第31回宝塚ニューイヤーコンサート
  平成26(2014)年1月12日(日)宝塚ベガホール

 
 会場に入ると、昨年の団体ごとと合同演奏の写真と共に、中安保美先生が、昨年市長から贈られた「感謝状」が飾られていました。ウィーンニューイヤーコンサートのように、市民に良質の音楽を無料で提供するという理念は31年にわたって続いています。今年も、千吉音頭でにぎにぎしく幕が開いた宝塚ニューイヤーコンサートも、保存会の子どもは常に20人ぐらいの人数を維持できているところが素晴らしいです。さて、今年はかなり参加団体に異動があり、初めて聴く団体もありましたが、合唱も合奏も総じて美しい響きを大切にするという点で一致していました。舞台正面にはペガサスの絵が飾られ、それを見ると、ふと、12年前に同じ会場で聴いた辻潤子先生編曲の「馬」にちなんだ歌のメドレーを思い出しました。

 ボーイズ・エコー・宝塚は、今年度6年生7人が卒団したあと入団がなく、人数が8人と過去最少になり大変心配しました。ところが、そのことがかえって団員一人ひとりの自覚を高めたのか、「くいしんぼうのカレンダー」「Dona Nobis Pacem」「世界が一つになるまで」という曲想の違う3曲をかなりよい仕上がりで歌い上げてくれました。舞台上での自分の立ち位置の自覚や曲の紹介等のあいさつも含め、ステージマナーも非常によく感じました。いつもこの時期の歌は、まだ歌い込みが足りないことを感じることが多いのですが、この日は、そういうことを感じませんでした。3月の定期演奏会では、これまでにない工夫が求められるでしょうが、きっとやり抜いてくれるであろうことを確信しました。

 「しあわせ運べるように」「アイーダの凱旋行進曲」「すみれの花咲くころ」「ラデツキ―行進曲」と続く一連の合同演奏には、ボーイズ・エコー・宝塚の卒団生で中学3年生の佐々野智博君も特別出演で加わって、男声の少ないニューイヤー特別合唱団を盛り上げてくれ、新年にふさわしい華やかなステージに仕上がっていました。これは、県立宝塚高等学校OB吹奏楽団が活躍しているように、将来ボーイズ・エコー・宝塚OBが地域の音楽活動で活躍できる道を拓いたとも言えるでしょう。また、終了後、楽屋で今中学1年生になった卒団生に9か月遅れの中安先生から一人ひとりに卒団証書が手渡されました。


ボーイズ・エコー・宝塚 第29回定期演奏会
平成26(2014)年3月15日(土) 宝塚市立西公民館


   8人で何ができるか
   
 男声のコーラスユニットは、ダークダックス、ボニージャックス、デュークエイセスのように4人が普通です。それは、第1テノール・第2テノール・バリトン・バスという違った声域の声をもつ4人が集まって一つの歌を創っていくからです。ところが、合唱団となると、ある程度声量も求められますから、少年合唱であってもやはり2桁の人数がほしいところです。ところが、今年度ボーイズ・エコー・宝塚は、人数が8人と創立以来最少の中で活動してきました。いや、むしろ8人でもできることは何かを考え続けてきました。しかも、指揮の中安先生がまだ体調不十分ということで、指導には参加されていましたが、ステージには指導者紹介という形で登壇されたものの、2年続いて指揮者なしのステージとなりました。ただ、そういう困難をどう切り抜けるかという工夫と努力をこの日のステージから感じることができました。

   8人が横一列で

 開幕して8人の団員が横一列に並ぶと、いつもは、団員の指揮で始まる「団歌」は、指揮者なしの辻先生のピアノ伴奏だけでスタートしました。一人でも多くの声が必要だという想いからでしょうか。この歌には、例年よりも団員一人ひとりの自覚のようなものを感じました。「ゆかいな歌」と題された「くいしんぼうのカレンダー」から始まり「山寺のおしょうさん」で終わる7曲の歌は、同じ「ゆかい」にもいろいろな多様性のようなものがあるところを聞かせてくれました。また、第2ステージの「やなせたかしさんを偲んで」は、「手のひらを太陽に」の1曲だけを会場の皆さんと一緒に歌うというものでしたが、それなら、「アンパンマンの歌」のような現代の子どもならみんな知っている歌も入れてもよかったように思います。そうすれば、東のフレーベル少年合唱団と西のボーイズ・エコー・宝塚が同じ年度に「やなせたかしさんを偲んで」という新たな連携も生まれたのではないでしょうか。

   6年生はデュエット・3〜5年生はソロという斬新な構成

 「人数が少ないので、何かしなければいけません。」
と、中安先生はおっしゃっていましたが、それは、ステージ構成に表れていました。6年生一人ひとりに卒業演奏の独唱をさせるというのが、ボーイズ・エコー・宝塚の伝統になっていますが、今年は、2人ずつのデュエットに挑戦というステージでした。これはある意味では、自分のパートをしっかりと歌わないとつられてしまう難しさがあります。そのような中で、成井瞭仁君と朴偕泰君の「旅立ちの日に」、渡辺龍祐君・土山拓真君の「絆」は、アンサンブルとしての妙を聴かせてくれました。また、4人で歌った「Believe」でも、自分の声の持ち味を生かしながら全体を考えて歌を構成していく姿を感じることができました。続く「平和を願って」を題された第4ステージは、「Dona Nobis Pacem」の合唱で始まり、「世界が一つになるまで」の合唱で終わるまでの間に「さとうきび畑」では、3年生から5年生がかわるがわるソロを歌い、「フィンランディア」では、次のリーダーとなる5年生の三谷俊太君がソロを歌うというこれまでにない構成で、第3ステージのデュエット中心の6年生のステージと併せてこの構成は斬新でした。

   いくつもの対比

 第6ステージの「心に残る歌」は、第1ステージの「ゆかいな歌」と対比することができます。「翼をください」「しあわせ運べるように」「花は咲く」と次第に震災からのの復興をテーマにした歌に移るにつれ、歌心もまた深まっていく観がしました。とりわけ、阪神淡路大震災からの復興を願った「しあわせ運べるように」がこの歌ができてから後に生まれた団員たちによって歌われると、この歌は後世に歌い継いでいかなければいけないと感じます。今年はさらに、東日本大震災からの復興を願って全国で歌われている「花は咲く」も加わって、その気持ちを高めてくれました。
 最近では、「さようなら みなさま」が、お別れのステージでも歌われています。桃太郎少年合唱団から移籍した団員のお土産であると同時に、何度も定期演奏会に足を運んでくださった桃太郎少年合唱団の棚田国雄名誉団長先生 故浦池和彦副団長先生との交流の成果であると思います。

 全部のステージを通して、団員は、みんなよく頑張っていましたが、指揮者なしでやると、曲の紹介をするために前に出るタイミングがつかみにくいという指揮本来の役割以外の課題も感じました。6年生4人が卒業して、4人となったボーイズ・エコー・宝塚を支えるのは、合唱団関係者だけでなく、行政を含む地域の力だと思います。新年度がどうなるか予断を許しませんが、中安先生の舞台復帰をお祈りするとともに、100%社会奉仕のスピリットを受け継いだ後継の指導者の育成も緊急の課題であると感じさせる定期演奏会でした。今年は、宝塚歌劇100周年を記念し、地域でもいろいろな企画が行われていますが、ボーイズ・エコー・宝塚も30周年です。