深呼吸をする感じ。口を大きく開ける、喉を痛めないためには吸ったときと同じに息を吐く。あくびと同じ。」と説明があり自分も勉強になる。説明の後は一人一人声を出しながら正しい発声を確認していく。「下級生は口を3pぐらい、上級生は5pぐらい開ける感じで、バズーカ砲のように声を出そう。変だと思うとうまくいかないよ。逃げないよ。」具体的なアドバイスが次々と出る。続いてドレミファソの順での発声だ。「逃げてないね」とほめられた1年生はうれしそうだ。「高い声がつらくなったら前に出る感じ。人より短い長さでも気にしない。かすれてもいいから飾らずに発声しよう。」これらのアドバイスは無理な発声にならないようにとのことだろう。次はドレドレドの音を繰り返す。「吸った分を吐こう。音くるってもいいから吐くことに重点を置こう」。ピアノの音程を低くしてこれがしばらく続くと今度はミレドレミの発声だ。ここでも吐き方に重点を置いた指導だ。「先生のいるところまで声を出して。OK。次は壁まで。はい。次は壁の先10mまで。はい。次は50m」不思議なもので声が次第に前に出ていく感じになる。発声練習で1時間。基本を大切にした指導だ。次に『ひびかせ、歌』の楽譜が配られて歌の練習に入ると思ったらここでも発声が主で「ラ」の音を3種類のリズムで練習する。「先生の真似して歌う」ことが重点だ。姿勢がくずれかけた子に注意が飛び歌詞の練習に入る。「しーんとしずまるなかで」という部分を繰り返した後、一人一人歌ってみる。下級生だと一気に歌うのは苦しく途中でブレスを入れるが上級生はブレスなしで歌える。ある上級生には「かっこつけないように」という注意があった。あくまでも基本に忠実な発声がここでも重点だ。一段落つき休憩になる。時間にして1時間20分ほどが姿勢や呼吸に注意しながらの発声練習だ。見学に来ていた6年生がいろいろ質問されていた。声はソプラノだそうで見学者には楽譜を渡して一緒に練習してもらうのが一番と思っていたら『ドレミの歌』の楽譜が渡され一緒に練習することになった。練習しながら「言われた通りやってるだけでは合唱団の子らしくなれない」と先生からの一言があった。更に自分で考えて歌わなければならないということだろうか。伴奏なしで言葉をしっかり出す練習が始まった。メロディだけだと何も考えなくても言葉が出てしまうのでこういう練習が必要だそうだ。「さぼってる人、たよりない人がいる。でも言えないよね」この一言で声が出始めた。「目が輝いてきた。空気の流れ。この感じ。暗くならないよ」合間合間に入る神永先生の言葉で子どもたちがよくなっていく。「ドはドーナツのド、同じ場所にもどるんだよ。人の家にもどるんじゃないよ」「ファはファイトのファ、きつくなる」「なかなかいい。こっちさえ見てくれれば」「まっすぐ歩く感じで歌うよ」練習は続くが途中でタイムアップ。子どもたちは出席カードにシールを貼って帰り支度に入る。本科生は全員で11名。遅れてきた子が2名で本日の出席者は8名。見学の6年生が入団することになり拍手が起きた。土曜日の夜練習するのはスポーツ関係のクラブに所属する子が多く昼間はそちらの練習があるためとのことだ。団員集めの苦労がこういう所に出ている。姿勢や発声に重点を置いた合唱の練習も運動と同じで精神的な力や基礎体力もつくはずだ。声楽をやっている人は元気な人が多いことをみてもわかる。歌に興味のある男の子がどんどん見学に来てくれればと思う。ある保護者の方が「人数が少ない分きめ細かな指導ができるんですよ。」と話してくれた。定期演奏会で人数が少ないのにきれいなハーモニーと感じた原因はこのあたりにあるのだろうが11名は少ない。せめて20名は欲しいものだ。
本科の子が帰ると研究科のメンバーが集まってきた。言われなくても机を直して練習に備えるのはさすがでメンバーは全員の8名が出席。4月の定期演奏会を最後に本科を卒業した3名全員が研究科に進んでいたのはうれしいことだ。
神永先生の「姿勢取って」の指示だけで歌う体勢になるのも本科の小学生とはひと味う。左右の肩の高さが違ってると注意されたメンバーがいて笑いが起きた。続いて呼吸の練習で「吸う、吐くを同じ道のりでもどるように」とアドバイスが入る。「姿勢が大切。逃げたいと思ってもよりどころを作らない。ストレスはストレスで受け取ろう」さっき、本科生に与えたアドバイスと同じだが年上のメンバーにはそれ相応の言葉になる。ピアノを使っての一人ずつの発声練習でも「最初の一音で音を取るように」「高音に入るとき、ギヤチェンジしないで」「鼻に声を抜かない」とここでも的確なアドバイスが飛ぶ。順番が来て発声する子の動きを横から見ていた別のメンバーが「こいつ、手が震えてる」と笑うと「それだけ一生懸命なんだよ」と先生が注意した。この一言は「なにがあっても人をからかってはいけない」ことを他の子に浸透させる意味で大切だ。
発声が終わると『エーデルワイス』の練習だ。「ブレスのタイミングが遅い」「音を下げるのは難しい」「その部分、一気に歌えないかな」 どんな曲もきちんと歌うとなれば大変だ。更に高音、中音、低音のグループに分かれて順番に歌う。待っている間、中音部の3名がじゃれあっていると「真ん中が性格を決めるんだよ」と注意がある。
このグループの集中力がもう一つだったがアドバイスを聞いて練習するうちよくなってきた。ここでも先生の注意は「逃げない。小さい声でもいいから向かっていく」「正しく歌おうと思わなくてもよい」が中心だ。合唱団の方針が次第に見えてきた。一人一人へのアドバイスをいくつかあげてみよう。「楽譜を見る分、声が前に出てない」 (「声が出ないんだもん」に対して)「上で歌うのはつらくなったけど声変われば下で歌えるよ」(低音部の団員に)「メロディーの方がうまく歌えてるけどパートになった方でやるように」などなど。研究科のメンバーは和気藹々という印象だ。全体練習が終わると『ひとりぼっちの羊飼い』をソロで歌う団員がしばらく練習していた。どういうふうに仕上がるのか楽しみだ。見学させていただいたお礼の挨拶をして会場を後にした。
9時をまわり夜の早い地方都市の飲食店はほとんど営業を終えていた。夕食は24時間営業のファミレスがあるから食べ損なう心配はないがそれではつまらない。裏通りに取ったホテルの向かいに、まるっきり当てにしていなかったそば屋が営業していたので迷わず入り、なまずの天ぷらと生ビールで一息ついた。追加で注文した鹿沼の酒は目の前で升についでくれた。これが思いのほかおいしかった。さきほどの練習風景を思い浮かべながらしばらくの間、余韻にひたった。
曲を覚える練習は産みの苦しみ 栃木少年合唱団の練習見学2 |
2004年9月11日(土)、蔵の街コンサートを翌週に控えた栃木少年合唱団の練習見学をしようと栃木を訪れた。栃木駅到着後、空いているホテルを探そうと栃木駅前の旅行代理店に行くと女性係員が「提携しているホテルはないので」と観光地図を差し出し「ここにホテルの名前と連絡先が書いてあるので自分で連絡してください」と言った。栃木市の表玄関の旅行代理店にしてはおかしな話だが仕方がない。公衆電話を使ってダイヤルし5軒目でOKが出た。早いところホテルに入り東京から持ち込んだ仕事をしたいのだが4時チェックインとわかり山車会館と山本有三資料館を見学して時間を潰した。山車会館は祭に使うからくり人形の展示がある。からくり人形は興味ある分野で自分としてはからくりの仕組みが知りたいのだがその展示はなかった。本日の練習場所となる栃木南中学の生徒が文化祭向けに作ったという模型の山車がよくできていて感心したものの予想外に早く見終わってしまい通りの反対側に趣のある建物の山本有三資料館を見つけ入ってみた。恥ずかしながら山本有三氏についてはまるで知識はなく『米百俵』や『路傍の石』の作者であることを初めて知った。山本氏の本を読んだ小学生の感想文がいくつも展示してあり内容がしっかりしているのに驚き自分も読んでみようと決めた。また山本氏の言葉「自分らしく生きなければ生まれた甲斐なし」という言葉に共感を覚えこれを知っただけでも来てよかったと満足した。館内を興味深く見学するうち4時近くなったので新栃木駅近くのホテルまで歩き無事チェックイン。今日は市内にできた量販店の開業日でその関係者がたくさん来ていてホテルが満員ということだ。すぐ仕事にかかり6時に間に合うようホテルを出た。
栃木南中学はすぐに見つかった。どこから入ればいいかわからずうろうろしていたら団員らしき男の子と母親が来たので後に続き見学をお願いした。
栃木南中学の音楽室は木材を使った壁が落ち着いた雰囲気を作っている。階段状に席が並ぶ室内は広くてゆとりがある。6時を10分ぐらい回った頃から団員が続々と入ってきた。この時点で11名。遅れてきた子が2名いて総勢13名。欠席が1名で合計14名。人数が増えたことがわかりうれしくなる。
始まりの挨拶の後、神永先生が前に1列に並ぶよう指示し「先生の真似をしてみよう」と手を前に伸ばしたり上げたりの動作を始めた。子どもたちも真似をするがテンポが遅れる子もいる。「先生が行動してからから2秒以内にやるように。誰か5秒かかっている。」次に手首を曲げる動作が始まった。「微妙だぞ。どこまで見てるかな」気持ちを集中してよく見なければ同じことはできない。「次から1秒以内」また先生の動きが始まった。「以外と難しい人いるね」後から見ていると集中しているかどうかはすぐわかる。「今、3秒かかった。何が起きるかわからない。手だけじゃないよ」口笛をやたら吹く子がいてピアノの臼井先生に注意を受けた。続いて名前を一人ずつ言うようにと指示があった。「ゆっくりと話す。姓と名を分けるんだよ」言い方が早くなったりはっきり言えなかったりとこれも以外に難しい。「先生のやろうとしていることと同じことがはっきりと頭の中になければいけない」神永先生の言葉だ。次は「あいうえお」を言う練習で最初の子が「あ」と言ったら次の子は「い」その次の子は「う」と言う指示だがこれがなかなか徹底しない。「あいうえお」と一人で言ってしまう子や「うえお」とやる子がいる。言葉だけの指示で動くのは大切で自分自身の勉強にもなる。続いて同じことを「ドレミファソラシ」で行った。音程は取らなくていいもののこれもなかなか決まらず5回ぐらい繰り返した。「『ド』の人手上げて。」「『レ』」の人手上げて」神永先生の問いかけに対して以外と反応が悪い。自分のやっていることをしっかり理解していないと答えられない。もう一度やると質問に答えられた。次は同じように「ドレミファソラシ」を言い一番最後の子が声を出したら一斉に自分の言った音を出すという指示でなかなか難しい。これも数回やってもうまくいかず「先生に対する集中力がないとできないよ」と注意がある。その通りで今日の子どもたちは蒸し暑さもあり前回の見学時に比べ集中力が足りない。「前の人の様子をうかがっていると遅くなる。テンポが速くなると難しい」神永先生の指摘だ。「ここまでにして全員2秒以内に椅子にもどる」これはできた。続けてサウンドオブミュージックから『ひとりぼっちの羊飼い』の練習だ。席が三つのグループに分かれているので一つのグループがメロディをつけずにワンフレーズ歌うと次のグループがワンフレーズをやる。これの繰り返しだ。「タ、タ、タ」に入ると楽譜を見るようにと注意が飛ぶ。同じメロディの繰り返しで簡単に見えるが「歌の筋道を覚えないと迷子になりやすい。体に染み込ませていってください。」ここで全員起立し、通しで歌う。6年生は楽譜を手を前に伸ばした持っているが他の子は机の上に置いて見ている。こういうのを見ると伊達に6年生をやっているのではないことがわかる。歌い終わると「自信をもって一直線にゴールにたどりついたと思う人」と先生から問いかけがあり一人だけ手が挙がった。この曲はさきほどの先生の言葉通り同じメロディの繰り返しが多い。まわりに合わせて歌おうと思えば可能だがそれではいい加減になってしまう。楽譜を見ると低音と高音の音符が隣り合っている部分があり歌いやすい曲とはいえない。楽譜を覚え体に染み込ませることが大切というのはこのあたりにあるのだろう。次は『エーデルワイス』だ。これもリズムと言葉だけの練習から入る。終わると楽譜を伏せて起立し、通しで歌う。終わると「特に変わったことないけど指揮見てる人となんとなくまわりについてくる人がいる」との言葉。続いて6年生3名だけで歌う。上級生はやはり声がしっかりしている。6年生の一人で前回の見学の日に入団したA君はすっかり溶け込んでいた。「高い声の時、張り切らない」といつもの注意だがこれは簡単なようで難しい。ここで一部の子に「いろんな格好してるね」と注意が飛んだ。下級生は中学生用の椅子に体に合わないこともあり姿勢が悪くなりがちだ。姿勢が直ると「全部で何曲やるかわかる人?」という問いかけに「1000曲」という答えが出た。別の子が指で数えて「3曲」と答えたが正解は5曲。(『ひとりぼっちの羊飼い』『エーデルワイス』『ドレミの歌』『私のお気に入り』『さようなら、ごきげんよう』)「5曲やるよ」という先生の言葉に「うそー」という声が一部からあがった。続いて『ドレミの歌』だ。全員起立していきなり通し練習だ。これはまずまずの出来で「きょう一番、声が出ている」と先生。「ただ発声やってないから声が上にぶらさがっている。」という指摘があった。先生としても発声をある程度やりたいだろうが限られた時間で曲を覚えなければいけない時期だけに辛いところで「産みの苦しみ」という感じだ。「『ドレミの歌』と『エーデルワイス』は覚えたことを確認しました」と先生。次は『私のお気に入り』を言葉とリズムだけで練習。「そこそこ覚えてるね。では休憩」ここまで約1時間20分。1回の練習としては長時間だが子どもたちに疲れはなく音楽室内を走りまわって遊んでいる子が多い。5分後練習再開。「みんなが歌うところは締めくくりなので声が大切」という説明があり言葉の練習に入った。先ずは「リボン」、「舌はどこにさわってる? 歯の上にくっつくよ」「『り』をはっきり発音しよう」と全員で「り」を繰り返し発音する。続いてピアノを入れ同じ音階で「リボン」を繰り返す。「『ン』は鼻の中をできるだけあける」とアドバイス。さきほど姿勢を注意されたグループがうまくできていない。もちろんすぐ注意が飛ぶ。次は「リボン」を楽譜通りのピアノを入れて練習だ。ここでも注意されたグループはうまく決まらない。「あきらめた?」と先生に言われたが続けて「リボン」を同じ音階、楽譜通りと何回か繰り返すうちよくなってきて一安心だ。続いて「ムー」、「むすびの」「リボンむすびの」を発音する。「最後の音を大切に」とアドバイスがあり「おくりもの」の「おくりもー」を発音し「みんなぼくのお気に入り」と続いた。このちょっと前から研究科生がぼちぼち集まってきて後に座り小声で話していたが下級生の中にそちらを見る子がいて集中度が落ちる。話したいなら廊下に出ていく配慮が欲しい。それでなくても空調を使っていない音楽室は蒸し暑くなっており子どもたちの集中度は明らかに落ちている。「言葉を入れる練習なので盛り上げてない」「ちゃんと立ちましょう。がんばって」ピアノの臼井先生も励ましの言葉をかける。やはりきょうからしばらくは産みの苦しみだ。これを乗り切らなければいい演奏はできない。辛抱あるのみだ。最後に蔵の街コンサートで16日(木)に大人の合唱団と演奏する「ハレルヤ」を歌って本科の練習は終了だ。楽しそうに歌っている子がいて「いいな」と思う。今日は集中力はもう一つだったが前回同様中身の濃い練習で本番が楽しみだ。
本科が帰ると研究科の練習開始。本日は5名だ。「音楽室入ると湿気とカビという気がする」という声があがった。やはり今日はコンディションが悪いようだ。といって練習しないわけにはいかないので発声から始まった。「ンー」「口の中あけないと変わらない」「アー」「ノドに負担かけないように」とアドバイス。続いてピアノに合わせての発声で低音から中音、高音へと上がっていく。「泡みたいに上げるよ。切りかえないで」は歌う上での課題だ。中学1年で変声期に入ったB君が辛そうに発声しているのを見て「1週間で変わってくるね。でも逃げないよ」と貴重なアドバイス。苦しくても一生懸命声を出しているB君の気持ちは自分にも伝わってくる。この時期は辛抱するしかない。これも産みの苦しみだ。「がんばれよ。ここを乗り切れば新しい世界が開くよ」そう声をかけたくなった。次は『ドレミの歌』の「さあ おけいこをはじめましょう」の部分を一人ずつ歌う。少々緊張気味の5人に「学校のテストじゃないからどう歌うかを検査するよ」と先生。次々と歌う5名に「ささやいてる」「ピアノのテンポと1回目違う」「音域ちょうどいいね」というようにアドバイスがある。「5人で揃おうと思わずに全員が違うキャラクターでやるつもりでいいよ」ということで通し練習の後、先生から「『さあ』はどういう『さあ』か」という質問が出た。言われて見ると迷ってしまう。「『さあ』を修正しよう。人に訴える言葉だから大切に。単調にならないように」ということでなかなか難しい。人の心に訴えるように歌うには頭の中にイメージを作りそれをきちんと出さなければいけないのだと説明を聞きながら思った。歌うテクニックの前に豊かな心を養うことがいかに大切かがわかる。前回の見学の時に「言われた通りやってるだけでは合唱団の子らしくなれない」という神永先生の言葉を思い出した。練習は続くが本科と違い、先生の説明にすぐ反応してくるのはさすがで短い時間ながら充実した練習だった。全員前向きな気持ちで練習しており「自分らしく生きる」という言葉を思い出した。練習が終わると明日は某高校の文化祭の舞台に一部研究科のメンバーが出演することがわかり見に行きたくなったが午前中に東京へ戻りたかったのであきらめる。研究科は受験の関係でしばらく休まざるを得ないメンバーが何名かいるとのことで残念だ。受験が終わったら戻ってくることを期待しつつ練習見学のお礼を述べ栃木南中学を後にした。その足で今夜のホテルとは反対方向だが前回夕食を食べたそば屋を訪れた。店のおばあさんに「鹿沼の酒、なんていいいましたっけ」と聞くと「せんきですね。」 一升瓶と升を持ってきたおばあさんに「これおいしいですよね」と言うと「そうなんですよ」とうれしそうに笑い「この瓶おしまいだからおまけ」と言って多目に注いでくれた。2杯目は新しい瓶の口開けになりラッキーと思う。「これの生もあっておいしいけどこれで充分よ。」というのを聞き次回はそちらを飲もうと決めた。話が逸れたが『サウンド オブ ミュージック』は練習を重ねよい仕上がりになりそうだ。栃木少年合唱団特有のきれいなハーモニーを聴きに近辺に住む音楽ファンの方々は出かけられるとよいだろう。
栃木市合唱祭の栃木少年合唱団 |
2004年10月31日(日)、栃木少年合唱団が出演する第20回栃木合唱祭へ出かけた。場所は栃木市文化会館の大ホール。12時半をまわった頃に到着したらすでに入り口が開いていた。隣の小ホールで当地出身の直木賞作家の講演が行われるのを知り一瞬入りたくなったがその思いを振り切り大ホールへ入る。入り口に置いてあるパンフレットに1:00開演と印刷されているのを見て客席に座りまわりを見渡すと2階席のある1000人は入れそうな立派なホールだ。舞台では女声合唱団がリハーサル中で本当に1:00に開演できるのかと思っていたらミスプリントで1:30開演である旨の放送が流れた。開演まで時間はあるがそのまま座って待つことにした。自分の席の近くに陣取った別の女声合唱団の一人が知り合いとおぼしき家族に『シング』を歌うときに手拍子をする箇所があるので一緒にやって欲しいと頼んでいた。(残念ながらこの家族から手拍子はおきなかった。客席からもなし)1:00を過ぎると緞帳が降りた。栃木の祭に使う山車をデザインしたセンスのいい配色に感心する。
1:30に開演し、お目当ての栃木少年合唱団は12団体中5番目の登場だ。曲目は『サウンド オブ ミュージック』から『エーデルワイス』『わたしのお気に入り』『さようなら、ごきげんよう』『ドレミの歌』の4曲で予定されていた『ひとりぼっちの羊飼い』はキャンセルになった。舞台に上がったのは本科の小学生13名と研究科の中高生6名の合わせて19名。前の列に本科、後の列に研究科が整列して演奏開始。最初の『エーデルワイス』は少々固かったが研究科の高校生2名がしっかりした声で本科のメンバーを引っ張っていた。この2名は学校のミュージカル部に所属しているとのことで舞台度胸があるのだろう。2曲目の『わたしのお気に入り』から固さがとれてきた。9月に練習見学をしたときは「どうなるかな」と思っていたがはっきりした言葉で声もよく出ていて一定レベルまで仕上がっていて安心した。3曲目の『さようなら、ごきげんよう』は最初不安定な部分があったが次第に落ち着いてきた。本科の団員が数名のグループになり交代で前に出てワンフレーズ歌い、それが終わると研究科の団員が出てきて本科生へさがるように手でジェスチャーをする楽しい振り付けがあり客席から笑いが起きた。栃木少年合唱団の前に出演した混声合唱団が宗教曲を4曲歌った関係で(とても落ち着いたよいハーモニー)客席がやや固い雰囲気になっていたのをこの曲がほぐしてくれた。最後の『ドレミの歌』は研究科6名が「さあ、おけいこをはじめましょう」の出だしを歌い本科生がそれに続いた。客席から自然に手拍子が起きこれに応えるように本科の団員の声がよく出ていた。客席と一体になったことで10の力が12ぐらいまで引き上げられた感じがした。歌が終わると大きな拍手があり自分もうれしくなった。今回は練習風景を見学していることもあり「よくやった」と賞賛したい。ただこれで完成とは思いたくない。無事生まれた4曲を団員たちが「この歌は好きだ」という気持ちで練習を積んで欲しい。人間も「君が好きだ」という気持ちで接すると必ずいい方向に行く。音楽も同じで好きになれば一つ一つの曲はよりすばらしい演奏ができるようになり観客に感動を与えるはずで合唱団にとってもプラスになる。次回のステージにも期待したい。もう一つ、今回キャンセルされた『ひとりぼっちの羊飼い』も聴かせて欲しい。
栃木少年合唱団に続いてステージに上がった女声合唱団の『シャル・ウィ・ダンス』の間奏部分で2名の団員によるダンスの場面があり指揮者がしきりに手拍子をしていた。残念ながら客席の反応はなかったが研究科の中学生が指揮者の意図を察したのか一人で手拍子をしていた。栃木少年合唱団全員でやれば客席が更によい雰囲気になったのにと残念。自分たちが応援を受けたら他の団体にも返していくことが必要で、このあたりがわかるのも合唱団員としては大切なことだ。後刻、副団長のmameさんとしばらく歓談した。「午前中は声が出なくて心配したけど本番で声が出てうれしかった」「観客が自然に手拍子をしてくれて感動した」といううれしい話が出た後、「聴く態度を教えなければ」という話しがあった。いうまでもなくよりよい演奏をするために養って欲しいことだ。今回、観客から手拍子の応援を受け、よい雰囲気で力が出せたことを心に刻み他の団体を鑑賞する態度に生かして欲しい。そういう積み重ねが市民から「栃木少年合唱団はいいなあ。」という思いにつながっていくはずである。「駅まで送りましょう」というmameさんの親切を辞して町の中を歩きつつ少年合唱団を育てる大変さを実感した。
間近で聴けたクリスマスソング 栃木少年合唱団ミニコンサート 2004年12月19日(日) |
根気ある指導に応える少年たち 和気あいあいでも筋の通った稽古 栃木少年合唱団の強化練習 2005年 3月27日(日) |
第43回栃木少年合唱団定期演奏会 2005年4月3日 |
ハイキングをして栃木少年合唱団を見学 2005年6月25日(土) |
練習を見学し合唱祭へ来ることを決意 栃木少年合唱団の練習 2005年10月1日(土) |
東武の快速列車 ブドウ園
意欲を感じるプログラム 栃木少年合唱団 第21回栃木市合唱祭 2005年10月23日(日) |
新しい息吹を感じた栃木少年合唱団 2005年12月3日(土) |
音楽的には上々の仕上がり 第44回栃木少年合唱団定期演奏会 2006年3月19日 |
今シーズンのテーマはジブリ 地域住民参加コンサートに出演した栃木少年合唱団 2006年9月18日 |
実力派を証明 栃木市合唱祭に出演した栃木少年合唱団 2006年10月15日 |
園児たちが大喜び 第45回栃木少年合唱団定期演奏会 2007年1月14日 |
音楽的センスに感心。栃木少年合唱団の練習風景 2007年9月15日 |
存在感のある10名の少年たち 第46回栃木少年合唱団定期演奏会 2008年1月20日 |