パリ木の十字架少年合唱団クリスマスコンサート
平成30(2018)年12月1日(土)京都市コンサートホール


   不易と流行

 これまで、パリ木の十字架少年合唱団の演奏には、テレビ、ビデオ、CD等の録画・録音を通してしか接したことがありませんでした。もちろん時代と共に、指導者によって演奏の特色が変わるところもありますが、一貫して第1部は、侍者服を着て手を前で組んで宗教曲を歌い、第2部は紺のセーターに半ズボン(最近ではハーフパンツ)白いハイソックスというスタイルで手を後ろに組んで世俗曲を歌うというスタイルも変わっていません。1970~1980年代の歌声は、甲高いソプラノが耳に残るような歌唱で混声合唱でしたが、来日した最近の歌唱はもう少しソフトで少年合唱に徹しているようです。京都でのコンサートの翌日、呉少年合唱団の定期演奏会で出会った道楽さんと話す機会があったとき、東京の紀尾井ホールの公演では、旅の疲れが見られたという話を聞いて、それならば、京都公演はそのようなものを感じさせない質の高い演奏であったと思います。

   ア・カペラが中心の宗教曲

 この合唱団の並び方には特色があります。舞台中央部がソプラノで両端に行くほど低音になることです。両端の後ろに位置する大柄の団員は170cmぐらいあり、顔つきから見て、変声が始まっているのではないかと感じましたが、どのようなな声で歌うのだろうかと思いながら鑑賞していました。人数は22人でしたが、一人一人にしっかりした歌唱力が備わっていることが次第に分かってきました。とりわけ、ソプラノのパートは、よく声が前に出ていて、変声期に入ると、ファルセットではなくカンビアータ・ヴォイスで歌っているようで、全体として澄んだハーモニーを創り上げてきました。最初のグレゴリオ聖歌:キリエ第11番は、「キリエ」という言葉が繰り返される中に、次第に深みに引き込まれていくような歌唱でした。初めて聴く曲も半分ぐらいありましたが、比較的有名な曲でも、ソロと合唱を組み合わせるなどのアレンジに特色がありました。ヴァヴィロフの「カッチーニのアヴェ・マリア」フォーレの「レクイエム」の「ピエ・イエズ」モーツァルトの「アレルヤ」など、ソロで歌われることの多い曲も、ソロと合唱を組み合わせることで、合唱曲としての面白さを引き出そうとしているのが特徴的でした。

   オルガンの壮麗な響きに続いて

 第2部は、芸術監督で指揮者ののユーゴ・ギュティエレス先生によるオルガン・ソロで、「神の御子は今宵しも」の変奏曲が演奏されました。これまで、京都市コンサートホールには何度も行っていますが、オルガンの音色を聴くのは初めて(これまでは背景として見ていただけ)で、オルガンの帷子が、開いたり閉じたりする度に、音色が変わるところが興味深かったです。すべて暗譜で指揮をするユーゴ・ギュティエレス先生の指導によって、団員たちが相当鍛えられていることを感じました。第2部は、フリース作曲の「モーツァルトの子守唄」のデュエットで、170cmぐらいあるアルトが主旋律を歌い、ソプラノがオブリガードを歌うというアレンジも魅力的でした。ラモーの「夜の讃歌」は、映画「コーラス」で一躍有名になりましたが、オーソドックスなアレンジが安心感を与えてくれました。
 また、今年は京都・パリ友情盟約締結60周年/日仏友好160周年にあたるので、それを記念して京都市少年合唱団との共演がありました。まず最初に60人ぐらいの団員による混声合唱で鈴木憲夫の「永久二」が地の底から湧き上がるように力強く歌われ、半分ぐらいの団員が退場して変声前の男子と女子が残って、 そこにパリ木の十字架少年合唱団が声部ごとに並んで、穏やかな声でJ・ラターの「この麗しき大地に」とジョン・レノン&ヨーコ・オノの「ハッピークリスマス」が歌われ、暖冬の日本にもクリスマスが近づいてきたことを感じさせました。アンコールは、「さくら・さくら」「猫の二重唱」アテニャンの「トゥルディオン」の曲想の違う3曲が歌われましたが、遊び心も併せもった「猫の二重唱」の中に、この合唱団のよい特色を感じました。