No.10  7月16日
太陽が左へ沈む。びっくり!!
息子の昌が結婚したマルセラの実家は、アルゼンチンの古都コルドバで、

マルセラの母カルメンと父ホセ、弟のファクンドが住んでいる。

オペラで有名なカルメンとその恋人ホセが夫婦の名前なのだから、

驚きだが覚えやすい。

近所にカルメンの姉エルメリンダが息子セバスチャンと

娘マグダレーナと住んでいる。

セバスチャンは”音楽の父”バッハと同じ名前だから、これも覚えやすい。

アルゼンチンと日本とは、地球の表裏でこちらが夏ならあちらは冬、

こちらが昼ならあちらは夜。こちらが夜の十時ならあちらは昼の十時、

計算は楽だ。

昌とマルセラが日本での婚姻手続きを終えて

今度はアルゼンチンで婚姻届を出すという1997年9月に、

私は妻と私の弟と三人でコルドバまで行った。季節は春のはじめだ。

スペイン語が話せない私たちをマルセラ一家が歓迎してくれて、

餃子の兄貴分みたいなエンパナダなどをご馳走になり、

数日ごやっかいになった。ネグロという犬もいた。

アルゼンチンは不思議な国で、見たこともない樹木や花が

あるかと思えば、タンポポ、クローバー、カタバミといた雑草から、

松や藤など見なれた樹も多くある。

異国のようで故郷のようで、頭が混乱しそうだ。

特に驚いたことは、太陽が左へ沈んで行くのだ。日は東から出て、

西へしずむ。これは日本でもアルゼンチンでも同じなのだが、

日本では南を通って西へ沈む。

だんだん右へ沈んでいく訳で、何の疑いも無かった。

ところが、アルゼンチンでは太陽は北を通って西へ沈み、

左へ左へと沈んで行く。

三時頃に中庭で”シエスタ”(昼寝)をしていて

、ふと目が覚めると日陰がおかしい。

さっきまでの影が左へ移っているではないか!

時間がたてば影は右回りで動くことに慣れていたので、

もう頭の中がグシャグシャになってしまった。

時間が後戻りしたような、居場所が異次元へワープしたような・・・参った。

今ごろはマルセラ一家は孫娘の優香をチヤホヤしていることだろう。

優香が、私が贈った額の字を見ては何でもかんでも「
バンビ、バンビ

と言っていると、マルセラが伝えて来た。

9月1日で優香は満2才になる。



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