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No.28  11月27日          



葬 式 無 用


きのう26日は弟の満55歳の誕生日だった。
ケーキの上に蝋燭を5本立てて、ささやかに祝った。
弟はニコニコして勢いよく蝋燭を吹き消した。

今年は私が出かけたお通夜とお葬式が9件合った。
そのうち仏式が6件、神式が2件で、無宗教が1件だった。
数人のお坊さんの読経の声が美しいハーモニーになっているのもあった。

この読経の唱和で思い出すのは、仏前結婚である。

長野県で善光寺の次に名高いというお寺で30年近く前に友人が婿入りし、
その結婚式が仏式で行なわれた。
20〜30人のお坊さんが、テカテカの坊主頭を並べて
お経を読む姿は感動的だったし、その声もよくハモッテいた。
いかなる楽器よりも人声が最も美しいと、
お能の心得がある人から聞いたことを思い出した。

ところで、話を葬式に戻すが、梅原龍三郎が死んだ(1986
.1.16)直後に
「葬式無用」の遺言が新聞記事に載った。



昭和61年(1986)1月 毎日新聞
「葬式無用 弔問供物 固辞する事 梅原龍三郎 
生者は死者の為に煩わさるべからず」という文面で、
この内容については志賀直哉も賛同していたという。

10年ほど前のことだが歌人佐藤佐太郎が逝って間もなく、
私が先輩につれられて目黒のお宅に弔問に行ったところ、
志満夫人は思い出話などは話されたが、
お香典など物品は一切受け取らなかった。
聞き違いかもしれないが、
「葬式はやらない」「お返しが面倒だから何ももらわない」
といわれたように記憶している。