何だって言うのよ…
結局、何も変わらない
……ザトー。
ヒダマリ
私に偉そうな口を聞いた貴種は何も言わずに立ち去った。
奴の居場所も分からないままだ。
何も変わらない。
また、今までの日々に戻るだけ。
当てのない噂に振り回されて…見つからなくて。
それでも諦めきれなくて。
死んだという噂も、聞く度に潮笑ってきた。
そんなものは認めない。
奴は私がとどめを刺すのだから。
勝手に死ぬなんて許さない。
…だから、早く見つけてあげなきゃ。
−ミ、リア…?
−まだ生きていたの…
貴種の気遣いかは分からないが、声の主は壊れていない柱に凭れ掛けられていた。
先の戦闘で全力を出し尽くし、結果今まで気を失っていたのだろう。
組織の中でも優秀だった彼が何故判断を誤ったのかは分からない。
貴種になど、敵うわけがなかったのに。
それとも分かっていたけれど逃げなかったのか…。
……彼にも、譲れないモノがあった…か。
尤も、あの貴種は全力ではないのだろうけど。
−…奴は、何処へ…?
−分からないわ。
−くっ…。
徐々に意識もはっきりしてきたのか、彼は傷の痛みを堪えて立ち上がろうとした。
−何をするつもり?
−奴を、排除する。
その目の色にまだ諦めなどはなく。
目標をただ見据えているかのように強い意志を持っていた。
けれど…
−…彼は殺せないわ、
彼は人ではないのだから。
人の手には余る力を持つのだから。
それはギアにも匹敵するかも知れない。
お前だって先程思い知らされたはず…。
−それでも、私には守りたいモノがある。
地に手を付け、敵うはずのない相手を見上げて…。
どうしてそんな眼が出来るの。
想いだけではどうしようも無いことも、経験してきたのに。
−まだ…そんなことを言ってるの…
−組織の留守を預かるのが私の役目だ!
−好きにすれば良い…私には関係無い、
組織なんて、もう私には意味のないトコロなのだから。
あの場所と私を結ぶものなど無い。
私には不必要な場所。
−貴女は…自由なのか、?
−そのために出た。
−何故、戻って
−勘違いするな。私は奴を追っているだけだ。
−…どうして追う?貴女は離れたかったのではないのか、
何から?組織?ザトー?離れたかったのは…
−お前には分からない。
−………。
−私は行く。奴を探し、止めを刺す。
−…骸だとしても、か。
−死人は、埋まるのが理でしょう?
無意識に薄く笑った彼女はどこか泣き出しそうな感じがした。
だがそれも一瞬のことで、いつもの冷たい瞳に戻ると足早に出て行った。
私に彼女の心は理解出来ない。
それは以前にも実感させられたことだ。
けれどそれはあまりに悲しいことだと思う。
干渉と理解は別物だとあの方も仰っていた。
だからこそ私は…彼女をほんの少しでも理解したいと思うようになっていた。
……。
……ザトー様。
やはり貴方でないと、ミリアは
彼の人は亡骸と成り朽ち果てようとも
内なるこの想い消えぬ限りは
仮令体が力を失くしてしまっても
その魂は貴方の元へ辿り着きたいと
叶わぬ願いを今も抱き続けています
-END-
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後書:
ヴェノムミリアザトー。
で、何処が続きなのかと言われれば答えられないのですけど…
時代的にはイグゼクスってとこですね。やっぱ貴種には勝てませんって…。
ヴェノミリでありながら前提にザトミリとヴェノムの忠誠があるので
皆それぞれ勝手に葛藤とか思考とか…それでも答えは出ないのでした。
お題に対して
表で陽だまり、について語ってますが…。
今回ヒダマリとしたのは『否堪り』という造語の意味も込めてです。
それぞれで意味を見てもらえれば安直だなぁと思われるでしょう(苦笑)