フレーベル少年合唱団

  
プロフィール

 フレーベル少年合唱団は、
「キンダーブック」や「アンパンマン」などの幼児向けの保育図書の出版や保育用品でおなじみのフレーベル館が運営する少年合唱団です。 昭和34(1959)年、企業の社会的還元という視点 より文化活動として、情操豊かな子供達を育むために我が国ではユニークな男子だけの合唱団をつくろうという理念で誕生しました。歴史的にみてもグロリア少年合唱団と並んで日本で一番長い歴史を持つ少年合唱団です。
 創立当初は、著名な作曲家・合唱指揮者であり、また、早稲田大学グリークラブの顧問・先輩でもある磯部俶先生が指導者でした。また、現在も美しい日本の歌の普及のために精力的に活動されている山本健二先生などが指導者であった時期もあります。その後、指導者も代わり、北島三郎の「与作」や、Kinki Kidsの「硝子の少年」などそのとき流行している歌を大胆にプログラムに採りいれたり、幼稚園児から団員を採るなど、時代の流れを読んだ活動をしています。

 私が、この少年合唱団を知ったのは、昭和30年代後半「みんなのうた」で、「おなかのへる歌」などを通してでしたが、「遥かな友に」の作詞・作曲者の磯部俶先生が指導者であったことを知ったのは最近です。また、アニメ「星の王子様」のテーマソングは、日本のボーイ・ソプラノのソロの名唱として今も話題にのぼりますが、この歌を歌ったのは、当時フレーベル少年合唱団員だった鈴木賢三郎(中2)です。私はまだ実際の舞台を見たことはありませんが、録音によってその歌声に接することはできました。ここでは、磯部俶先生が指導されていた昭和42(1967)年に発売された「ぼくたちの演奏会」の評を掲載します。

    
かな心は美しい歌から
                                
 『ロバの会』解散の新聞記事を目にしてから時を経ずして中田喜直の訃報が入った。日本の子どもの歌にとって、一つの時代が終わったという感がした。 『ロバの会』ともつながりが深いフレーベル少年合唱団が歌うレコードのタイトルは、「ぼくたちの演奏会から」・・・少年たちがこれらの歌を歌わされて歌うのではなく、本当に「ぼくたちの歌」と感じて歌っているなら何と幸せなことだろう。このレコードが発売された1967年(昭和42年)、日本は高度成長の急な坂を駆け上っていた。それは同時に、ものの豊かさと引き換えに自然破壊や心の貧しさが問題になり始めた頃でもある。大都市では遊び場は狭められ、塾通いも目に付いてきたが、それでも、子どもの世界ではまだ群れて遊ぶ姿があった。してよいこと・悪いことについてもまだ一定のルールが生きていたように思う。音楽の世界ではビートルズやフォークソングが若者の心を捉えていたが、その余波は当然子どもにも及んでいたであろう。しかし、子どもの歌番組もけっこう盛んな頃だった。前置きが長くなってしまったが、そんな時代背景を知ってこのレコードを聴くとまた違ったものが聞こえてくるだろう。
 このレコードは、二部構成になっている。第一部はわらべうた、あそびうた。第二部は日本の四季や子どもの生活を歌った新しい童謡を中心とした選曲。それにしても、これらの歌は何とのどかで、ノスタルジックに聞こえることだろう。その頃、少年の時は今よりもゆっくりと経っていたにちがいない。例えば友達の家に「○○君、遊ぼう」と言って誘う声にもわらべうたと共通する独特のメロディがあった。そのような生活の土壌が15曲の小さなわらべうたの花々を咲かせたのだ。15曲ある曲はどれも短く、いわゆる聴かせどころがある歌ではないが、それだけに15曲続けて聴くことで、少年達の遊んでいるときの息づかいまでが聞こえてきそうである。
 日本の四季の情景を歌った童謡では、その季節の色が目に浮かんでくるではないか。合唱の合間に効果的にソロやデュエットがちりばめられているが、その色彩感のある歌声が、季節の色を想像させるのだろうか。しかも、これらの歌は日本の子どもだからこそ歌える歌と言えよう。
 美しい日本語とメロディを持ち味とする抒情歌の系譜は、平成になって日本から途絶えてしまったのではないかとさえ思うことがある。また、世代を超えて歌える歌も少なくなってきており、これが世代の断絶を深めているようにも思える。そのような意味でも、豊かな心は美しい歌からということをこのレコードは静かに語りかけているようである。

磯部俶先生の自伝「遙かな友に」
 
 フレーベル少年合唱団の指導者として創立から22年間関わられ、日本の少年合唱の発展に貢献された磯部俶(とし)先生の自伝「遙かな友に」の中にもフレーベル少年合唱団は登場します。「フレーベル少年合唱団のこと」と題して書かれた4ページほどの文ですが、磯部先生がこの合唱団の指導に精魂を傾けてこられたことがわかります。
 前半は、創立8年目に作曲家の清水脩先生から贈られた一文がそのまま載っています。清水先生によると、フレーベル少年合唱団のよさは「いつまでも音楽に対して純粋さを失わない。」最高のお言葉ではありませんか。
 後半は、磯部先生が取り組まれたことの一端が述べられています。発表会のために無報酬で書かれたオペレッタ「ありときりぎりす」「粉屋とロバ」「三匹のこうもり」「孫悟空」等のこと。父母の会ファミリーコーラスを結成されたこと。どれ一つとっても、大きな情熱なくしてはできない仕事です。
 また、「まどみちお作詞の団歌を聴くと教えても教えても直ぐに変声してしまうあの少年合唱団の育成の難しさが懐かしく想い出されるのである。」と結んでおられますが、これこそ、少年の声の魅力の根源でもありましょう。


続く

                                              
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