桜の季節、九州の中で熊本は風景写真家には最も嬉しい地域だろう。なんといっても一心行の大桜があるし、水上村や湯の児海岸も涎が出るくらい風景写真的だ。逆にいえば、失礼ながら、私にとって九州は自然っぽい桜の撮りにくい場所だった。広すぎて初めて来訪の私の目が行き届かなかったのかもしれないし、広すぎて風景写真を撮っている人とあまり出会わず、情報不足だった為かもしれない。(実際、桜旅の中盤で地元カメラマンと出会ってからは随分助かった) どこの地域でもそうだが、現地では有名な撮影スポットでも、全国的にはあまり知られてない穴場があるものだ。そういう場所に行けばいい写真を撮れるという訳ではないが、桜に関しては、旬が短いこともあり、行き当たりバッタリばかりではなかなかいい写真は撮れないと思う。八分咲き、満開、散花、それぞれに趣があるものの、桜という木が無いことには桜の花は撮れない。それに日本人は桜好きなので、自分の地元に美しい桜があれば、たいていは(写真を撮らない人でも)知っている。これは不思議な現象で、紅葉や他の花なら全国的に有名であろうとも、知りもしないし行った事も無いような人が、桜だけは知っている。たとえ自分自身が見た事がなくても家族や親しい友人の誰かが見に行っていて、案外咲き具合なんかも知っているのだ。日本中例外なく、なぜか日本人は桜が咲くと幸せな気分になるようだ。杉花粉が飛び交っていて一年で一番辛い季節である人(私も)も多いはずなのに・・・ (上写真:水上村) |