ステージに上がっている団員の誰もがマスクをしていないことから、このときは、まだ新型コロナウィルスが日本に上陸していなかった時ということがわかります。1stステージは、上手と下手の両方から登場した、マスクをしていない13人の団員が「友達賛歌」を歌いながら、2段の定位置に並びましたが、ボーイ・ソプラノのオブリガードがよく響きます。同じ列の中でも団員間に40cmぐらいの身長差があるところから、小学校中学年から高校生ぐらいまでの団員ではないかと思われま続く、「線路は続くよどこまでも」は、混声合唱で、声部が絡み合いますが、ここでもボーイ・ソプラノのオブリガードが快く響きます。3曲目は、歌ではなく、「Music
for Hand Clapping」という歌のない手拍子足拍子の曲が続き、4曲目の「イカイカイルカ」は、動きの入った歌で、選曲の多様性を感じさせます。ここで、団員紹介で、1人あるいは2人ずつ自己紹介した後、団員による指導者の紹介もあり、団員一人ずつが輝く場を作っていると同時に、紹介があるごとに会場から拍手が起こり、舞台の上と下が一体になっている姿が伝わってきました。ただ、時々ではありますが、曲が終わるごとに大声で「ブラボー!」と叫ぶ声は、本当にその歌のすばらしさを絶賛しているよりも、かえってコンサートの余韻を妨げているように感じました。
アンコールステージは、「きみに会えて」で始まりましたが、卒業式などでもよくこの歌がもっている出会いの感動がじんわりと伝わってくるような歌に仕上がっていました。「Music for Hand Clapping」は、1stステージでも演奏されましたが、リズムによる音楽の面白さを再現するという感じでした。会場の観客と共に歌う「今日の日はさようなら」でしっとりと終わるというアンコールステージの組み立てもよくできていると感じました。
歌の合間の団員紹介で、1人ずつの自己紹介もあり、一人一人の声の個性や、変声期に入っているかどうかも伺えましたが、何よりも曲の紹介や自己紹介があるごとに会場から拍手が起こり、これは、会場の人数が最大269席で、身内もかなり多いということで可能な面もありますが、舞台の上と下の一体感が伝わってきました。しかし、よく聞いてみると、「今何年生で入団したのは何年生です。」という自己紹介から、一人一人は頑張っていても、コロナ禍以後入団した団員は殆どいないのではないかということが気になります。これは、全国の少年合唱団共通の課題ではないでしょうか。また、「Music for Hand Clapping」は、手足でリズムを刻む歌ではない定番曲になっているのでしょうが、観客にとっては、新潟少年合唱団の20数年の「伝統」は健在と感じさせたのではなかったでしょうか。本来なら、会場の皆さんと一緒に歌うはずの「新潟市民歌 砂浜で」は、OB5人を加えた合唱でしたが、その後、OBの自己紹介で、卒団後どうしていたか等の話もあり、音楽の世界で生活している人はいなくても、新潟少年合唱団に在籍したことが、現在の自分の人間的な成長につながっていることが伺われると同時に、後輩を応援しようという縦のつながりが生きていることを感じさせました。こういうことも、拍手につながっているのだと思います。