第30回宝塚ニューイヤーコンサート
  平成25(2013)年1月6日(日)宝塚ベガホール

 
 いずみコールが参加するようになって、宝塚ベガホールの入り口の前には長蛇の列ができるようになりました。今年も、千吉音頭でにぎにぎしく幕が開いた宝塚ニューイヤーコンサートも、数えて30回目と記念すべき年になりました。お目当ては当然、ボーイズ・エコー・宝塚です。参加人数が13人と少し心配しましたが、会場で出会った道楽さんの話によると16人いるそうです。曲目は「冬景色」「早春賦」「スキー」と、冬から早春の唱歌を集めたステージでしたが、一言で言うとまだ歌いこみが足りないということになります。それは、「冬景色」の音程の不確実さに見られました。だんだん尻上がりに調子はよくなってきましたが、3月の定期演奏会までどこまで高められるでしょうか。「しあわせ運べるように」「威風堂々」「すみれの花咲くころ」「ラデツキ―行進曲」と続く一連の合同演奏では、新年にふさわしい華やかなステージに仕上がっていました。

また、中安保美先生に中川智美市長から、永年にわたり市民に対して音楽に親しむ機会を提供し、宝塚市の芸術文化の振興に大きく貢献されたことに対して感謝状が贈られました。奉仕を通り越してそれこそ持ち出しで、ボーイズ・エコー・宝塚をここまで育て上げてこられ、千吉音頭を復興され、「音楽のまち 宝塚」の名を高めた中安保美先生の偉業に心からの敬意を表したいと思います。


ボーイズ・エコー・宝塚 第28回定期演奏会
平成25(2013)年3月16日(土) 宝塚市立西公民館


   最大のピンチの中で

会場の宝塚市立西公民館に着いたのは、開場前だったので、入口付近の椅子に座って待っていたら、会場係をしておられた保護者の方から、「どうぞ中に入ってください。」と声をかけていただき、中に入ると同時に入ってきた情報は、中安先生がこの日の朝急に発熱されて、今日のコンサートは、指揮者なしでやるということでした。中安先生が急病で指揮者なしということは、六年近く前の野外コンサートでもありましたが、周囲がざわざわしている20分ほどの野外コンサートと、歌を聴きに来る人が集まる定期演奏会では、全く状況が違います。しかし、その危惧はボーイズ・エコー・宝塚の団員たちがはね返してくれました。今年は、高学年の比率が15人中11人と非常に高く、そのぶんだけ、今自分たちが置かれている状況がどのようなものであり、自分たちは何をしなければいかないかがはっきりと自覚されているステージを見せてくれました。

   気迫を感じさせるステージ

 この日は、「体操服」という感じの白で統一された服で登場した団員たちがステージに登って指定された位置に立ったとき、よい意味での緊張感が感じられました。団歌で始まり、歌で世界一周の旅に出発するというこれまでにも何度か定期演奏会で行った40〜50年前の「みんなのうた」で紹介された民謡を核とする第一ステージは、小曲を並べるだけでなく、学校ごとに歌ったり、学年ごとに歌うなど、飽きさせないいろいろな工夫がされていましたが、自分の役割をきちんと果たそうとする一人ひとりの意気込みを強く感じました。 

   卒業演奏

 6年生一人ひとりに卒業演奏の独唱をさせるというのが、ボーイズ・エコー・宝塚の伝統になってきましたが、これは時として少年が変声期と戦う姿を見ることになっていました。以前輝かしい歌声を聴かせてくれた少年がかすれた声で歌ったり、ファルセットに活路を見出そうとする姿にも出会ってきました。また、ボーイ・ソプラノは変声の直前に最も美しくなりますので、最高の歌を聴かせてくれる場面にも何人か出会いました。この日は、6年生が過去(この15年間で)最多の7人ということもあり、1人1曲ではなく、2〜3人で1曲を歌い、最後に7人全員で歌うという4曲構成のステージでした。この日は、抒情的な美声を聴かせてくれた佐々野君と、話し声からすると変声後期になっていながらファルセットをきれいに響かせて歌う相川君の歌が心に残りました。また、7人で歌う「絆」は、初めて聴く曲でしたが、友達と支えあってきた思い出を大切にしようとする歌詞を大切に次第に盛り上がる歌を歌っていました。

   来た道、行く道

 ニューイヤーコンサートでは、やや歌い込みの不足を感じさせた日本の唱歌や歌曲でしたが、この日は春から早春へと季節を追って10曲をメドレーで歌い、曲想を大切にした演奏を楽しむことができました。続いて歌われる「ふるさと」と合わせても、唱歌よりも「二つの雨の歌」や「さわると秋がさびしがる」などの歌曲の中にボーイズ・エコー・宝塚の持ち味を感じることができました。唱歌の文語体は、今を生きる日本の子どもたちにとって英語よりも難しい言葉になっているのでしょうか。そのようなことも感じました。また、第2の団歌と言ってもよい「しあわせ運べるように」が歌われると、今年度の定期演奏会も終わりが近づいたことを感じさせます。今回も情愛あふれる歌に仕上がっていました。
 中安先生の全快をお祈りするとともに、後継の指導者の育成も急務であると感じさせる定期演奏会でした。