清風朗月
作品と解説 12
 
 今年の十五夜は9月21日(土)だ。

うちの狭庭にある一株のススキも
穂を出して「お月見」の晩を待っている。
 
9年前の酉年の秋に書いた作品が、翌年
1994年1月の『墨』スペシャル18
(芸術新聞社)に載った。
 
その時のコメントが次の通り:  

今年は雨が多い。お月見は?
鬱陶しい重厚さを意図した肉太の
横物を書いた後で、
四半世紀前の紙に書いた。


  この時の紙は古くて黄ばんでおり、下のほうに
カビによるシミが出来ていた。
このカビの協力に感謝して、
シミを切り落とさずに
下方の余白をそのままにしておいた。

半端な寸法で2枚しかなかった。
もう一枚はシワがよりすぎていて
無駄になってしまった。

「清風朗月、不用一銭買」李白・襄陽歌。
(清風朗月、一銭の買うを用ゐず)

清らかな風、明るい月は、一銭もかからない。
全くただで手に入る


李白といえば酒、酒といえば李白。
「李白一斗 詩百篇、
長安市上 酒家に眠る」
と杜甫が「飲中八仙歌」で歌った酒仙、
かつ詩仙の李白はよく月を賞でた。

「頭を挙げて山月を望み」(静夜思)とか
「杯を挙げて明月をむかえ」(月下独酌)

とか、
李白が月を詠んだ句は枚挙にいとまがない。

この「清風明月」の句も、
「玉山が倒れるように」酔いつぶれるまで、風と
月を賞でながら酒を飲みたいという。
羨ましいかぎりだ。

私はまだシラフだから、
こんな字しか書けなかった。

























105×17cm                        


     
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