ハックルベリー物語 

 「ハックルベリー」はマーク・トウエンの「ハックルベリーの冒険」に登場する野性的でちょっとロマンチックな少年の名前です。 のんだくれの親父の手で森の中の丸太小屋に閉じこめられていたハックルベリーは、ある日ミシシッピー川を下る冒険の旅に出かけます。


 大きな丸太小屋のレストラン「ハックルベリー」は、子どものころ、ハックとトムソーヤに魅せられたいたづらっ子が5年がかりで作り上げた夢の舞台でした。森の中に丸太小屋をつくりたい、いや町なかではそうもいくまい、だったら丸太小屋の中に森をつくってみようとじゃないかと一人で造り始めたのです。


 杉丸太で組み上げ、白漆喰で仕上げられた三階建のログハウスは、オーナーの宮嵜憲治さんの手作りでした。元々は鉄工屋さん、鉄の固さは分かっていても木の感触にはなじみがない。


枝付きの曲がった立木が室内に器用に組み込み。手作りのガラスが原木の味を生かしたドアに優しくアクセントをつけています。カブトムシや野鳥をかたどったブロンズがさりがなく柱にとまっている。もちろん宮嵜さんの手づくりだ。「不器用なんですが、ものをつくるのが好きなんです」とこの無精ひげのおやじさんは照れるが、プロも舌をまく仕上がり、なにより細かい心くばりがぬくもりのある家になった。


 宮嵜さんが造り始めたのは1986年4月。ログの丸太を求めて秋田杉の産地に泊まりこみました。曲がって、ねじれているので集積場に積み残された不要材も集められました。そんな木の姿をみながら図面も自分でひいた。50分の1の模型もなんども作り替えました。城山の空き地に自然木が山積みされ、一人で大工仕事を始まると、いろんな人が声をかけてきた。足場も知人が無償でつくってくれ、ガラス工芸家が手作りのガラスづくりをを教えてくれた。白漆喰を塗るのに、左官屋で一年間、働いてその技を習ったということです。


 ハックルベリーが住んだ森をイメージして宮嵜さんはつくってきました。室内の造作も調度も深い森を思わせる装いにしました。あまりこりすぎたためでしょう、140平方メートル(42坪)もある店内が狭くみえ、おまけに暗い感じになってしまったのです。また内装工事の変更、手作りの椅子も刻み直し、森のなかにしずんでいたトイレも明るい夢のある一室に変わった。総工費2500万円。完成したのは1990年の11月、着工から5年たっていました。