常滑を訪問して
 2015年10月11日


 常滑市で少年合唱団員を募集。このことを知ってから一度、現地を訪れてみようと思っていた。幸い三連休の中日に時間が取れたので名古屋鉄道の常滑駅で下車し、常滑文化センターを訪れた。
常滑文化センターで少年合唱団員募集のチラシを探したが見つからなかった。係りの人に聞いてみると親切にチラシを探してくれたが見つからなかった。「思い違いかな?」と考え、駅に戻る途中に図書館の表示があった。そこも当たってみるかと足を運ぶとポスターとチラシを見つけた。よくよく見ると常滑市南陵市民センターとある。早速事務所で場所を尋ねると地図を出して説明してくれた。車で約15分、バスはあるけれど本数はないとのことだった。再び駅に戻りバス停に行くと1時間に1本のバスが出たところだった。行くのが面倒になったなと思っていると「タクシーで行きましょう。ここまで来て何も分からずに帰るのはいやです」。風が強い口調で言った。「わからなければわからないでいいから行こうよ」「そう、ダメ元だ」「行かないと支えてあげないよ」。童子たちの言葉に「よし」と思い、タクシー乗り場に行った。「日本の少年合唱団の活動場所はどこも電車の駅から歩いて行けるだろう。駅から離れることが不安なんだよ」。薫がフォローしてくれた。運転手さんにチラシを見せて目的地を伝えると「えー? どこだろう」としばらく考えてから「わかった。消防署の近くでしょう」と答えた。「行ったことがないのでわかりません」と応じると「多分合っている。行きましょう」とスタートさせた。車は堤防で遮られた道をしばらく走り、南陵中学校の看板が見えた場所で左に曲がった。そこが目指す南陵市民センターで図書館が併設されていた。事務所で聞いてみると「開講します」との返事。「東京から来たと言いましょう。名刺も出して」。風に促されたのでそれを口にすると応対してくれた方は驚いていた。これがあってかなくてか担当の方は積極的になり「指導者が近くの青海市民センターにいるので」と連絡をしてくださった。「車でお送りするので行きましょう」とのご好意に甘え、車で15分ほどの青海市民センターに移動した。練習場所は南陵、本番は青海とのことだ。
 青海市民センターで合唱団を指導する加賀誠二先生からお話をうかがった。先生は大垣少年合唱団のご出身、二期会合唱団に所属されていたとのことだった。またオペラでもソリストとして活躍されていることもわかった。私は大垣少年合唱団の東京公演(1977年と記憶する)を聴き、二期会愛好会にも入っていた時期(1977年〜80年代後半)もある。合わせて混声合唱団に所属しているので話ははずんだ。大垣少年合唱団はその頃、100名近い団員がいて遠征隊はベレー帽が支給された。そのベレー帽が団員の憧れだったこと、練習は厳しい面もあったが楽しかったこと、男の子の集団はおもしろかったこと、音痴を直す方法、韓国公演のエピソードなどをお聴きできた。当地で少年合唱団を始めるきっかけは文化面での起爆剤にしたいとのことだった。更に少年の声の素晴らしさを地域の方々に知って欲しいとのことを聞き、微力ながらも応援しようという気持ちになった。本番はアカペラとのことで少年合唱のすばらしさを楽しめそうだ。演奏場所は図書館の一角でアットホームな演奏会になりそうだ。なにはともあれ「初めの一歩」になるよう期待したい。
 帰りも車で常滑駅まで送っていただいた。駅前のホテルも教えていただき早速宿泊を申し込んだ。わくわくする時間を過ごすことができ感謝します。

「参加費無料で加賀先生が指導してくれるのはとても贅沢です」「そう、これは貴重な体験になる」「正しい声の出し方を教わる機会は少ないだろうから地域の男の子には参加して欲しい」「正しい発声法は将来、役に立つよ」「歌うと必ず得をする」「今しか出せない声を磨いて、きれいにして欲しい」「スポーツと同じで体力がつく。歌は体育会系だよ」「集中心も育つ」「男の子だけでコーラスするのは楽しいよ。ぜひ入ってください」。童子たちからのメッセージである。

正しい発声法と歌い方を勉強するチャンス。
まじめに取り組めば必ず役に立ちます。
心も体も元気になります。

 常滑少年合唱団が待望の演奏会
               2015年12月24日


  予約した常滑駅前のホテルは12階の部屋が割り当てられていた。窓からは遠くに海が見えた。その海を眺めていた風君が、お茶を楽しんでいたぼくたちの方へ振り返り、「暗くならないうちに行きましょう」と言った。今の時間は15時半で開演の19時には十分過ぎる時間がある。「歩いて行くのは初めてです。真っ暗になる前に着くようにしましょう」との言葉に道楽さんはうなずき、「早く着いたら本でも読んでいればいい。出発しよう」と決めた。常滑駅発15時56分の準急に乗り、次の停車駅大野町駅で下車。ネットの地図で確認した道をひたすら歩いて20分。目指す青海市民センターの看板が見えた時はホッとした。真っ暗だったら看板に気付いたかどうかわからなかった。途中、道を聞けるような場所はなかったので風君の言うとおりにして正解だった。さて、本題に入る前に12月初めに練習見学に訪れた話をしよう。この時の道楽さんの感想は次の通りだ。「ソロを歌える子が集まっている。ただ合唱の経験はあまりなさそうだ。でも、元気もやる気もあるからこのまま練習を続ければ、よその少年合唱団と同じように本番では力を発揮するだろう。ただ、初めての演奏会だから緊張して声が小さくなる心配がある」。ではこの先を道楽さんに頼もう。
 演奏場所は前にも書いた通り、図書館の一角だった。そこに舞台が設置され、クリスマスツリーが置いてあった。天井空間に白い布を張り、舞台から2階階段に通じる通路に赤い絨毯が敷かれ、その上には紙パックで作った小さな家々(内部に明りが灯っている)が置かれ、クリスマスらしい温もりがあった。舞台を様々な色で照らすライトも用意され演奏会への意欲が感じられた。また、当初はアカペラ演奏とのことだったが強い味方のピアニストが加わっていた。当日のプログラムは以下の通り。配られたプログラムもクリスマスツリーをイメージしたもので手作りならではの温かさがあった。

1.きよし、このよる  
2.ひいらぎかざろう  
3.ジングルベル
4.あわてんぼうのサンタクロース  
5.サンタがまちにやってくる
6.PIE JESU
7.ピアノ独奏   バッハ 平均律クラヴィーア曲集より
               第一番プレリュード
           マスカーニ アヴェマリア
          〜歌劇カヴァレリア・ルスティカーナより間奏曲
8. Omubura mai fu
9.AVE MARIA  カッチーニ作曲
10.Amazinngu Grace
11.Far away

 観客は、読書用の丸テーブルを囲むイスに座り、サロンコンサートのような雰囲気で観賞できた。予想以上の人数が集まったようでパイプイスが新たに並べられた。

 演奏会の前に指揮者の加賀先生とゲストのフランソワーズびわさん(詳しくはネットをご覧ください)との会話で始まった。内容はびわさんの経歴や活動内容をユーモラスに紹介するものだった。それが終わると少年合唱団5名が一列になり、『きよしこの夜』を歌いながら2階からの階段を降りてきた。左手にカンテラを持ち『きよしこの夜』が終わるタイミングで舞台に並んだ。衣装は保護者お手製による白いローブでよく似合っていた。

 2曲目の『ひいらぎかざろう』はアカペラによる合唱だ。テンポが自然に速まるなど緊張しているのは明らかだった。しかし初めての演奏会で「緊張するな」と言っても無理だろう。この先、活動していくうえで緊張を体験することも大切な通過点だ。次の『ジングルベル』から一人ひとりがソロで見せ場を作る趣向だ。『ジングルベル』を歌ったA君は、少年らしく生真面目な歌い方がよかった。『あわてんぼうのサンタクロース』のソロB君は素朴な感じが印象的だった。自分にとって心をなごませる歌だった。曲に合わせてソロ以外の4名が縦一列になりエクザイル風の振付を披露した。こぼれ話として先頭の子が「後ろはちゃんとやっているのか?」と疑問に思った旨が紹介された。お互いの信頼が合唱には必要と再認識した。『サンタがまちにやってくる』を歌ったのは5人の中で一番元気そうなC君だ。緊張しているのは明らかだったが最後まで元気に歌いきった。彼は本番前「怖くなってきた」と言った。それを聞いた自分は「当然。それぐらいでないと駄目」と思った。今回のソロで舞台度胸がついただろう。次回以降楽しみだ。『PIE JESU』はびわさんとの共演だった。これを歌うD君は声楽の指導を受けてきたそうで5名の中では際立っている。びわさんはプロのソプラノ歌手とのことで柔らかい声だった。聴かせ処はびわさんが高音部を、D君が低音部を歌う箇所だった。彼はソプラノだが低音部の響きもあり、びわさんと堂々と渡り合った。これはめったに聴けない貴重な重唱だった。続いてピアノ独奏を行ったのはブルガリア留学から当地に戻ってきたという女性ピアニスト久野絵美さんでこの先も伴奏を担当して欲しい。緊張している少年たちを見ていると自分も緊張してくるのでピアノ演奏は気分をほぐしてくれた。ここで10分間の休憩となる。この休憩中にサンタクロースに扮したスタッフ1名が観客全員にキャンデーをプレゼントしてくれた。こういう心遣いはうれしい。

 休憩後のトップは『Omubura mai fu』。これを選曲したE君は声楽の指導を受けているのだろう。そうでなければ歌うのは難しい。緊張はあるもののアルトの声で堂々と歌いきった。続いての『AVE MARIA』と『Amazinngu Grace』はびわさんが歌った。とても気持ちのこもった歌でこの日のコンサートの幅を広げた。最後は少年合唱団5名による『Far away』だ。有名なリベラが日本名『彼方の光』として歌っている曲である。前半はD君がリードし、後半はC君がリードした。プログラム最後に相応しく、少年たちの心を一つにした歌を堪能できた。前半の緊張が弱まったのは各自がソロをやり遂げたことで自信が深まったのだろう。

 演奏会全体を通して、少年たちは緊張していたものの、声が弱くなることなく堂々と歌ったことを評価したい。全員休むことなく練習に参加したそうでこれも成果につながる要因だ。「本番に強い」。少年合唱団の共通項目である。来年もクリスマスコンサートは予定されているので楽しみにしよう。更なる発展を祈りたい。最後にこの演奏会は様々な方々に支えられていたことを付け加えておこう。


                                                                                                   
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