*ヴェノミリ注意* …一枚目と微妙に心情関係が違います。 というか何気に毒←嬢です。 







廊下には自分達だけ。

組織の長たるザトーの部屋には滅多に来客など無い。

二人の声の分だけ空気が揺れていた。


「…今はもう、仕事終わったんでしょう?」

「取り合えず、は」

「……じゃあ、今は忙しくないのよね?」


私はもう一度彼の髪を掬ってみせた。

今度は少しゆっくりと。

彼は一瞬困惑の色を示したけれど、すぐに静かな瞳に変わった。


「そういうことになるが」


彼も手を払うことはなく、視線だけが触れ合った。

本当にただそれだけで彼は何も言わない。



「………貴方、」

「何か?」

「それは、態となの?」

「…そう、思いたければ」

台詞を聞き終わる間もなく頬には銀糸が触れ、唇を塞がれた。

体格差からいっても辛いはずのキスは少しも苦にならなかった。

滅多に屈まない背が曲がっていたから。

頬に添えられた手が心地良かったから。

重なった視線に高揚させられたから?

私らしくもない選択肢が浮かんで、馬鹿らしくなった。



「何か楽しいことでも?」

唇が離れ、

「いえ、ただ…」

夢心地なんて言わない。

「私は私なのだと、そう思っただけよ…」

彼はいまいち理解出来ないような表情をした。

だがそれは間違いではないのだと、小さく笑って返してやった。

私自身でさえ答えは出ない。

だから貴方に分からなくて当然だと。


「…何でもない。私、部屋に戻るわ」

「あぁ…」

引き留めない強さも、実の所嬉しいと感じている。

だけど…。


「…貴方は、いつもそうなのよね」

振り返ればすぐに抱き合える距離に彼はいる。

好きだとか、嫌いだとか。

そんな一時的な感情は持ち合わせていない。

そしてどちらかと言えば距離をおきたい相手。

そのはずが…どうして、こんなにも不安になるのだろう。



「ミリア…!?」

「誰でも良いのに、お前じゃなくったって!」

「……あぁ、そうだな、」



彼は何も言わない。

何も聞かない。

ただ、私にその無感情な瞳を向けてくれる。

慈悲も拒絶もない、ただ何も生まない感情を。




そして私を無に帰してくれる。





 -end-

後書:
何気にミリヴェノっぽくてゴメンナサイ…。
一応アドレスいじってもらえればもう一つもあります。

ブラウザバックプリィズです