Poisonous heart
「言葉で表せない感情?」
彼は悔しそうに頭を垂れた。
決して報われる想いではない。
そのことを痛いほど理解している。
どうしようも無い感情は自らを苦しめる。
一方的で強すぎる感情。
そしてそれを抱いた自分への嫌悪。
「醜いだろう…」
力無く私の部屋に響いた声はスグに消えた。
いつもの彼らしからぬ姿。
髪留めを外して、その髪は今にも彼の全てを隠してしまいそうで。
突然、夜中に部屋の前の気配。
だが殺気も何も漂わせない馬鹿は、私が出るまでドアを開けなかった。
扉越しでは透る声も聞こえない。
何より私の部屋の前にコイツが居るところを誰かに見られたくなかった。
ただそれだけの理由で部屋に招き入れた。
いつもなら彼の…ザトーの部屋を出ない人が何故。
聞けばザトーは今夜は居ないらしい。
まさかそれで寂しくて、ではないようだけど…。
元から必要以外のことは喋らない性質なのかそう仕込まれたのかは分からない。
黙ったままの彼をどうにかできるほど私も人間が出来ているわけじゃない。
何か飲む?と問うと、紅茶を、と返してきた。
私と話す意思はあるらしい。
それが分かっただけでも良かった。後は待っていれば良いのだから。
けれど彼が私に伝えた内容はとても理解できるものではなくて。
本当に微かに、肩が震えている。
私にはそれを救う術が無い。
私は彼じゃないから…だけど、
「一晩くらいなら、構わない」
「……ミリア、?」
「傍に居るだけだ、誤解するな」
そんな空しい虚勢も気にせずに、僕らはその夜の寂しさを胸に抱いた。
二人の心は同じではない。
だが想う人は同じ。
だからこそ苦しい。
異性というコトはそれだけで好意を示すには十分すぎる。
けれど彼は傍に居ることでそれを目の当りにし、克服しなければならない。
「…辛い?」
「お傍に居られるのだ、何故」
「そう…」
「…君は平気なのか」
「さぁね」
「……、」
「貴方よりはマシなんじゃなくて?」
「そういう人だったな、貴女は」
「それで良いのよ」
何も生まない会話さえ、沈黙よりも求められて。
ほんの少しだけ心が崩れていたのかも知れない。
彼は静かに目を瞑った。
彼女は浅く息を吐いた。
-end?-
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後書:
世にも奇妙な物語デスかと聞かれそうな話ですみませ…。
ヴェノミリっぽいの書きたかったんだい…!あぁでもミリヴェノっぽいかなぁ…。
決してオフィスラブではありませんよ(笑)
まぁ、こういうのも良いかな、程度に書いたものなのでウチ的アナザーアサシンです(何)
二人の心の中には同じ人が同じくらい深く存在しているけれど
一方は本当に毒的に侵されて、一方は中毒のように侵されているのですよ。
そんな二人が好き(ぇ
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