第28回宝塚ニューイヤーコンサート
     平成23(2011)年1月9日 宝塚ベガホール


 昨年は職場関係の地域行事に参加のため、行けなかった宝塚ニューイヤーコンサートに行ってきました。一昨年の長蛇の列を思い出して、1時10分過ぎに着くようにしましたが、既に20人ぐらいの列ができていました。今年も1時半の会場のころには、既に200人ぐらいの列に。今年もおなじみの「千吉音頭」で始まりましたが、こういう伝統芸能を保存することは強い意志が必要だということを改めて感じました。また、ニューイヤーコンサートには、こういう「華」がなくてはいけません。

 さて、この日のボーイズ・エコー・宝塚に出演した18名が左右の間隔をお互いに注意しながら並ぶと、ピアノ伴奏の辻先生が何とウサギの着ぐるみを着て登場。さすがに、バニーガール風ではありませんでしたが、あっと言わせる演出でした。プログラムでは、今年は2曲。1曲目の「うさぎ」は、これこそ、伝統的なわらべうた。しかし、曲そのものが短く、変奏曲にでもしないと大きな盛り上がりを作るのは難しい曲です。あっという間に終わってしまったような気がしました。また、「たこあげ」は、初めて聞く曲ですが、作曲は岩河三郎。昭和の終わりごろは、児童合唱コンクールに採り上げられることが多かった作曲家ですが、最近は岩河さんの作品をほとんど聞くことがなく、さびしく思っていました。ところどころに濃密な情緒を感じさせる曲でしたが、山場づくりが難しいと思いました。この日のボーイズ・エコー・宝塚の歌声そのものは、安定していましたが、やや印象が希薄な選曲だったように思います。岩河三郎の作品では「五百羅漢さん」とかなら、泣かせるのになあ。でも、この歌は、正月気分では歌えないし・・・

 この日インパクトが強かったのは、「いずみコール」で、「南の島のハメハメ大王」は、合唱というよりむしろ演劇として楽しめました。また、県立宝塚高等学校OB吹奏楽部は、親子で登場という企画でしたが、家庭音楽会という雰囲気がとてもよかったと思います。


 ボーイズ・エコー・宝塚 第26回定期演奏会
        平成23(2011)年4月2日 宝塚ベガホール

 東日本大震災の影響で、東日本各地の少年合唱団のコンサートが中止や延期になる中、ボーイズ・エコー・宝塚の定期演奏会が予定通り行われました。しかし、年度が明けた4月にボーイズ・エコー・宝塚の定期演奏会が行われたことは初めてでしょう。しかも、会場が周年記念定期演奏会でないのにベガホールで行われたことは、今年度久しぶりに6年生4名を送り出すこととも関係するのでしょうか。会場に行って、幕間の解説を聞いてわかったことなのですが、昨年10月に指導者の中安先生は骨折され、全治6か月と診断されたのに、驚異の回復力で2か月で復帰されたのは、何としてもこのコンサートを成功させてみせるという意地と執念があったからこそと思っています。今年度の団員は19人と、20人の壁を越えることができませんでしたが、6年生に引きずられるように低学年もよいステージマナーを最後まで維持することができました。

   半世紀生き続ける歌

 この日は、団長の藤原君の指揮する団歌でコンサートはスタートしましたが、「花と緑に囲まれて」と題された第1ステージは、辻先生の指揮するア・カペラの「ひらいたひらいた」というこれまでにない雰囲気のスタートとなりました。「花のまわりで」「緑のそよ風」「おお牧場はみどり」と半世紀生き続けた歌が少年たちのさわやかな歌声に乗せて聞こえてくると幸せな気持ちになってきます。まだのどがまだあたたまっていなかったところもありましたが、好調なスタートといえるでしょう。

   マーチは小細工をしないほうがいい

 第2ステージは、「ウォーキングソング」と題した古今東西の行進曲(マーチを集めたステージでした。こういう曲では、主部の明るい元気さとともに、中間部(トリオ)の部分との対比が聞かせどころとなります。8曲歌われましたが、あまりアレンジの技巧に走ることなく、ストレートにこれらの曲の楽しさを伝えていました。マーチという曲の本質はそういうところにあるのだと思います。「マーチングマーチ」のようなやや幼い歌から、いかにも高学年的な「天使の羽のマーチ」まで多様な歌がありました。

   
   10年たったら「ダーク・ダックス」   

 ボーイズ・エコー・宝塚の定期演奏会の名物は、6年生のソロによる卒業演奏があることです。半世紀前なら小学生で変声期に入る子どもは1割程度でしたが、今では3割ぐらいいるのではないでしょうか。変声期に入った卒団生が思うように声の出せないもどかしさと闘いながら演奏する姿や、ファルセットに生き筋を求めて演奏する姿にも出会ってきました。かつて思い切り美しい声を響かせていた姿を知っていれば、それをつらく感じることもあるのですが、少年が誰しも通る道と考えて、門出を祝ってやりたいと思います。三谷正祐君はまさに変声期の最中。「箱根八里」は、本来バリトンがよく似合う曲かもしれませんが、「自分が好きな歌」として歌い切り、この少年が持つ芯の強さを感じました。もう2年したらきっといい歌が歌えるよ。佐々野智博君は、抒情的な表現に優れ、「夏は来ぬ〜浜辺の歌」という持ち味を生かした選曲でボーイ・ソプラノの魅力を伝えました。藤原哲平君の「翼をください」は、手話入りでしたが、柔らかな中にも芯のある歌声の響きもさることながら、まさに舞踏という美しい指先の動きに心惹かれました。川野翔太郎は、「フニクリ・フニクラ」やや細めの声で、大人のテナーなら求められる磊落さはなかったものの、清潔な歌で貫きました。聴きどころは最後にやってきました。昨年度の定期演奏会でもこの4人で歌った「サウンド・オブ・ミュージック」1+1+1+1=10になるような演奏でした。ご卒団おめでとうございます。10年たったら「ダーク・ダックス」という雰囲気でした。

   「たこあげ」ってこんないい歌だったのか

 第4ステージは、「ぼくたちの好きな歌」と題し、手塚治虫のアニメソングや「ニューイヤーコンサート」で歌った曲が再演されましたが、ここで驚いたのは、岩河三郎の「たこあげ」の演奏でした。この歌こんなにダイナミックないい歌だったのかな。それは、「ニューイヤーコンサート」では、感じなかったことでした。岩河三郎の合唱曲のドラマ性や濃密な情念は、日本の児童合唱に興味を持ち始めたときから好きでしたが、3か月前にはかなり薄味に感じたものです。きっと、3か月の間にこの合唱団の中で何か大きな成長があったのでしょう。

   東日本へ届けぼくたちからのメッセージ

 「ぼくたちからのメッセージ」と題された最後のステージは、阪神・淡路大震災の被災地の宝塚から、被災地で苦しんでおられる東日本の方々に届けとばかり歌われる感動のステージでした。この少年たちは阪神・淡路大震災を知らない世代です。しかし、ボーイズ・エコー・宝塚は、「しあわせ運べるように」を定期演奏会で毎年歌い続けてきました。歌の心は確実に伝えられています。だから、もうこれを聴かなければ、ボーイズ・エコー・宝塚の定期演奏会に来た気がしないようになってきました。何度聴いてもこの歌には新たな感動があります。「青い空は」「世界が一つになるまで:「Believe]と次第に高まってきたステージは、「しあわせ運べるように」で最高潮に達しました。
 「さようなら みなさま」が最近では最後に歌われていますが、これは「桃太郎少年合唱団」との友情の現れでもありましょう。この日の演奏は、ボーイズ・エコー・宝塚の歴史に残る定期演奏会でした。